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麻倉怜士がナビゲート 2017年、注目のオーディオはコレだ!(後編)(3/4 ページ)

» 2017年12月19日 06時00分 公開
[天野透ITmedia]
麻倉氏御用達、パナソニックの高級BDレコーダーのパーツだったUSBパワーコンディショナーが、3代目にしてついに「SH-UPX01」として製品化。「レコーダーで使われない時のUSB HDD用ポートが発するノイズを何とかしよう」というのが開発のきっかけだとか。因みにコンデンサーには、インド・ヒマラヤ山脈の麓ビハール州で産出されるルビーマイカを材料に使っているという

麻倉氏:何せPCというものはオーディオ的観点など全く無視して作られているマシンですから、PCオーディオはノイズ対策を徹底的にやらないと、なかなかまともな音を聞けません。そのノイズ対策として、私にとっての最後の締めがこのパワコンです。私のイベントに来た方ならば、これを挿したVAIO Zを見ていることでしょう。USB端子に挿すと、パソコン本体の電源回路と繋がり、コンディショナー内部の抵抗とコンデンサーがパソコン内部の電源回路を“清める”、つまりS/Nを向上させるというわけです。

 1号機から比較すると、やっぱりぜんぜん違います。無い場合はどうしても色々なノイズが影響してしまう。USB端子を持ついろんな機材に使えますが、特に影響が大きいのはPCオーディオで、あれこれ対策をしてもノイズの影響はなかなか消せないものです。それがパワコンを使うと、明瞭(めいりょう)さや力感が増してレンジ感が広くなります。1号機はこの時としては良かったのですが、今聞き返すとクッキリ系ですね。少々硬くてしなやかさに欠けるという感じがします。

 UBZ1に付いてきた2号機はすごく良くなりました。硬さが取れてしなやか、滑らかになり、音楽の実体感が増しています。さらに粒子感も明らかに細かくなりました。そんなわけでこれまでPCオーディオのイベントでは、この第2世代モデルをマストで使っていました。点数をつけるならば、何も使わないと70点、1号機を使うと80点、2号機を使うと85点といったところです。

 そして今回の3号機、SH-UPX01。もう大違い、べらぼうに違います。まず音の解像感が違う。「こんな音が入っていたの!?」という発見があります。直接音もさることながら、間接音の解像感がこれまではギザギザ状に落っこちていましたが、ここがしっかり細部まで出ます。まるで44.1kHzのサンプリング音源が192kHzになった感じです。音場の透明感が増すと同時に、ツヤが明瞭に出てきます。単にワイドレンジな音が出るというだけでなく、音自身に付加価値が付いているのです。点数をつけるならば90点。

 例えばリファレンスとしてよく使うカラヤン「新世界」では、冒頭にあるチェロとコントラバスによるトレモロの振動数が違います。従来はベタッとした感じがありましたが、これがより細かく出てくる。そのほかフルートの空間感、距離感や、音場解像度が鮮明になり、ティンパニのキレ味・立ち上がりも良くなりました。「地下室のメロディー」では、ベースの雄大さ、ピアノの輪郭の立ち方、弦のセクシーな音色などの要素が、より音楽を楽しむ方向に向いています。

――「USBに挿すだけ」とはよく言ったものですが、逆に言うとどれだけUSB由来の電源がノイズで汚染されているかということですよね。オーディオに限らず、電気製品における電源の重要性をちゃんと見直すべきなのかもしれません

麻倉氏:もっと驚いたのは、旭化成繊維の電磁波吸収シート「パルシャットシート」を着けた時です。とある取材でこれを紹介されたので試したところ、S/Nや透明感が上がり、音の質感もよりグロッシーになりました。

某ハイエンドメーカーの数百万円もするネットワーク・プレーヤーを視聴した時のことです。いまひとつ音が硬かったので持参していたこれ挿したところ、断然しなやかになり、弾力性が付与され、質感が大幅に向上するといった感じで、音が激変しました。担当者は複雑な顔をしながらも、この変貌ぶりには素直にびっくり、目からウロコの様子。わずか(?)3万円の小さなアクセサリーが“泣く子も黙る”世界のハイエンド製品の音質を激向上させた、なかなか面白い体験でした。

“伝説の電源屋”の血統を受け継ぐACアダプター ボルトアンペア「GPC-D12」

麻倉氏:最後に紹介するものはボルトアンペアのオーディオ用直流電源「GPC-D12」です。音楽制作機器用に開発されたAC100V入力/DC12V出力の電源アダプターで、一般的には「ACアダプター」と呼ばれる分野の製品に当たります。

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