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HDRが起こした映像革命――2016年のAVシーンを振り返る山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/3 ページ)

» 2016年12月27日 06時00分 公開
[山本浩司ITmedia]

 年の瀬なので、2016年を総括してみたい。AVシーン今年最大のトピックは、Ultra HD Blu-rayとHDR (ハイダイナミックレンジ)の登場と断言していいだろう。その新しい提案にいかに対応するか、メーカー、AVファンともに頭を悩ませた1年だった。

 3月1日に北米でソニーピクチャーズエンタテインメント、20世紀フォックス、ワーナー・ブラザース、ライオンズゲートなどからハリウッド産Ultra HD Blu-rayが発売され、わが国でも6月から本格的に市場導入された。

今年6月には日本でもUltra HD Blu-rayの販売が開始された

 そのタイミングで各メーカーからHDR対応ファームウェア・アップデートが次々にアナウンスされたのは、Ultra HD Blu-rayのHDR収録の実情を各メーカーがつかみ、画質にどう反映させればよいかをエンジニアが理解したからだろう。

 とくにその画質に感銘を受けたのが、UHDプレミアムの認証を受けた液晶タイプのパナソニック「DX950」シリーズと有機ELのLGエレクトロニクス「E6P」シリーズだった。従来よりも大幅に分割数を細かくして精妙なローカルディミング(部分減光) を実現して、明暗のダイナミックレンジを生々しく訴求したDX950は、ぼくにHDRの魅力を初めて実感させてくれた4Kテレビといっていい。

パナソニック「DX950」シリーズ(写真=左)とLGエレクトロニクス「E6P」シリーズ(写真=右)

 一方のE6Pシリーズは、自発光ディスプレイとHDRコンテンツの相性のよさを確信させてくれた記念すべき有機ELテレビ。漆黒の夜景に灯る街灯や夜空に浮かぶ星々のきらめきなどの場面で、HDRと有機ELの相性の良さをまざまざと実感させられたのだった。2017年の早い時期には、LGディスプレイ製パネルを用いた国内メーカーの有機ELテレビが登場してくると予想され、その仕上がりにも期待したい。

 そして秋が深まるころ、ソニーから大画面液晶テレビ「Z9D」シリーズが登場する。65V型、75V型、100V型で展開されるこのシリーズこそ、2016年のAVシーンでひときわ光り輝くモニュメンタルな製品といっていいだろう。LEDバックライトの個別制御という本質的な技術課題に果敢に挑み、見事な成果を挙げたのである。

「Z9D」シリーズの75V型「KJ-Z9D」

 サイズによってその値は異なるが、Z9Dシリーズは1000nitsをはるかに超える十分な明るさを得ているため、4000nits基準でグレーディング(制作)されているUltra HD Blu-rayでは、最大輝度1000nitsのマスターモニター「BVM-X300」以上のハイライトの階調表現を実現しているのだ。

 700万円という驚愕のプライスタグが付けられているが、100V型の「KJ-100Z9D」の画質がとりわけ凄い。明るさの余裕を活かして常時ブリンキング(瞬間的に明滅させること)という手法を採り、動きボケという液晶テレビの宿命的な弱点を一掃している点にもおおいに感心させられた。

100V型の「KJ-100Z9D」
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