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» 2004年02月05日 23時59分 UPDATE

海の男のIT事情「PCナビゲーション編」 (1/2)

IT業界にまったく関係ないように見える「第43回東京国際ボートショー」。あんたいったいなにしに行ったの? と、部内からも言われそうなこのイベントだが、見くびってはいけない。この業界、PC導入率が意外と高かったりするのだ。

[長浜和也,ITmedia]

 ユーザーの平均年齢が比較的高いプレジャーボートの世界。でも、以前は高い専用機器を使わないと入手できなかった気象情報や海洋情報、航路情報が、インターネットで簡単にただで入手できるとあって、熟年世代のオールドソルトたちは、自ら積極的にPCとWebを活用して情報収集を行っている。かようにPC/ITとプレジャーボード業界のつながりは結構強かったりするのだ。

 そもそも、民生GPSはプレジャーボートでの利用が始まりだったし(もちろん普及拡大に貢献したのはカーナビだが)、携帯電話もそのルーツをたどれば、長い歴史を誇る船舶電話に行き着くのである(ちなみに、記者の社会人第一歩はこの船舶電話系会社だったりする)。

 という背景を了解していただいた上で、マリンスポーツにおけるIT機器の最先端を取材すべく、同じ幕張メッセで行われている「NET&COM 2004」をぶっちぎって、記者は東京国際ボートショー会場に突入した。

kn_boatzen.jpg うーん、そうは言ってもIT系イベントとまったく雰囲気が違う「東京国際ボートショー」

自動操船も可能になったPCナビゲーションシステム

 プレジャーボートにおけるPC利用の王道といえば、GPSと電子海図アプリの組み合わせによるPCナビゲーションシステムだ。

 海上保安上発行のENCを利用するナビゲーションソフトのなかでコンシューマーで最も利用されているのがAlphaMapII。ボートショーでは「オートパイロット連携ナビゲーション機能」が追加されたAlphaMapII バージョン2.06のデモンストレーションを行っている。

 この機能は、航路計画機能で設定しておいた変針点に到達すると、接続されたオートパイロットをコントロールして次の変針点に向かう針路に自動で変針してくれる機能。数百万円もする本船用ナビゲーションシステムと違って「向かってくる障害物を避ける機能」はサポートしていないものの、本船航路から離れた外洋航海なら、入港するまで一度もティラーに触れることなく、事前に計画した航海計画に従って船が自ら進んでいくことだって可能だ。

 新しいAlphaMapIIがサポートするGPSデータは、従来と同じくNMEA0183フォーマットとソニーのIPSシリーズ固有のフォーマット。そして、制御できるオートパイロットはAPBセンテンスで動作する機器をサポートする。APBセンテンスはオートパイロットで最も普及しているRaymarineのSTシリーズでも使われているので、新しくサポートされた自動操舵機能を利用できるユーザーも多いだろう。

 ENC準拠の電子海図は海上保安庁発行というお墨付きの信頼性と安心感がある(ただし、ENCとAlphaMapの組み合わせでは、本船システムで認められている「海図携帯義務条件」を満たすことはできない)が、コンシューマー用途としてはいささか価格が高い。東京湾から足摺岬までを含むE3001が約7万3200円。これにAlphaMapの価格15万5400円を加えなければならないのだ。仲間で共同購入しても、AlphaMapの動作にはドングルが必要なので、同時に利用できるのは一台に限られる(ただし、LAN環境で同時利用が可能になるネットワークライセンスパッケージは用意されている)。

 ヨットクラブなどで共同利用できるような、パッケージ+複数ドングルという「複数ドングルライセンス」は今のところ用意されていないが「希望がある場合は応相談」(開発販売元であるピーシースタジオアルファ代表取締役の横溝達雄氏)

kn_alphzen.jpg

kn_alphmysp.jpg オートパイロット制御機能がサポートされたAlphaMapII Ver.2.06。デモではPanasonicのTOUGHBOOKにインストールされて動作。自船の針路方向に見える扇型のシンボルは障害物の探知エリアを示している
kn_alphalt.jpg 電子海図にある危険物(灯漂や暗礁など)やユーザーが設定した水深より浅い部分や避険線が扇形エリアに侵入すると、画面にアラートがポップアップで表示され危険を知らせてくれる
kn_pintmap.jpg 参考出品されていたPOINT MAP。GPSユニットを差したPDA端末で、海底地形地図に自分の位置を表示するもの。キャッチに「釣り師のための手にとるように海底地形がわかるソフト」とあるように、アングラーにとって有効なツールになるだろう

 さて、電子海図データにENCを使わないシステムになると価格は一気に安くなる。この方式のナビゲーションソフトでは、海図データをソフトの内部で持ち(そのため汎用性はない)ナビゲーションモジュールと一体で販売される。今回のボートショーで展示されていたのは、この形式の定番とも言うべき日本水路協会発行の「PEC」と、昨年11月にハンディGPSの大手メーカーGARMINから登場した「マップソース日本航海参考図」

 PECは「ヨット・モータボード用参考図」の電子版に相当するもの。東京湾付近、伊勢湾、瀬戸内海東部、同西部、九州北西部の6エリアが今までリリースされている。最近、価格改定が行われて1エリア1万2000円とかなり購入しやすくなった。

kn_peczen.jpg PEC「東京湾及び付近」で表示した浦賀水道付近。このエリアは2002年4月に改訂版がリリースされて、主要灯台の灯質や地名などが縮尺にあわせたフォントサイズで表示されるようになった。距離メジャーをサポートした航路計画機能やGPSプロット機能、ユーザーが自分でポイントを登録できるカスタマイズ機能などはそのまま踏襲されている

 PECの最新版は2003年12月に登場した瀬戸内海西部エリアの改訂版。ただし「改訂版は以前作成したデータを最新の状況にアップデートしたもの。精度で言うと海岸線などをイチからプロットしてを海図データを作成して2003年9月に出荷した九州北西部が一番データが細かい」(日本水路協会電子海図事業部 武元信義氏) 

 従来、PECのデータはENCのデータをユーティリティツールを使いPECデータにコンバートしていたが「当時のENCデータは縮尺5万の1がベースだったので精度が荒かった」(武元氏)。そのため、武元氏がマップ作成を担当した九州北西部版では「手作業で海図をトレースし、一つ一つデータをプロットしていった」という膨大な手作業によって、精度が格段に向上したという。

 今後、半年に1エリアの割合でデータの更新を行っていく予定。当初、九州北西部のように手作業で行うつもりだったらしいが「最新のENCは縮尺1万分の1がベースになっている(ENCは現在発行している15版全部を2004年3月12日に更新する予定)ので、変換ツールを使っても精度は向上するだろう」(武元氏)

 現在、PECの改良作業は「武元氏1人」という非常に厳しい人的リソースで進められている。「北海道や日本海側など、現在サポートされていないエリアのPECを出して欲しい」という要望がユーザーから「強く」出ているものの、とても手が回らない状況にあるという。このような状況で、武村氏は「個人的な意見」と述べながらも次のような興味深い発言をしてくれた。

 「すべての作業を日本水路協会内部で行うのではなく、民間と協力して開発を進めていく必要があるのではないだろうか。実際の作業は民間にお願いし、海図データのチェックを我々で行うようにする形態もありえるだろう」

 GARMINの「マップソース日本航海参考図」の海図データは、日本水路協会発行のERCがベースになっている。日本航海参考図のナビゲーションソフトはWindowsに対応しており PCに接続したGARMINのGPSと組み合わせてPCナビゲーションシステムとして使うことも可能だ。

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