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» 2016年01月14日 14時07分 UPDATE

CES 2016:CESで話題になったディスプレイ技術を一挙レビュー、製品化の見通しは? (1/2)

「CES 2016」では、4K/HDRを軸に新しいディスプレイ技術がいくつも展示された。中でも注目のパナソニック「DX900シリーズ」およびソニーの「Backlight Master Drive」をAV評論家・本田雅一氏がじっくり試聴した。

[本田雅一,ITmedia]

 米ラスベガスで開催された世界最大級のコンシューマーエレクトロニクスショー「CES 2016」では、4K/HDRを軸に新しいディスプレイ技術がいくつも展示された。近い将来、日本市場に投入される製品としてはパナソニックの「DX900シリーズ」があり、また2017年までの長期視点ではソニーの「Backlight Master Drive」(BMD)も期待される。パナソニックやソニーによる有機ELテレビ(以下、OLED)投入の可能性を含め、まとめて振り返っていこう。

大きく改善したパナソニックのバックライト制御

 2015年にLSIプラットフォームを一新し、液晶テレビにおける色再現性の問題解決に取り組んだパナソニックだったが、今年のテーマはハイダイナミックレンジ(HDR)に対して、いかに対応するかだ。

 UHD Blu-ray Discだけではなく、動画配信サービスの「NETFLIX」がHDR映像の配信を行う予定で、Amazonもこれに追従するとみられている。放送でも今年から少しずつHDR放送が増えると予想されている。ただし、現在主流の液晶テレビでHDRを表現しようとすると、黒の表現と高輝度を両立させるために、バックライトの部分駆動をかなり大胆に行わなければ、その良さを引き出すことができない。

 バックライトの部分駆動を”ローカルディミング”というが、この分割の細かさや制御方法などが、HDR時代におけるテレビ画質を大きく左右する。まだ製品への実装が始まったばかりということもあり、ノウハウや技術の違い、あるいは投入するコスト(製品価格)による差が大きく、メーカーごとの個性を出しやすい領域だ。

ts_pressday04.jpg パナソニックが発表した「DX900シリーズ」

 欧州向け最上位モデルとして発表された「DX900シリーズ」は、液晶テレビのHDR画質を高めるため、512分割のローカルディミングが行えるVA液晶パネルを採用した。視野角を重視したIPSパネル採用機の印象が強いパナソニックだが、パネルコントラストがものをいうHDRではVA型の方が適切と考えたのだろう。

 512分割は、かの東芝「CELL REGZA」と同じ分割数だが、単に数を増やしただけではなく、バックライトの光学設計に工夫を加えている。光を拡散させる層に、光を遮蔽する格子状のフィルターを形成し、部分制御で明るさを変化させるマス目からの漏れ光を抑制。これにより、これまでにない細やかなローカルディミング制御が行えるようになったという。

 従来のパナソニック製ローカルディミング対応機で、やや気になっていた映像処理とバックライト輝度の不整合からくる不自然な動きも見られなくなっている。関係者に話を聞くと、ローカルディミングと映像処理のLSIを1チップに統合することで問題を解決できたという。

 現状、ローカルディミング制御は、ソニーのBRAVIA(ブラビア)が抜きんでて優秀だ。直接の比較はしていないが、今回のDX900シリーズはそれに近い制御になっている印象を受けた。その上で512分割と格子状フィルターを用いている。

 画質評価の面では、会場とは別にUHD Allianceが持つスイートルームでのデモに使われていたDX900をじっくり観る見会があったが、ピーク輝度1000nitsにまで引き上げられているにもかかわらず、暗めの映画コンテンツでも”ハロ”が抑えられた納得感のあるローカルディミング制御ができていた。

 日本では春の定期モデルチェンジで投入される見込みなので、桜が咲く頃までには日本市場での動向も判明するだろう。なお、会場でデモンストレーションされていたのは65インチモデルだが、一回り小さい58インチモデルも用意するという。

 このほか、パナソニックは技術参考展示としてレーザー光源バックライトを用いた8K解像度の55インチテレビも披露した。BT.2020の広色域を98%カバーするもので、確かに鮮やかな発色を実現していたが、ローカルディミング制御には対応していないという。

