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HDRが起こした映像革命――2016年のAVシーンを振り返る山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/3 ページ)

» 2016年12月27日 06時00分 公開
[山本浩司ITmedia]

4KプロジェクターもHDRに合わせて進化

 一方、プロジェクターのHDR 対応については、この夏の時点ではJVC「DLA-X750R」が群を抜いて完成度が高かった。

「DLA-X750R」

 本機の光源は1800 ルーメンの高圧水銀ランプで、ゲイン1の100インチスクリーンに投写した場合、nits(カンデラ/平方メートル) 換算すると、おおよそ200くらい。最大輝度を1万nitsとし、明るさを絶対値として扱うHDR10(Ultra HD Blu-rayで採用されたHDRフォーマット)コンテンツを「それらしく」再生するの不可能ではないかと思えるが、JVCの開発陣は、発売されたハリウッド産Ultra HD Blu-rayを精査し、以下の結論を得たという。

 それは、現状のUltra HD Blu-rayの最大輝度レベルはおおむね1000nit設定の作品が多く、その場合、フレーム内の平均輝度の最大値は400nitsであるということ。JVC開発陣はそこに着目し、ファームウェア・アップデートによってX750R に最大輝度を400nitsに設定するHDR モードを持たせたのである。そして400nits以上の信号が入ってきたときのために「明部補正」の調整でガンマを寝かせる工夫を採ったわけだ。

 本機のHDRモードを体験し、2000 ルーメン前後の家庭用プロジェクターでもHDR コンテンツが「それらしく」楽しめることが確認でき、非常に頼もしい思いがした。JVCは本機の後継機として、明るさを1900ルーメンに上げ、Hybrid Log-Gamma(HLG)にも対応した新製品「DLA-X770R」をつい最近になって発表した。筆者は未見だが、一層の画質の練り上げが期待できる。

超高級機が続々

 また、この秋にはJVCから4Kリアル画素パネルを搭載し、レーザー光で3000ルーメンを実現した「DLA-Z1」が、ソニーから同じくレーザー光を用いて5000ルーメンを実現した「VPL-VW5000」が発表された。

4Kリアル画素パネルを搭載したJVCの「DLA-Z1」

 DLA-Z1が350万円、VPL-VW5000が800万円と値段も破格で、物量が投入された両機の画質はたいへん素晴らしいが、3000ルーメン、5000 ルーメンといってもやはり画面サイズは120インチ程度に留めておくのが賢明のようである。

ソニー「VPL-VW5000」

 というのも、例えばスクリーンサイズを150インチにまで拡大すると、nits換算で3000 ルーメンでは150程度、5000ルーメンでも250 程度の明るさに抑えられてしまうからだ(ゲイン1のスクリーンの場合)。

 裏を返せば、今こそ画質のよいハイゲイン・スクリーンが求められているともいえるわけで、2017年はスクリーンメーカーのHDR対応を期待したいと思う。

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