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» 2016年06月07日 14時06分 UPDATE

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:世界の4K番組最前線! 「miptv2016」レポート(前編) (1/5)

昨年、スカパー!を皮切りに4Kの商業放送がスタートし、ハード/ソフトの両面で4Kの存在感が増しているが、日本以外はどうなっているのか? 実は、世界の映像コンテンツ業界は今、4Kの可能性に夢中だ。

[天野透,ITmedia]

 昨年、スカパー!を皮切りに4Kの商業放送がスタートし、ハード/ソフトの両面で4Kの存在感が増す中、「世界的に見て4Kってどうなの?」という疑問は自然なものだろう。その疑問に対して、映画の街として知られるフランス・カンヌで開催されたテレビ番組の商談会「miptv」での取材をもとに、4Kスペシャリストの麻倉怜士氏がズバッとお答えする。世界の映像コンテンツ業界は今、4Kの可能性に夢中だ。

miptvの会場は世界有数の映画祭として有名なカンヌ国際映画祭と同じ「Palais des Festivals」(パレ・デ・フェスティバル)。高級リゾート地のコート・ダジュールを望む絶好のロケーションだ

麻倉怜士氏プロフィール

1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」にて副会長を任され、さらに津田塾大学と早稲田大学エクステンションセンターの講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“4足のワラジ”生活の中、音楽、オーディオ、ビジュアル、メディアの本質を追求しながら、精力的に活動している。



天野透氏(聞き手、筆者)プロフィール

神戸出身の若手ライター。「デジタル閻魔帳」を連載開始以来愛読し続けた結果、遂には麻倉怜士氏の弟子になった。得意ジャンルはオーディオ・ビジュアルにかかる技術と文化の融合。「高度な社会に物語は不可欠である」という信念のもと、技術面と文化面の双方から考察を試みる。何事も徹底的に味わい尽くしたい、凝り性な人間。



麻倉氏:今回はカンヌで4月に開催された国際的テレビ番組見本市「miptv」の、4Kに関するお話をしましょう。miptvは世界的に見ても最大規模で、各国のテレビ局やプロダクションが作品を並べ、バイヤーと商談をする、放送業界向けの見本市です。

――世界中の最新テレビ番組が集まるということは、ここへ来ると世界のテレビ業界の今が分かる、つまりテレビ・エンタメにおける世界最先端の空間ということですね

麻倉氏:このような催しは毎年4月と10月の2回開かれています。4月はmiptv、10月は「mipcom」(ミップコム)で、mipcomの方がコンテンツの幅が広いという特徴がありますが、基本的にはどちらもテレビ番組の国際商談会という性格を持っています。

 また、ソニーが今回で5回目となる先進技術セミナーのスポンサーを担当しました。5年前は3Dがブームだったので、それに関するシンポジウムを多数開いていましたね。3年ほど前からは4Kの普及を図るため、さまざまなプロダクションや番組を紹介する場となっています。もちろん今年も4Kセミナーが開かれ、特に4Kの広がりやHDR(ハイダイナミックレンジ)が話題の中心となりました。

――コンテンツに関するトレンドのみならず、テクノロジーに関するトレンドもしっかりと押さえることができる催しとなっている訳ですね

麻倉氏:日本では伝わりにくい欧米における4K展開の様子が、ここでは具体的な実例をもって伝えられます。セミナーを含め、この催しがテレビ業界にとってはとても重用な情報源となっているため、私は毎年取材へ向かっています。そのため単年ではうかがい知ることができない4K部門のコンテンツ的、またはインフラ的な拡充が、急ピッチで進んできたという印象を受けました。

麻倉氏:まず業界の全体状況として、最近は4Kに参加するプレーヤー(事業者)がさまざまな面で増えてきています。しかも放送だけではなく、通信を含めた4K伝送に関する展開が急ピッチで進んできたという印象です。

 先程話したセミナーは、会期中の3日間に渡って放送局やプロダクションといった業者がこれからの展望を語る会です。セッションは1日の間に午前3人、午後5人が組まれており、朝9時から始まって、お昼に2時間の休憩を挟んだ後、6時まで次々と最新情報が披露されます。

――3日3晩、朝から晩まで延々としゃべりっぱなしですか

麻倉氏:映画の街として知られるカンヌは南仏の地中海沿岸らしい夏盛の気候で、日差しは強く、コートダジュールは既にビキニ姿の人が多数という場所なんですよ。(その後に行ったミュンヘンはアルプスの向こう側なので寒いわ雨だわと散々でしたが……)、そんなヨーロッパ有数のリゾートには目もくれずに、ひたすら4Kの最前線を取材していました。

――仕事とはいえ、辛いですねぇ……

麻倉氏:取材を通じ、4Kにおいて日本が世界最先端であることは間違いないと分かりました。スカパー!の4K放送が5月に3チャンネル体制になった(無料放送の「スカパー!4K体験」を追加)ことをはじめ、4K制作を行うプロダクションも増え、NHKの本体も本腰を入れて動き始めました。日本の情況については後ほど詳しくお話しましょう。

 ヨーロッパにおいての大きな動きとしては、フランスのOrange(オランジュ:日本のNTTにあたる旧フランス・テレコム)が自社通信ネットワークで4Kを展開したことですね。オランジュは累計で30億ユーロを光通信に投資し、今年末までにスポーツと映画に関する4K放送とVODサービスを開始すると発表しました。通信関係としてはかなり大規模です。

 これに対して衛星放送は既にかなり多くのプログラムが展開されています。世界第3位の衛星放送事業者であるフランスのEutelsat(ユーテルサット)では、既に8局が4K放送を提供中です。一例を挙げると、米国SPI Internationalの「FunBox 4K/UHD」や、トルコ向け4K放送の「Digiturk」(デジトルコ)、アフリカ向けの「4K Africa」、オランダで昨年10月から放送を始めた「INSIGHT」(インサイト)などが既に4K放送を実施しています。また、世界第2位の衛星放送であるルクセンブルクのSESは、昨年9月からファッション/ライフスタイル専門チャンネル「Fashion One 4K」を全世界に向けて発信中です。

 そのほか、ドイツのpearl.tv(パールTV)は通販番組として世界初の4K放送を、「NASA UHD TV」では自然科学を、といった様子で拡がりを見せています。

――通販番組で4Kですか? 思わぬところから変化球が飛んできた感じがしますが……

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