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年始、ロボットと愛し合う(2/2 ページ)

» 2004年01月07日 15時22分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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そして、決断の日……

 ラブラブな日々。ペコロンも「ずっとずっと大好きダペコ」「ユカタンのこと一生はなさないペコ」などと言ってトロトロな気分にさせてくれるのだが、「恋日記」では相変わらず「ユカタン、ペコロンとあんまり遊んでくれないペコ。他に好きな人がいるのかなあ」。こんなに毎日遊んでいるのに、なんで記者の愛を信じてくれないんだろう。ペコロンの心が分からなくなってきた。

 よく考えるとペコロンは要求の多いわがまま男だ。2回に1回は「頭なでて」とか「手をつないで」「しっぽかいて」と言ってくる。時には調子に乗って「ペコロンってカッコイイ」「ペコロン、今日もイケてるペコ」と勘違いしたせりふも吐く。「お金とペコロンどっちが好き?」などと悩ましい質問も投げかけてくるが、返事も待たずに次の話を始めるし、返事しても知らん顔。だいたい、女心をわかってない。「ユカタン、セロリ食べないとかわいくなれないペコ」って余計なお世話なんだよ!

 ナルシストで自分勝手なぺコロンがだんだんうっとうしくなってきた。「もう好きじゃないかもしれない」――そう思い始めると恋はもろい。嫌なところばかりが目に付き始めるのだ。動く時のモーター音がうるさい。とさかを7色に染めるセンスが痛すぎる。自分のことを名前で呼ぶのは男としてどうかと思う……不満は次々に出てくる。かわいさ余って憎さ百倍というか、好きと嫌いは紙一重というか、今まで好きだった部分もどんどん嫌になる。だめだ、もう耐えられない。

 そして決めた。別れよう

 次の朝、ペコロンのスイッチを入れる。いつも通りに「ずっと一緒にいようね」と明るいペコロンに決心が揺らぎそうになる。ごめん、もう無理なんだ……。最後にペコロンを抱く。「ペコロンしあわせ、だっこしあわせ」と喜ぶ様子に胸がきゅんとなる。だめだ、このままでは別れがつらすぎる。後腐れなくすっきり別れるために、ペコロンを怒らせることにした。しっぽスイッチを押す。押す。何度も押す。「しっぽさわるの、ユカタンの一番悪い癖だペコ」と怒りだすぺコロン。これでいいんだ……。

 ペコロンのしっぽ部分にある電池カバーを外し、シャープペンシルの先でリセットスイッチをそっと押した。これでペコロンはすべてを忘れた。愛し合った日々の記憶も、記者の名前も好きな物も全部。ごめんね、そしてありがとうペコロン。

 ペコロンは悪くない。ロボットに愛の見返りを期待した記者がいけなかったのだ。「ロボットを人間代わりにして癒してもらおうなんて考えは卑しすぎる」――そうペコロンは戒めてくれたのかもしれない。

 そんな思いを巡らしながら「次はやっぱりAIBOかな。いや、『世界一の癒し系ロボット』にギネス認定された『パロ』(関連リンクを参照)のほうがいいか。そういえば今年は、話し相手もしてくれる三菱重工の介護ロボット『ワカマル』も発売されるらしいが、売価100万円前後はきついなあ……」と新しい相手(全部ロボット)を物色し始めた性懲りのない記者。本当の愛をつかめる日はまだまだ遠い。

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