インタビュー
» 2017年04月18日 06時01分 UPDATE

これぞイノベーション、“音のバリアフリー”を実現する「ミライスピーカー」の仕組みと未来 (1/2)

[芹澤隆徳,ITmedia]

 スピーカーから10m離れても音量があまり変わらず、しかも遠くの音や声を聞くときとは明らかに違う明瞭(めいりょう)さを保つ。SoundFun(サウンドファン)というベンチャー企業が開発した「ミライスピーカー」は、“音源から離れれば音が小さくなる”という常識を覆したスピーカーだ。これが最近、“音のバリアフリー”として注目を浴びている。

「ミライスピーカー」の新製品「Curvy」(カーヴィー)。奥にあるのは既存モデルの「Boxy」(ボクシー)

 ミライスピーカーには、国内外で特許を取得した「曲面サウンド」という技術が使われている。これは、平面の振動板を湾曲させると、放出した音がエネルギーを失わず、遠くまで届くという現象を利用したものだ。サウンドファンの佐藤和則社長は、文房具店で売っている樹脂製の下敷きを曲げ、端にオルゴールをくっつけるという簡易的なデモシステムを用いて説明してくれた。

サウンドファンの佐藤和則社長と下敷きとオルゴールを使った簡易的なデモシステム。効果は抜群

 少しは離れた場所で体験する。下敷きを曲げなければ普通にオルゴールを鳴らしているのと大差ない。しかし曲げた途端、オルゴール単体の時とは比べものにならないほど音が大きく聞こえる。弧を描く面から正面に向けて音が伸びてくるような印象だ。

 「曲面サウンドを開発したきっかけは蓄音機です。音楽療法を手がける大学の先生から『難聴の高齢者は、通常のオーディオ用スピーカーより蓄音機のほうが聞きやすい』という話を聞き、蓄音機の金属管の曲面に秘密があるのでは、と直感しました。楽器はいずれも側板などが曲面でできています」(佐藤氏)

 試作機を作り、重度の加齢性難聴だった父親に聞かせたところ、「非常によく聞こえる」と言われたという。「さらに聞き続けることで普通の会話も聞き取りやすくなるという効果もあることが分かり、確信を強めました」と佐藤氏。実用化すれば74歳以上の高齢者の4割が悩んでいるという“聞こえ”の悩みを、ある程度解消できるのではないか。そう考えた佐藤氏は2013年に会社を設立した。

実は明確な仕組みは分かっていない

 曲面サウンドの音が遠くまで届く仕組みについて、実は明確な仕組みは分かっていない。周波数特性などを測定する手段はあっても、音波の形までは見えないからだ。

 同社では、従来のスピーカーが点音源であるのに対し、ミライスピーカーは曲面の振動板全体で音を発生させるため、音波が平面波に近く、拡散せずに進む性質があると説明している。「音は、空気を圧縮して疎密を作る疎密波の“縦波”(進行方向に対して平行)ですが、進行方向と垂直の向きに振れる“横波”も発生しているといわれます。この横波は、横波同士または縦波との間で干渉しないという特徴があり、縦波に比べて距離による減衰が少ない。これが遠くまで届く秘密ではないでしょうか。また(曲面サウンドは)縦波と横波が渦巻いて進むため減衰しにくいのでは、と話す研究者の方もいます」(佐藤氏)

 また、曲面サウンドは低音を出すことが苦手だが、人の声を含む中域から上は得意。周波数としては1万7000〜1万8000Hzまで出るという。さらに注目は、通常の3倍程度の“倍音”が出ていること。さらに、高調波振動によって10ミリ秒レベルの時間的な“厚み”もできているという点だ。

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