従来の水道水と洗剤で洗濯物を洗う場合に比べて、洗浄能力が20%アップしたという東芝ライフスタイルの新型洗濯機。その秘密は「泡」にあるという――。
東芝ライフスタイルは5月30日、業界で初めて「ウルトラファインバブル」を家庭用に採用した洗濯機「ZABOON AW-10SV6」など4機種を発表した。
縦型洗濯乾燥機の「AW-10SV6」(洗濯容量10kg、乾燥容量5kg)と「AW-9SV6」(洗濯容量9kg、乾燥容量5kg)は7月上旬から、全自動洗濯機の「AW-10SD6」(洗濯容量10kg)と「AW-9SD6」(洗濯容量9kg)は8月上旬から発売する。市場想定価格はAW-10SV6が20万円前後(税別、以下同)、AW-10SD6が14万円前後。
本機種の特徴は「ウルトラファインバブル」を洗浄に利用すること。ウルトラファインバブルとは、1μm(0.001mm)未満の気泡のこと。このウルトラファインバブルを含んだ水道水と通常の洗剤で洗濯すると、衣服の皮脂汚れに対する洗浄能力が従来に比べ20%アップするという。
なぜ極小の泡を含むと洗浄能力が上がるのか。東芝ライフスタイルの担当者が実験しながら解説してくれた。
まず見せてくれたのは、板につけた水あめを落とす実験。ウルトラファインバブルを入れた水道水と入れていない水道水のビーカーをそれぞれ用意し、水あめをつけた板を沈め、超音波洗浄機にかける。
すると、同じ洗浄時間でもウルトラファインバブルを含む水道水につけた方が、水あめがより多く落ちていた。
次に見せてくれたのは、布につけた疑似的な油汚れを落とす実験。先ほどと同様に、ウルトラファインバブルを含む水道水と含んでいない水道水に油汚れのついた布をつけ、それぞれ洗剤を入れて超音波洗浄機にかける。
こちらでも、ウルトラファインバブルを含む水道水につけた方が、汚れが多く落ちていた。
これら2つの実験では、ウルトラファインバブルの2種類の洗浄特性を示している。
前者は「極小の泡が物体どうしの間に入り込む」という特性。板と水あめの間に泡が入り込み、水あめの接着力が落ちることで板から剥がれやすくなるということだ。
後者は「極小の泡が界面活性剤の『運び役』になる」という特性。展示担当者によれば、界面活性剤の疎水基(水から離れ、油と親和性の高い部分)と親水基(油から離れ、水と親和性が高い部分)のうち、疎水基が泡の方を向き、親水基が水側を向くため、泡が界面活性剤に囲まれるという。
界面活性剤に囲まれた極小の泡は油汚れに近づくと、油汚れが泡よりも強く界面活性剤の疎水基を引き寄せるため、界面活性剤の泡の囲みが崩壊し、界面活性剤が油汚れに作用するということだ。
なぜウルトラファインバブル入り水道水と洗剤で洗浄能力がアップするのか。その答えは、「極小の運び役が繊維の奥まで界面活性剤を届けるから」ということだ。
ウルトラファインバブル単体でも汚れの接着力を下げる効果はあるが、「洗剤なしのウルトラファインバブルによる洗浄では、私たちの要求する洗浄能力までにはならない」(東芝ライフスタイル取締役 総括技師長 伊藤眞純氏)という。
ウルトラファインバブルによる洗浄(洗剤入り)では、水温5℃の洗浄でも従来の水温15℃の洗浄に匹敵するという。シャツなど衣類に付く皮脂汚れからくる黄ばみも、洗浄能力の向上で皮脂汚れの蓄積を抑えられるので、1年着ているシャツでも従来機に比べて黄ばみが少ないという。ただし、既に付着した黄ばみに対しては特に有効ではない。
ウルトラファインバブルを発生させる仕組みは意外と単純で、水道の圧力を利用して水道水を専用のノズルに通すだけだ。一度発生したウルトラファインバブルは、その大きさから浮力の影響をほとんど受けないので、水中に数カ月安定して滞留できる。
他社では、洗剤を使わずにウルトラファインバブルのみの水をトイレの洗浄に使用しているところもあるという。洗剤を使わなければ、洗浄に使うものは水と空気だけなのでその分環境に優しいといえる。洗剤を使っていても、洗剤の量を増やさずに洗浄能力を上げているのだから環境にとって悪いことではないはずだ。
この「極小の泡」が家庭向けに普及するのか、今後も注視していきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR