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格安SIMと「Jアラート」&セルラー版「Apple Watch」の関係/DSDSの仕組みIIJmio meeting 17(1/3 ページ)

インターネットイニシアティブが、10月14日に都内で「IIJmio meeting 17」を開催。「Jアラート」が格安スマホに届かない問題や、セルラー版「Apple Watch」がMVNOでは契約できない件について解説。DSDS(デュアルSIMデュアルスタンバイ)の仕組みにも触れた。

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 インターネットイニシアティブ(IIJ)は、10月14日に都内でファンミーティング「IIJmio meeting 17」を開催。その中で、「Jアラート」が格安スマホに届かない問題や、セルラー版「Apple Watch」がMVNOでは契約できない件について取り上げ、IIJの広報部 技術広報担当課長の堂前清隆氏がその疑問に回答した。また、MVNO技術開発部のエンジニアである木野純武氏は、DSDS(Dual SIM-Dual Standby)端末が、2枚のSIMで着信できる仕組みを解説した。

SIMロックフリースマホにもJアラートの「信号」は届いている

 IIJの公式技術ブログ「てくろぐ」を担当して堂前氏によると、北朝鮮がミサイルを発射するとアクセスが増加するそうだ。実際、アクセス状況をグラフにすると、iOS 11のリリースやiPhone 8/8 Plus、Apple Watchの発売当日よりアクセスが多かった日もある。

IIJmio meeting17
堂前氏が執筆しているIIJ公式技術ブロク「てくろぐ」のアクセス状況。ミサイルが発射された8月29日のアクセス数が際立って多い

 ミサイル発射がなぜMVNOや格安スマホに関係するかというと、Jアラートが格安スマホで受信できないという報道があったためだ。参議院外交防衛委員会の議事録にも、SIMロックフリー携帯電話にはJアラートが伝わらないのか、という質問が出たことが記載されていると堂前氏は紹介した。「実は国もけっこう気にしている」(堂前氏)という状況なのだ。

 ところで、Jアラートを警報のことだと思っている人が多そうだが、実は違う。政府は「国民保護に関する情報」を出し、これが自治体やテレビ局、キャリアを通じて国民に届く仕組みになっているが、Jアラートは、政府から自治体やテレビ局、キャリアに届けるまでのネットワークのことをいう。情報自体がJアラートではない。

 スマホや携帯電話に届くのは、ドコモの場合は「エリアメール」、auやソフトバンクの場合は「緊急速報メール」で、キャリアが届けている。「厳密には、『国民保護に関する情報がJアラートを通じてキャリアに届く。キャリアがエリアメールと緊急速報メールを使ってユーザーのスマホに届ける』という表現が正しい」(堂前氏)。

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Jアラートは政府から出される情報を自治体やテレビ局、キャリアに伝達する仕組みのことを指す。スマホに届いた警報はエリアメールや緊急速報メールだ。

 エリアメールや緊急速報メールの送信には、ETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)という通信方式が使われている。エリアメールと緊急速報メールで配信される情報は、いわゆるJアラートだけではない。緊急地震速報や自治体防災情報も配信される。

 では、格安スマホはエリアメールと緊急速報メールを受信できるのか。堂前氏は「格安スマホ(MVNO)契約者であってもエリアメールと緊急速報メールの信号は受信している」という。ただ、エリアメールと緊急速報メールはあくまでキャリアの契約者向けのサービスなので、MVNO利用者はサービスのターゲットに想定されていないと思われる。ただ、「ETWSの仕様上、MVNOを契約しているユーザーにも信号が届いている」(堂前氏)と解釈できるという。

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格安スマホでも、ETWSの仕様上、エリアメールと緊急速報メールの信号は受信している

 では、なぜ警報が鳴らない格安スマホがあるのか。エリアメールと緊急速報メールが届くかどうかは、信号の種類と使っている端末によって決まるという。iPhoneや、MVNO契約でも大手キャリア(MNO)が販売したスマホを使っている場合は、特に問題なく警報が鳴る。ただし、SIMロックフリースマホの多くは、自治体防災情報やJアラートが出た場合に警報が鳴らない。

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SIMロックフリースマホの多くは、自治体防災情報やJアラートが出た場合に警報が鳴らない

 なぜSIMロックフリースマホは、警報が鳴らない機種が多いのか。それは、エリアメールと緊急速報メールを配信するETWSに理由があると堂前氏は言う。「ETWSには“メッセージID”というものがあり、緊急地震速報は標準IDが決まっている。ところが、自治体防災情報、Jアラートについては、ETWSの規格としてIDが決まっていない。各キャリアが独自のIDを付けて配信している」(堂前氏)

 IIJが独自で調査したところ、ドコモは地震、津波に関しては標準IDを使っているが、それ以外では別のIDを使っていると思われる。詳細不明な情報については、SIMロックフリー端末で受信できないものがあるようだ。

 IIJが基地局シミュレーターを使って実験してみたところ、緊急地震速報の信号には反応するSIMロックフリースマホが多いものの、それ以外の信号に関しては反応できない機種が多いという。「3、4年前の端末だと、どの信号にも反応しなかった」(堂前氏)そうだ。しかし、ここ1、2年に発売されたSIMロックフリー端末は緊急地震速報に反応するものが多く、中には全てに反応する端末もあるという。

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緊急地震速報には標準IDが使われているが、自治体防災情報やJアラートはキャリアが独自のIDを使っているので、警報を鳴らせないSIMロックフリー端末が多い
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IIJの実験では、古めのSIMロックフリースマホは全滅。最近の端末は緊急地震速報には反応した

 全ての信号に反応した端末もあるが、メーカーはそれを積極的にアナウンスはしていない。それについて堂前氏は「エリアメールと緊急速報メールの仕様は非公開なので、どこまでやっていれば対応しているといっていいのか、外部からは分からない。メーカーも公式に対応しているとは言いにくい状況」と推測している。

 また、IIJ自身も対応/未対応をチェックすることはできるが、「機種が多いことと、ファームウェアのアップデートで受信状況が変わることがあり、その度にテストしなくてはならないとなると、手が回らず、取り扱い全機種をテストするところまで至っていない」(堂前氏)状況だそうだ。

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キャリアの仕様が非公開なので、端末メーカーは対応を公式にアナウンスできない。IIJも取り扱い機種が多く、全てをチェックし切れていないという

 なお、ETWSの仕組み上、対応機種でもエリアメールと緊急速報メールが届かない場合がある。「短時間でたくさんの端末に情報を配信するため、送りっぱなしになっている。規格上、受信できないこともある」(堂前氏)。つまり、MNOの端末でも受信に失敗することがある。

 また、Jアラートは、エリアを限定して配信されている。この配信エリアは政府、自治体、気象庁が判断して決めている。そのため、8月、9月のJアラートは東京には届かなかった。エリア外にいる場合は、どんな大事件でも警報は届かないものなのだ。

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