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4Kとハイレゾの市場を広げるには?――ソニーの“次の一手”IFA 2015(1/2 ページ)

» 2015年09月08日 00時08分 公開

 「4K」というキーワードも、最近ではごく自然に聞くようになってきた。同分野で先行していた国内メーカーだが、すでに海外メーカーもキャッチアップしており、4Kそのものでの差別化は難しい状態になりつつある。そんな状況下、IFAではパナソニックと並んで数少ないAV関連の展示を続けるソニーは、どのような戦略を描いているのだろうか。IFA前日に開催されたプレスカンファレンスでの発表内容と実際の展示を比較しつつ、そのあたりを考えてみる。

4Kはデザイン性と映像技術で勝負

 今回のプレスカンファレンスでソニー代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏の説明を聞いて印象的だったのが、4Kテレビにおけるデザイン性に強く言及していたことだ。4Kテレビはその性質上、50型以上のラインアップが中心になるなど、日本のユーザーからみれば比較的“大きい”サイズとなる。つまりそれだけ部屋における設置スペースが大きくなり、否が応でも自己主張が強くなる。フレームレスデザインやスタンド形状など、各社が大型液晶テレビにおいて特にデザイン面に言及する理由の1つだ。

4Kテレビの画質とデザインに言及するソニー代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏。特に「X90C」シリーズの超薄型ボディーをアピール。、床やテーブル置きのほか、壁掛けにしても違和感なく周囲に溶け込むデザインだという

 最新ラインアップの「X90C」(海外モデル、日本ではX9000Cシリーズに相当)では、超薄型筐体が特徴となっており、通常のスタンドによる床やテーブルへの設置のほか、壁掛けにしても違和感なく設置可能な点を平井氏は強調している。ブースでの展示もこの点を強調すべく横一列に4枚のテレビを並べた状態で設置されており、来場者らが薄さを確認すべく何度もテレビの前後を往復している様子がうかがえた。また壁掛け設置が最初から考慮されているため、専用ブラケットが標準添付されている点も特徴だ。その薄さにより壁面近くまでディスプレイ面を寄せることができるため、壁から浮き出るような違和感は少ない。また薄型筐体とはいっても下側に重心があり、全体でバランスがとられているため、スタンドを使って床に設置した場合に地震などで倒れることもないという。

プレスカンファレンスでの説明を体現するかのように、ソニーブースでの4Kテレビ展示は薄さとデザインを強調したものとなっていた。横一列に4台のテレビを並べた展示で、その薄さを確かめるかのごとく来場者は何度も本体の正面、側面、背面を交互に見比べている様子が印象的だった。また、壁掛け用のブラケットはオプションではなく標準添付となっており、購入直後からどちらでも好きな設置方法を選択できる

 またソニーの説明員の話によれば、日本ではスピーカー内蔵型が好まれるため、ハイレゾ対応テレビにあるようにスピーカーを左右に配置したモデルが投入されているが、欧州ではサウンドバー文化のほうが中心とのことで、なるべくフレームの面積を減らしたスリムなデザインが好まれるという。テレビを隙間を空けずにくっつけて大量展示しているのも、こうした志向を反映したものだと考えられる。

 ただ現状において、4Kテレビはコンテンツ不足という問題がある。地上波テレビやBlu-ray Discのようなパッケージメディアではまだ4Kコンテンツが提供されておらず、そうしたソースを見る場合はアップコンバートが主流だ。一方で、「NETFLIX」をはじめとするオンラインで動画ストリーミング配信を行っている事業者らは4Kコンテンツの提供をスタートしており、ソニーは今回「Amazon Video」との提携を発表した。

現状では4Kテレビの実力を生かすには4Kコンテンツを提供している動画配信サイトの存在が重要だ。プレスカンファレンスでは「Amazon Video」との提携を発表した

 4Kネイティブコンテンツは今後も少しずつ増加していくと考えられるが、ここで他社との差別化で重要となるのが映像技術だ。現在、4Kに関して「High Dynamic Range」(HDR)という技術の導入が進んでおり、間もなく規格化されるUltra HD BDでの標準技術として採用される見込み。HDRでは色の深度や空間の拡張が行われ、これまではBD化や配信時に“丸め”られてしまっていた色の階調表現がより豊かとなり、例えば暗所のディテールの再現や、鮮やかな色はさらに鮮やかに表示することが可能となる。そのあたりは実際のサンプルを比較すると明らかだ。

HDRの真価を見分けるには、輝度の高いオブジェクトの存在する映像や、逆光下でのコントラストの激しい映像、暗所で潰れやすい情報が含まれた映像などを参照するといい。デモに用いられているのはリオのカーニバル

HDRコンテンツの画質を再現するソニーの技術の1つが「X-tended Dynamic Range Pro」。単純にバックライトを当てるだけでは画面全体で輝度が均質になってしまい、明るいところがハイライトされず、暗いところは潰れてしまうという全体に“のっぺり”した絵になってしまうが、この技術を使うことでハイライトが強調されつつ、暗部も綺麗に再現され、非常にコントラストに富んだ映像になる。ソニーが毎回展示会のデモに用いている「Moulin Rouge(ムーランルージュ)」の映像の比較が一番分かりやすい

 ソニーでは「X-tended Dynamic Range Pro」という技術で映像のダイナミックレンジを拡大し、HDRコンテンツの登場を待ち構えている。ただし、HDRは未だ規格が複数存在しており、実際に視聴するときにはファームウェアアップデートが前提になる。このほか、HDR実現にあたって従来の方式に比べて2〜3割ほどデータ量が増加することもハードルになるかもしれない。このあたりの状況を見極めつつHDR対応製品を検討に入れるといいだろう。

HDR(High Dynamic Range)はコンテンツの情報量を増やすとともに、テレビ側の機能アップも求められる。ソニーは独自の「X-tended Dynamic Range PRO」で階調性を維持しながら黒を沈め、輝度ピークを向上させる

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