レビュー
» 2015年06月22日 14時11分 UPDATE

山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」:HDR対応に見事な色再現――パナソニック「CX800」シリーズはコスパの高い4Kテレビ (1/2)

パナソニック“4K VIERA”のセカンドライン「CX800シリーズ」が登場した。全モデルにIPSパネルを搭載したほか、6軸のによる色補正など上位機に迫るスペックで、HDR対応も予定している。

[山本浩司,ITmedia]

 昨年発売された「AX900シリーズ」をフラッグシップとするパナソニックの“4K VIERA”。この夏、そのセカンドラインとなる「CX800シリーズ」がテイクオフした。ラインナップを構成するのは60V型、55V型、49V型の3モデル。すべてのサイズで型番末尾にNが加えられた、ディスプレイ本体を斜めにスラントさせた製品も用意されている。

ts_arekorecx01.jpg 60V型の「TH-60CX800」

 昨今の4Kテレビの低価格化の動きは著しい。そんな中にあってCX800は、価格を抑えながらもAX900に盛り込まれた高画質技術を継承し、コストパフォーマンスのよさを多くの消費者に実感してもらえる製品に仕上げようとの思いが伝わってくる好製品といっていいだろう。ぼくの目には、プラズマ撤退当時の液晶大画面に対するVIERA開発陣の迷いが完全にふっきれた製品に見える。

 まず注目したいのが、AX900同様3サイズともにIPS(In Plane Switching)液晶パネルが採用されていることである。IPSパネルはいっぽうの主力方式であるVA(Vertical Alignment)パネルに比べると、液晶分子を水平方向に回転させる方式ゆえ視野角による画質ダメージは少ない。その代りに、全遮断時でも漏れ光が大きく、正面コントラストが低くなるといわれてきた。視野角の広さか、正面コントラストか。どちらを採るかの判断を迫られて、パナソニック技術陣が出した答えはAX900に引き続いて前者だったわけである。

 4K高解像度を得て、いっそうの近接視聴が可能になった液晶大画面テレビにとって、視野角の狭さは決定的な弱点になり得る。家族3〜4人が横並びで画面に向き合ったときに、両端の視聴者が白茶けた不自然な映像を観ることになりかねないからだ。

筆者は、各社の大画面テレビを数台並べた場所で、数人の仕事仲間と画質を評価する仕事をすることがたまにある。そんな折、真ん中に座った人と両端にいる人で、その評価が著しく異なるという局面によく出くわすが、それは決まってVAパネル採用機なのである。視野角の問題から逃れられる自発光タイプのプラズマテレビを長年手がけてきたパナソニックにとって、高級大画面テレビ開発においてこれは何より避けたいポイントだったのだろう。

 一方IPSパネルで指摘されてきた黒浮きについては、バックライト制御技術を磨くことで対処できるはずと同社企画・開発陣は考え、AX900同様に3モデルともに画面を多分割してエリア別に駆動するローカルディミングの手法が用いられている。ちなみに55V型と65V型はLED光源をパネル裏に配した直下型、49V型のみ(下)エッジ型である。

ts_arekorecx03.jpgts_arekorecx04.jpg 狭額ベゼル(左)と「CX800N」のスタンド部(右)

 光源に用いられたLEDは広色域タイプで、デジタルシネマ(DCI)で定められた色再現範囲をほぼカバーする。それに加えて、AX900に引き続いて「ヘキサクロマドライブ」を搭載、色再現能力を向上させている。ヘキサクロマドライブとは、映像作品がパッケージソフト化されるときや放送時に圧縮される色信号を復元する「カラーリマスター」と3次元方式の「カラーマネージメント回路」で構成される技術。RGBの3原色のほかにその補色となるCMY(シアン、マゼンタ、イエロー)を加えた6(ヘキサ)軸による色補正を行なうことが、その名の由来だ。

 ちなみに本シリーズは、まだ運用は始まっていない4K放送規格BT.2020色域に対応することもうたわれている。「対応」といってもBT.2020の広色域をありのまま再現することではない。というか、現状のLEDバックライトを用いた液晶テレビでそれは困難だ。「対応」というのは送出されたBT.2020 の色信号に対して、3次元色補正技術を用いてパネル上に最適な色を描くという意味。これもAX900から踏襲された技術である。

 一方、AX900にはないCX800ならではの注目ポイントがある。それがHDR(ハイダイナミックレンジ)規格への対応だ。これは先頃規格策定が終了したUHD(4K)Blu-ray Discや4K番組の配信が予告されている「NETFLIX」(この秋わが国でのサービスが開始される)、来年夏に開始するBSの4K試験放送などで採用される予定のダイナミックレンジ拡張技術である。

 CX800は、昨年のVAタイプの「AX800シリーズ」に比べて約1.6倍の最大輝度を持つ(ただしAX900 に比べると約7分の5)。この明るさの余裕度を活かし、HDR 収録されたコンテンツに対して最適化された明暗のトーンカーブを持たせ、収録カメラのオリジナル映像により近いダイナミックな画調を実現しようというわけだ。

 実際に4KカメラでHDR収録された映像を、HD用トーンカーブを持たせた「TH-60CX800」で見てみたが、そのメリハリの効いた画質の魅力は誰の目にもアピールできるものだと思った。単に白ピークが伸びるだけでなく、ハイライトの色ヌケや白ツブレがなくなるため、薄い雲の間から差し込む太陽の光や空の青を空を精妙に描き出してくれるのである。

 4K高精細映像は、最適視距離まで画面ににじり寄って観ることでその魅力がリアルに実感できるが、HDR映像は画面から離れて観てもその良さが分かるのも重要なポイント。ハリウッド業界人がHDRに熱心なのも、この「誰でも分かる画質の魅力」にひかれてのことだろう。CX800は、4K映像に相応しいダイナミックな画調が楽しめるこのHDR 規格に対して、その運用が始まる前にバージョンアップ対応するという。

 スリムベゼル・タイプのCX800だが、音質強化にも力が入っている。画面下の両サイドにフルレンジ・ユニットがそれぞれ2 基下向きに、ディスプレイ背面の両サイドにそれぞれウーファー1基が後ろ向きに取り付けられ、総合40ワットのアンプで駆動される仕組み。両サイドのウーファーは、不要な振動を打ち消し合うように前後に対向配置させたパッシブラジエーターを搭載することで低音の量感向上が図られている。また、すべてのユニットの磁気回路に一般的なフェライト磁石の約10倍の磁力を持つネオジウム・マグネットをおごっている。

 観たいチャンネルやよく使うアプリなどをホーム画面に登録しておけば、該当コンテンツにすばやくアクセスできる操作性の良さもCX800の特筆すべきポイント。また、3チューナーを搭載した本シリーズは、USB-HDDをつなげば2番組同時裏録画が可能。新しい著作権保護技術「SeeQVault」に対応しているので、同規格に準じた他のテレビでも録画コンテンツが再生できることにも注目したい。

ts_arekorecx05.jpg シンプルなユーザーインタフェース

ts_arekorecx06.jpg 接続機器の一覧画面

 安定感のある金属製のアーク状フットに狭ベゼルのディスプレイ本体が載せられたそのアピアランスは、実にすっきりとし、高級感に満ちている。型番末尾にNが加えられた「CX800N」タイプは、ディスプレイがやや斜めに(3度)傾いているが、これはローボードに設置し、ソファに座って画面に対峙したときを想定してのこと。座ったときの人間の平常視線は“水平より15度下”との研究報告もあり、長時間視聴しても疲れにくいこのスラント・デザインは、人間工学的にも理に適ったものといえそうだ。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.