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中国でインターネット10周年――「初のネット接続」の功労者に聞く

» 2004年05月17日 18時55分 公開
[IDG Japan]
IDG

北京の中国科学院高能物理研究所(IHEP)コンピュータセンターの元副所長スー・ロンシェン氏は、中国のインターネットの草分けの中でも突出した人物だ。

 1990年代初めに、同氏はスタンフォード大学の線形加速器センター(SLAC)と密に協力して、IHEPとSLACを結び、米中の物理学者によるプロジェクト「Beijing Electro-Spectrometer(BES)Collaboration」の研究者たちをつなぐ64Kbpsの直接接続を確立した。1994年5月17日、この接続が中国で初めての完全なインターネット接続となった。

 スー氏は最近IDC News Serviceの電話取材に応え、中国初のインターネット接続の10周年について語るとともに、同氏がこの歴史的な接続において果たした役割を振り返った。

――どのようにしてインターネットのことを知り、その可能性を理解するようになったのですか?

スー氏 1980年代に、私は何年もの間SLACで働いていました。その当時はDECnetやBITNETなどのネットワークがありました。それで、ネットワークは研究やほかのことにとって非常に重要だということを知りました。

 北京に戻ったとき、BES Collaborationは私にとって、SLACのスタッフやそのほか米国の教授と連絡をとり続けるという意味を持っていました。彼らは私にインターネットと呼ばれるネットワークについて話し、これは非常に便利で、ほかのネットワークよりもずっと進んでいるのだと教えてくれました。中国と米国の間にネットワーク接続を確立しようと決めたとき、われわれはインターネット接続を望んでいました。TCP/IP接続を確立しようとしたのです。

――初のインターネット接続につながったこの出来事を振り返って、インターネットが中国においてどれほど重要になるか、当時は想像できましたか?

スー氏 ええ、もちろん。インターネットは中国の将来にとって最も重要だと信じていました。私にとって、インターネットは基本的に科学的な研究のためのものでした。われわれは本当にインターネットを必要としていましたし、(中国)政府はこのプロジェクトを止めないだろうと確信していました。政府はわれわれがこれを成し遂げるのを支援しなければならなかったのです。

――当時を思い返すと、どんな気持ちになりますか?

スー氏 今でもとてもワクワクしますね。初のインターネット接続の確立に挑むのは、100年前で言うなら、新しい輸送機関を手に入れるために鉄道を敷設するようなものでした。われわれは新たな分野の開拓に取り組み、その目的はほかの人々、同朋たちに新たなアイデアをもたらすことにありました。胸躍る出来事でした。

――この接続への取り組みは科学研究が目的だったわけですが、インターネットが中国でビジネスなどほかの用途に使われる可能性を考えていましたか?

スー氏 それは考えましたが、最初はほかのことを考えるのは忘れた方がいいと思いました。私にとっては科学研究が最も大事でした。われわれにはそれが必要だったのです。ほかに心配するようなことがあれば、そうした問題は私ではなくほかの人たちが解決するだろうと思ったのです。

――過去10年間において、インターネットは中国に非常に大きな影響を与えたように思いますが。

スー氏 私もそう思います。考えもしていなかったことがたくさん起きました。こんなに多くの人がインターネットから収益を上げるとは思っていなかったし、若い人たちがインターネットにお金と時間を注ぐとも予想していませんでした。

――あなたから見て、中国での今後のインターネットの発展に関して、最大の課題は何ですか?

スー氏 技術的な面から言うと、世界中でも中国でもインターネットはハッカーに対して脆弱です。セキュリティ機能は確かに弱いと思います。私の機関や多数の同朋たちは、インターネット関連の分野に取り組んでおり、彼らは私にインターネットとインターネットアプリケーションを安定して運用する手段を見つける手助けを求めています。

――中国政府がインターネット上で入手できる情報を検閲していることについてどう思いますか? 将来的に、インターネットは中国でもっとオープンになるでしょうか?

スー氏 私の考えとしては、道のりは長く、容易ではありません。今のところ、インターネットをコントロールする方法はありません。もちろん、人々は良いコンテンツや悪質なコンテンツについて懸念しています。政府は中国内に入ってくるコンテンツをある程度コントロールしようとしてきましたが、すべてをコントロールするのは難しいと思います。

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