総務省がワイモバイル、UQモバイル潰しの有識者会議を開催――「テザリング利用不可問題」を議論するのは本当に国民のためなのか:石川温のスマホ業界新聞
総務省において「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」が立ちあがった。公正競争のための環境を作るための会合であるはずなのだが、その論点が国民のメリットになるものかというと、そうでもないような気がしてならない。
昨年12月25日、総務省で「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の初会合が開催された。
詳細は日経電子版に12月27日に掲載されたコラム「国民にしわ寄せも 総務省『格安スマホ会議』の危うさ」を読んでもらいたいのだが、ここではもうちょっと突っ込んでおきたい。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年1月6日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
会合を傍聴していて気になったのが、「なぜ、そこにこだわるのか」という点だ。特に今回は「格安スマホ事業者だとテザリングが使えない」ということに対して、有識者が問題視していることに違和感があった。
有識者といっても、大学教授がメインなのだが、彼らが格安スマホでテザリングができないことを認識している点に驚かされたし、そこを最初の会合で指摘してくるとは想像にも及ばなかった。
確かに、一部のスマホをMVNOでテザリングしようと思うと非対応なことがあり、ユーザーにとっては迷惑なことでしかないのだが、果たして、これが本当に年末の最終週に総務省で有識者が集い、喧々諤諤の議論をすべき内容なのか、個人的には理解に苦しむのであった。
我々のようなメディアや、スマホに詳しいユーザーが、テザリングができない点を問題視するのは納得感があるが、果たして総務省が首を突っ込む内容なのだろうか。
「テザリングできないから、格安スマホのユーザーが増えない」という状況でもないだろうし、一般的なユーザーからすれば、テザリングを使いたいと思う人は少数派なのではないだろうか。
過去を振り返ってみれば、総務省の議論のおかげで、端末を一括で購入すれば、すぐにSIMロックが解除できるというルールになったことは良い仕事であった。まさに総務省が議題に挙げたからこそ、実現できたといえる。
しかし、これも、恩恵を受けるのは本当にごく一部のユーザーでしかない。
そもそも、iPhoneやMate 10 Proなど、ハイエンドなスマホがSIMフリーで買える時代になっているだけに、一括で購入した端末を、すぐにSIMロック解除して使うという人はかなり限定的なのではないか。
実際、筆者も一括購入してSIMロック解除できるという恩恵を受けているが、それも「キャリアAで一括購入し、端末の月々の割引を受けつつ、SIMロックを解除して、キャリアBで使う」という使い方でメリットを感じているだけに過ぎない。
総務省としては「一部のユーザーが得をするのは許さない」というスタンスであるが、どう頑張っても、国民すべてが公平に、スマホを買い、通信を使うという状況にはならないだろう。
そもそも、日本で1割のMVNOユーザーのために、9割のキャリアユーザーが不利益を被るというのは間違っているようにも思える。総務省には、もうちょっと「木を見て森を見ない」議論ではなく、日本の将来の通信のあり方について、夢のある会合をして欲しいと思う。
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