 またコンテンツ側も、デジタルシネマ規格のP3という色空間で制作されているものが多い。現時点では”将来に向けた研究開発の途中成果”と捉えるのが良さそうだ。

気になるOLEDテレビ動向

 HDRの時代、規格上は1万nitsまで収録可能となり、より高いピーク輝度を出せる液晶の方がOLEDよりも優位と思われがちだ。しかし、OLEDには圧倒的なコントラスト差(UHD Premiumロゴの取得条件だけでも液晶の40倍)があり、また画素ごとに自発光するため、ローカルディミング制御のような”ハロ”の発生もない。

 ある程度、照明を落として(夜のリビングルーム程度)鑑賞するのであれば、ピーク輝度が700nit程度と思われる現在のOLEDでも充分、眩しいほどの輝度が出ている。むしろ、局所コントラストの高さが際立つことから、部分的にキラリと光るシーンはOLEDの方が表現がうまく、真っ暗闇にほんのりと光る星などは、液晶では表現できないような暗い星までが見えてくる。そのコントラストの力たるや、やはり魅力的と言わざるを得ない。

 前述したUHD Allianceの設定したスイートルームには、韓国LGエレクトロニクスの“SIGNATURE”シリーズ「G6」が置かれ、ハリウッドコンテンツを楽しむことができた。たまたま観たのは、フランシス・F・コッポラ監督の旧作を4K/HDRでリマスタリングしたもの(『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』など過去作品を一気にリマスターしているようだ)だが、真っ暗なジャングルで兵士がうごめく様子が、今までにないリアリティーで描写されていた。

ts_lgces01.jpg LGの「G6」は77V型の4K OLEDテレビ

 近代的なデジタルシネマカメラで撮影されていたソースも、見た目には”ゼロ”といっていいレベルまで下がる黒の引き締まりと、それに対する対比としての白ピークが局所コントラストの高さと相まって際立っていた。

 ただし、”高輝度部の色ノリが良い”というHDRの良さという面では、よく出来たHDR対応液晶テレビに一歩譲る。これはピーク輝度を出す際に、RGBW構成(Wはホワイト)の白画素で輝度を稼いでいるからと想像される。RGBW構成そのままに輝度を稼ぐ場合、一般的な駆動では明部の色再現領域が狭くなるのだ。

 このほか、LG製OLEDテレビの弱点でもある暗部階調の滑らかさやなどにも、まだ改善の余地がありそうだ。素性の良さは圧倒的。あとは絵作りやパネル制御を含めて、どこまで作り込めるかだろう。

 OLEDテレビといえば、多数の中国メーカーがLG製パネルを採用してOLEDテレビを展示していた。今後、LGのOLEDパネル生産拠点は稼働率がさらに上がっていくことが予想されるため、パネル自身の進化が今後は加速していくだろう。サムスンも安価な白色OLEDを用いたLGと同タイプのパネル生産に再び取り組み始めたという噂もある。

 中には欧州向けに発売されたパナソニック製のOLEDテレビ「CZ950」シリーズの国内投入を期待している人もいるかもしれない。昨年秋、同じく欧州向けに「CZ900」シリーズが発売されたが、ついぞ日本では発売されなかった。

 しかし、何人かの関係者から事情を聞いたところ、年内の国内投入はないという。理由は不明だが、日本国内は次世代モデルからのOLEDテレビ投入となる模様だ。どうやら、LG方式のOLEDパネルで高画質を引き出すための研究開発をしているようで、それらの技術を盛り込んだ後、“満を持して”国内投入に臨むつもりのようだ。

 例えば前述した、RGBW画素構成における高輝度部のカラーボリューム縮小については、高輝度部で濃い色を出す場合に限り、W画素をほとんど使わず、RGB画素だけをブーストして表示するなどの制御を行うという。当然、発光寿命への懸念が出てくるが、ブーストして光らせる時間管理などを徹底したり、そうした処理が不要な色に対してはブーストをしないなどのアイディアを組み合わせて解決しているとのことだ。

 もちろん、詳細はまだ先にならねば分からないが、OLEDテレビが欲しいのであれば、パナソニック製OLEDテレビの国内投入を待つのも手だろう。

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