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目指したのは“神の領域”の高画質――ソニーの4K/HDRテレビ向け新技術「Backlight Master Drive」開発者に聞く(1/2 ページ)

» 2016年01月07日 20時06分 公開
[山本敦ITmedia]

 ソニーは「2016 International CES」を舞台に、4K/HDR液晶テレビ向けの画期的な高画質化技術「Backlight Master Drive」を発表した。同技術の開発に携わるソニービジュアルプロダクツ株式会社の小倉敏之氏、長尾和芳氏に、今後のブラビア新製品への搭載計画も含めた可能性を聞くことができた。

インタビューに応じていただいたソニービジュアルプロダクツの小倉敏之氏(写真=左)と長尾和芳氏(写真=右)

 初めに新技術の「Backlight Master Drive」を開発したきっかけについて、小倉氏が説明した。通常、人間の目は自然界にある明るさのダイナミックレンジを10万:1のレベルまで認識できるが、これまで標準とされてきた映像伝送方式では伝送系の制約により1000:1までしかカバーできないことから、被写体本来の色彩や輝度がカメラで記録されていながらもディスプレイに表示されるまでに多くのデータが失われることになってしまっていた。

 ところが近年、HDR(ハイダイナミックレンジ)の技術が登場し、伝送系の能力が10万:1の映像情報をカバーできるようになったことで、小倉氏が「テレビの画質を決定する5大要素」として掲げる「解像度・階調性・フレームレート・色域・輝度」がバランス良く満たされるようになり、今度は表示機器であるテレビで、いかにHDRの映像をしっかり表示するかという点に次の主眼が移ってきた。これに対してテレビのバックライト技術の進化を追求した結果、「Backlight Master Drive」が誕生したのだという。

ソニーのブースに展示された「Backlight Master Drive」の技術を紹介するための85V型液晶テレビの試作機

 「Backlight Master Drive」とは、従来の液晶テレビよりもさらに緻密にLEDバックライトを制御するための技術である。その内容は4つの要素技術で構成されている。まずは独自の光学設計により、バックライトの光漏れを低減し、光を効率よく扱える特殊構造を採用している。さらに新たな高輝度LEDを使い、直下型LEDバックライトシステムとして高密度に敷き詰めて、これを緻密に駆動するための駆動アルゴリズムを乗せている。非常に近接したかたちで配置されている1個1個のLEDバックライトが互いに干渉して光漏れによるノイズを発生させないよう、光学設計技術でこれを抑え込んだ。

 また一般的にはLEDを高密度に配置すると熱処理の課題が出てくるものだが、今回ソニーが開発したプロトタイプのディスプレイには、一般的なテレビと同じクーリングシステムが採用されているだけで、同サイズのディスプレイと比べてセット全体の消費電力は全く増えていないのだという。小倉氏は「パネルを駆動するための電力を上げれば、これに伴って輝度も高めることはできるが、そのアプローチでは一般的なテレビとして熱処理の問題等により使えないものになってしまう。消費電力を増大させず、いかに輝度を高めるかという点で今回の技術には工夫を凝らしてきた」と説明する。

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