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» 2017年12月19日 06時00分 公開

麻倉怜士がナビゲート 2017年、注目のオーディオはコレだ!(後編) (1/4)

2017年秋のオーディオ新製品を紹介する今回の「デジタル閻魔帳」。コンポーネントを紹介した前編に続き、後編ではスピーカーとアクセサリーにスポットライトを当てる。

[天野透,ITmedia]

 オーディオ・ビジュアル評論家の麻倉怜士氏が2017年秋のオーディオ新製品を紹介する今回の「デジタル閻魔帳」。コンポーネントを紹介した前編に続き、後編ではスピーカーとアクセサリーにスポットライトを当てる。日英それぞれの一流ブランドが作るスピーカーや、あのパナソニックが本気を出したオーディオアクセサリー、“伝説の電源屋”を受け継ぐ製品まで。良い音で良い音楽を聞くためだけに心血を注ぐ、大小様々なメーカーの個性とこだわりがカタチとなって結実している。読めばアナタもきっと音にこだわりたくなる。

古くて新しいブリティッシュサウンドの魅力 タンノイ「LEGACY SERIES」

麻倉氏:秋のオーディオ収穫祭、後編は英国のハイエンドスピーカーブランド・タンノイからご紹介しましょう。「LEGACY SERIES」と銘打って登場した「ARDEN」(アーデン)、「EATON」(イートン)、「CHEVIOT」(チェビオット)の3機種です。

タンノイの「ARDEN」(アーデン)。1970年台のスピーカーをリバイバルした、タンノイの「LEGACY SERISE」の1つで、現代のテイストを取り入れつつも、タンノイらしい古風な品位や奥深さを感じさせる音。15インチの特大ユニットを搭載するため、設置場所はかなり選ぶ

麻倉氏:イギリスの町の名前を冠したARDENは、私がまだ大学生だった1970年代のスピーカーです。38cmの大型同軸ユニットを搭載しており、当時のオーディオマニアにとって憧れの存在でした。これの小型モデルとして28cmユニットのEATON、25cmユニットのCHEVIOTがあり、これらが今回復刻されました。まずデザインが現代のスピーカーシステムと違いますね。トールボーイのような縦長ではなく、現代にはほとんど無い横長を基調としています。幅広なので、設置にはある程度の部屋の広さが要求されます。現代のデザインに慣れた目で見ると、とても新鮮に映ります。

――横長基調のスピーカーというと、前編でちらりと名前が出てきたJBL「Olympus」が僕のイメージです。現行モデルではセンタースピーカーやサウンドバーを除くと、同じくJBLの「PROJECT EVEREST」シリーズくらいでしょうか。

麻倉氏:ユニットはもちろん、タンノイが追求し続ける同軸システム。同軸が持つ独特の音の良さや音場感、機敏さなどがあります。と、いうような前情報を耳にしていたので、発表の場となったミュンヘンでは「憧れだったアーデンがどう蘇るものか」と、すごく楽しみにしていました。ところが、これが全然良くなかった。姿形はノスタルジックなのに、肝心の音はパルシブでキレ味ギンギン、ドンシャリでダンス系ミュージックが似合いそうな、いかにも薄い現代的なものだったんです。見た目に期待してクラシックなどをかけると結構キツく、外と内とが乖離(かいり)していました。

――あらら、残念。思い出に裏切られてしまった感がありますね……

麻倉氏:そんなイメージがあったのですが、発売後に聞いたらびっくりするほど良くなっていました。どうやらミュンヘンではまだ開発段階だったようです。派手めな鮮鋭感が完全に無くなったわけではないですが、かなりバランスが良くなり、クラシックも充分に聞けるくらいの再現性がありました。タンノイならではの、アナログっぽいちょっと古風な説得力。そういうような味わいがスゴく出てきました。

 ドライバーサイズはARDENが伝統の38cm(15インチ)、CHEVIOTが30cm(12インチ)、EATONが25.4cm(10インチ)です。いずれも推進力があり、量感も質感もとても良く、シャープネスが良いですね。EATONで聞いたラトルのベートーヴェン第2番は、オケの粒子感が良く、輪郭感もしっかりしていました。音の塊感、安定感も良く、キレ味がありながらバランスも良いです。

 CHEVIOTは、EATONよりもスケール感が良かったです。ポール・マッカトニー「手紙でも書こうか」では、ベースの低音感の雄大さとなって表れていました。中域は少々硬いながら、張り出ている気持ちよさがあります。昔聞いていたタンノイのイメージが上手く出ていました。また、上から下までのつながりが良かったことも印象的です。ピアノは安定感があり聞き心地ちが良かったです。オケになると細かい音は少々出にくいですが、安定感の在るピラミッドスタイルのバランス感はとても良かったと感じました。

――タンノイって、プレステージシリーズのようなハイエンドクラスにならないと、細部がぼやけるイメージが僕にはあります。地元に「Westminster Royal」を朗々と鳴らしているカフェがあって、そこの音が僕にとってのタンノイのイメージなんですけれど(しかもアンプはマッキントッシュ!)、それを期待してエントリーモデルを聞いたら「あれ、タンノイってこんな音だっけ?」となったことがありました

麻倉氏:それは言えていますね。ブランドとしての音は確かに良いはずなのに、低価格モデルはガクッと音の品位が落っこちるきらいがあります。そういう意味では、Legacyシリーズは決してハイエンドではない、アッパークラスです。ですがご安心を。タンノイのいい味をしっかりと残している部類には入っていますよ。懐かしのタンノイの音がちゃんとするし、なおかつ低域の量感の持ち上げが気持ち良いです。

 この量感の持ち上げは15インチユニットのARDENが最もよく感じます。ラバーエッジでストロークが長く、低音の周波数感というか振動感というか、そういうものがすごくあるんです。私のシアターにあるJBL「PROJECT K2 S9500」も15インチウーファーが2発と巨大なシステムですが、こちらは制動が結構効いていて解像感があります。ところが同じ15インチでも、タンノイのこれは制動があまり効きません。それは必ずしも悪い意味ではなく、この場合は量感につながっています。

 まるでビジュアルのように音の大波がスピーカーから発せられ、ひょっとしたら体が振動するくらいと言いましょうか。巨大なサイズであることと、若干高域までかぶるので、設置する部屋は選びます。ですがその分、低音の力と中域の張りの魅力はなかなかに代えがたいですね。広い空間で悠々たる器量のある低音感を体で楽しむ、そんなスピーカーです。一般的には12インチのCHEVIOTがオススメでしょう。低音の良さから高音までバランスが良く、使いやすくて鳴らしやすいです。

実力派として復活した“ダイヤの輝き” DIATONE「DS-4NB70」

 麻倉氏:次に紹介するのは、うって変わって国産のブックシェルモデルです。かつて国産スピーカーの雄として一世を風靡(ふうび)した三菱電機のオーディオブランド“DIATONE”が、鮮明な音調と高解像度な音楽性を携え、「DS-4NB70」として鮮烈に復活を果たしました。

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