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米国防総省、高度な軍事シミュレーションにLinuxクラスタ導入

» 2004年08月18日 14時55分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米国防総省はコンピュータによる複雑な戦場シミュレーションの高度化を目指し、256個のプロセッサを使用するLinux Networxのクラスタスーパーコンピュータ「Evolocity」を2台導入した。

 これら新マシンの導入は、国防総省が推進中の技術更新プログラムの一環。このプログラムでは、米国の軍事研究開発力の強化に向けて強力なハードウェアの導入が行われている。

 Linux Networxは8月17日の発表で、2台のEvolocityがそれぞれハワイ州とオハイオ州にある国防総省のハイパフォーマンスコンピューティングセンターに納入、設置されたことを明らかにした。

 ハワイ州の米空軍マウイ・ハイパフォーマンスコンピューティングセンター(MHPCC)でプログラムマネジャーを務めるケビン・ベネディクト三等空佐によると、新しいEvolocityは3年間使用されてきた512プロセッサのクラスタシステムに代えて導入された。この旧システムは国防総省が現在取り組んでいる複雑な軍事シミュレーションを行うには力不足になっていた。

 Evolocityのもう1カ所の設置先は、オハイオ州デイトンにあるライトパターソン空軍基地の航空システムセンター大規模共有リソースセンター(ASC MSRC)。MHPCCとASC MSRCは、国防総省のハイパフォーマンスコンピューティング近代化プログラム(HPCMP)に基づく施設だ。

 新しいEvolocityでは、約100万の部隊や戦車、輸送車両、迫撃砲や陸上火砲などの兵器、戦艦、戦闘機などを含む米軍と敵の戦闘を想定した軍事シミュレーションが可能。このスーパーコンピュータにより、従来よりはるかに大量の人員と兵器を想定したシミュレーションを行えるとベネディクト氏は語る。

 MHPCCの技術ディレクター、デビッド・モートン氏は、Evolocityが選定された理由について、国防総省の調達プログラムで、同省のプロジェクトにとって最高の価格性能比を提供すると判断されたためと説明した。

 「このシステムは今のところ先端的な役割を担っているが、いずれは軍事要員のトレーニングに利用されるようになるだろう」とモートン氏は語る。「まだ研究所で使われている段階だが、その機能は実際の戦闘の支援に威力を発揮するようになる」

 国防総省によると、同省統合軍司令部(J9)はEvolocityクラスタを利用して、世界規模の仮想的な戦場での軍事作戦シミュレーションを行う。J9をはじめ米国中の軍施設の要員がMHPCCとASC MSRCにあるEvolocityを直接操作して、以前のハードウェアでは不可能だった高解像度の大規模軍事シミュレーションに参加できるようになっている。

 MHPCCとASC MSRCに納入されたEvolocityは、それぞれIntelのデュアルプロセッサシステム対応の3.06GHz Xeonプロセッサ256個、DataDirect Technologiesのディスクストレージ、Gigabit Ethernet技術、Linux Networxの管理ツール「Clusterworx」「Icebox」などで構成されている。

 Linux Networxは今年、国防総省のHPCMPセンターに合計6台のクラスタコンピュータシステムを納入する大型契約を獲得しており、今回納入したEvolocityクラスタはこの契約の一部。同社はこの契約の下、陸軍研究所向けに2132個のプロセッサを採用したシステムを構築中だ(2月23日の記事参照)

 「国防総省が実運用環境でLinuxクラスタを利用していることは、この技術にとって大きな前進だ」とASC MSRCの副所長ジェフ・グレアム氏は声明の中で述べている。「Linux Networxは高性能クラスタの提供に力を入れており、われわれは、HPCMPセンターの利用者へのサービスにクラスタが果たしている貢献とその今後の可能性を非常に歓迎している」

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