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全国行脚で分かった地域性の違い――「ポタフェス Limited」ロングインタビュー(前編)(3/4 ページ)

» 2015年07月22日 11時37分 公開
[天野透ITmedia]

 南の端に対して、北の端である札幌は、天候にも恵まれて来場者が多かった。物販の売り上げは多くはなく“一斉試聴イベント”として受けとめられたようだ。

――札幌は会場が中心街から離れているにもかかわらず、人が多かったですよね。

岡田氏:でも売上的には多くないんですよ。

松田氏:札幌にはヨドバシさんもビックさんもあるけど、ここまで色々な機材が一斉に聴ける場所はないですよ。

岡田氏:最寄り駅の「東札幌」からも結構距離があったので、あの場所であれだけ人が来るのが不思議なくらいです(笑)。

松田氏:皆さん車を持っていらっしゃるんですよね。なので車で来るか、電車で来るか。

岡田氏:札幌開催の少し前に、利益、メーカー協力などを度外視してウチのスタッフが「イイもの」を本気で選ぶ企画をやりました。その中でも特に「Under 5000円 部門」で選んだものが選ばれました。ハイエンドを持っている方も安いモデルを買っていかれたりしています。東京は「高かろう、良かろう」っていう色が見えますけど、札幌では価格に惑わされず、しっかりと試聴をしてフラットな評価されている印象を受けました。

松田氏:東京ではウチとかが中古買い取りをやっているから、買い替えのサイクルができているっていうのも大きいですよね。だから高価格品でも結構引きがあるんでしょう。

高松は販売よりも試聴がメイン

 「うどん県」という別名を持つ香川県の高松では、やはりあちこちにうどんがあったようだ。近隣の県からの遠征組も多く見られ、来場者は当初想定していたよりも多いという話も出た。

松田氏:高松はうどんに始まりうどんに終わる(笑)

岡田氏:会場近くのうどん屋、おいしい(笑)

松田氏:最後は空港にあったうどん出汁の蛇口をひねって飲みましたよ

――静岡の「緑色の蛇口(お茶)」と、愛媛県の「オレンジ色の蛇口(ポンジュース)」はネタとして聴いたことがありますけど、香川にはうどん出汁の蛇口があるのですか(笑)。

松田氏:高松の場合、地元の新聞社に「イヤフォンとかヘッドフォンで、高音質」という需要が、若い世代にあることを分かってもらえました。何回か事前に記事を出してもらえたみたいで、それが大きなPR効果になったんではないでしょうか。

岡田氏:イヤモニのインプレッション採取はそんなになかったですね。沖縄や札幌のように、販売よりも試聴がメインだった感じがします。

松田氏:岡山などの近隣地方から遠征して来る人たちなども結構いましたね。

岡田氏:広島と高松って、微妙にかぶっていたんじゃないでしょうか。

松田氏:当日まで人が来てくれるのか心配だったんですよ。街には三越とかがあったりするけれど。

岡田氏:駅も立派なのに、街に人が少なかったですね。僕も含めて、前日入りした人たちはずっと胃が痛かったです(苦笑)。でも実際は予想以上に人が来たんですよ。母数が少ないのに来場確率が高いですね。あの辺りでやったイベントの中で一番なのでは、と思うほどでした。

松田氏:傾向としては男性客が圧倒的に多かったですね。女性は少なかったですが、一人いきなりいらっしゃって、いきなりイヤモニを作っていかれたという印象的な方も見かけられました

福岡・仙台はイヤモニが大人気

 これまで話題に上がった都市に対して、福岡と仙台は少々事情が違う様子だ。この2都市に共通しているのはいずれも「カスタムIEMの注目度合いが高かった」ということである。

岡田氏:福岡はとにかくイヤモニ! 耳型採取の整理券がなくなって、追加でお願いをして耳型を採りました。そのくらいイヤモニの受注が多かったですね。特筆点としてはNoble Audioの「Kaiser 10」が凄く支持されたという事です。僕の印象だと、多くの来場者はイヤモニを持っていてAKシリーズなどの高級プレイヤーも持っている。「もっと上がほしい!」というようなハイエンド層、コアなユーザーが多かったです。

松田氏:福岡は女性客もアツかったですね。試聴やインプレッション採取を待っているお客さんが僕に話しかけてくるんですよ。そんな方たちから決まって出てくるのが「出店をなんでしないの? 量販店の中でいいから、とにかく出店してくれ」という意見でした。

岡田氏:東京に遠征しているお客さんもきっと多いですね。福岡は東京に近い空気を感じました。

松田氏:町並みを見ていても発展している印象ですね。都会っぽくて、「南の雄」という感じです。

岡田氏:普段東京で接しているお客さんと、感覚的にあんまり変わらないんですよ。

松田氏:それから大阪在住の人がわざわざ福岡にいらっしゃりました! なんとこの方は高松にも車でいらしており、高松会場で「来ちゃった」と声をかけられましたよ

岡田氏:前夜祭もお客さんが面白かったですね。

松田氏:とにかくアツかったという印象です。

岡田氏:一日中居る人も少なくなかったかな。データ的に見ると、福岡ではプレイヤーが物販全体で2%しか売れていないんですよ

――それはまた極端ですね。福岡ではプレイヤーは相手にされなかった、ということですか?

岡田氏:決して興味がないのではなくて、皆さんお持ちなんです。それに対してイヤモニはあまりお持ちではないんですね。ここが手薄だったので、今回集中的に売れたという構図です。

ズラリと並ぶカスタムIEMの試聴機。これだけの数を一斉に試聴できる機会は、東京以外ではあまりない(写真は札幌会場の様子)

 福岡に似た傾向を見せたのが仙台だ。こちらもハイエンドプレイヤーは当たり前で、カスタムIEMに人気が集中した。特に仙台は、福岡に輪をかけてハイエンドモデルが好まれたようだ。

岡田氏:仙台は都会でしたね。しかも新幹線でたったの1時間30分足らずですから、東京にも出てきやすいと感じました。そんな街の空気を反映してか、会場では多くの人が当たり前のようにAKシリーズを持っていました。他会場ではあまり見られなかった女性参加者も、「AK120 II」とかを持って来場されていましたね。

 注目のアイテムはやはりイヤモニです。中でもVision EarsやCTMといった、ちょっとマニアックなところが選ばれているのが印象的でした。

――東京までの所要時間は、新幹線に乗ると名古屋と仙台は時間的に同じくらいですよね。この2都市ではどのような違いが見られましたか?

岡田氏:プレイヤーの普及率に違いを感じましたね。名古屋ではプレイヤーが良く売れたというのは先にも話したとおりですが、仙台ではみんなハイレゾプレイヤーを持っているんですよ。

松田氏:話を聞いていた感じだと、名古屋の人は普段あまり東京まで出てこない傾向があると感じました。それに対して仙台の人は、普段から結構積極的に東京へ出てきているんじゃないでしょうか。

岡田氏:それから(仙台に限らずですが)ヨドバシカメラさんの存在はとても大きいと感じましたね。今回の都市でいうと、福岡、仙台、札幌、大阪です。品ぞろえや視聴環境といった面で見ると、ヨドバシさんにはある程度しっかりした環境があります。そこでしっかりとベースが作られているので、僕達が幅広いラインアップを持っていった際にも展開がしやすいです。


福岡会場(上)と仙台会場(下)のカスタムIEMコーナーの様子(写真提供:ポタフェス運営事務局)

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