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本命は“置き薬”ビジネス? 液晶パネル搭載冷蔵庫「DIGI」の狙い滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2015年08月24日 14時39分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 まず発表会で最も注目を浴びたのが、液晶画面搭載の冷蔵庫「DIGI」だ。DIGIはジェスチャー操作が可能な液晶を扉に搭載し、テレビメーカーが「リビングの中心」として薄型テレビを位置付けてスマート化を図っているように、ハイアールアジアは食生活や家族のコミュニケーションの中心として冷蔵庫を活用するというものだが、どのようなビジネスを考えているのだろうか?

 「収益の柱はいくつか想定していますが、その1つがスーパーやコンビニなど流通との連携です。レジで読み込まれた会員情報と商品情報のデータベースをDIGIと連携すれば、手で入力しなくても冷蔵庫内の食品情報を管理できるようになります。卵の消費期限が近づくとアラートを出すだけでなく、連携した流通業者のネットスーパーでその食品を購入するといった流れを作ります。そこで生まれた利益を分配するというのが大きなビジネスモデルです」(同氏)

「AQUA DIGI Type 3」(仮称) 。ディスプレイを4枚搭載し、リビングなどに設置してインテリアの1つとして使うことを想定したモデル。提供したいバリューは「家具」。販売方法もType 1や2とは異なる可能性があるとのこと

 しかし、ただでさえ冷蔵庫は家電の中でも高額な部類に入るが、冷蔵庫+複数液晶が組合わさった家電となると、価格はさらに上がってしまうと予想される。果たして商売になるのだろうか。「販売方法は携帯電話と同じようなものを考えています。本体価格を抑え、月額のサービスプランや保険パックなどを提供するケータイキャリアのビジネスモデルに近い形かもしれません。例えば、冷蔵庫をスマートフォンのように、2年でごとに継続的に買い替えてもらう契約にして、月額で便利なサービスを使ってもらう仕組みにすれば、ハード自体は安価で提供することも可能だと思います」(同氏)

 つまりはこうだ。DIGIを購入した人が、例えばイオンや西友といった(現在はまだまだ未確定だが、今後、もしかしたら提携先となるかもしれない)スーパーマーケットで購入したPOSデータがインターネット上のクラウドサーバーを経由してDIGIと連携。そこで購入した生鮮食品などの賞味期限などが切れる前にアラートを表示したりする。将来的にDIGIの中身をリアルタイム検出できるような進化を遂げれば、DIGI内から食品がなくなると画面に「追加で購入しますか?」などと表示され、クレジットカードデータをひもづけておくと、まるでAmazonで購入するかのように生鮮食品が届く。この利便性の高いサービスをユーザーは月額で使用できるようにして、そこで生まれた利益をハイアールアジアと流通などで分配するイメージだ。

手が濡れたり汚れたりしている場合でも安心して使えるジェスチャー操作。なくなった食材をネット注文するといったこともできる(DIGIの紹介動画より)

自宅と実家にDIGIを置くことで、 実家にあるDIGIのドアの開閉情報を確認し、高齢者の見守り機能として使うことも可能だ

スマホへのビデオ通話の着信を「DIGI type 3」に転送し、大画面で通話するといった使い方も想定している

 確かに、こういったビジネススタイルは、これまでの家電メーカーでは考えられなかった形だ。ハードウェアの売り切りスタイルではなく、完全にコンテンツサービスのようなビジネス手法を家電メーカーが取り入れる。さらにそのスタイルが色濃く反映されているのが、デジタル額縁「iG」(inter gallery)である。

 「ハードウェアである『デジタル額縁』は単なるツールであり、さきほどのDIGIとは違って、ハードウェア自体に大した価値はありません。ここで重要なのは、背景にあるコンテンツプラットフォームです。現在はロックアーティストのデジタルアーカイブを提供する『Rock Paper Photo』に合意をいただいており、その他のコンテンツプロバイダーとも交渉を進めているところです」

intergalleryは写真や絵画、イラストを表示するコンテンツプラットフォーム

米国のロックアーティストのフォトデータをデジタルアーカイブする「Rock Paper Photo」の写真をストリーミング再生できる

 どのようなものを今後のコンテンツとして考えているのだろうか? 例えば、アマチュア写真家やアーティストがコンテンツを販売できる「LINE CR EATORS MARKET」のようなプラットフォームを検討しているというが、ユーザーとしてはメジャーなコンテンツの登場も期待したいところ。例えば「機動戦士 ガンダム」や「新世紀 エヴァンゲリオン」といった有名なアニメの書き下ろしコンテンツなども楽しめたりしないのだろうか?

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