東京・上野にある国立科学博物館(科博)の新館が11月2日、グランドオープンした。恐竜の骨格から植物の模型、宇宙科学、ナノテクまで、科学に関するありとあらゆるものを一同に集めた。地上3階・地下3階、展示面積は8900平方メートル。じっくり見ると1日では回りきれないほど広い。
展示解説にはITを活用する。入館者全員に、個別のIDとICカードを配布。館内各所に設置した解説用端末にICカードをかざすと、見学の履歴が記録される。帰宅後、科博のWebサイトでIDとパスワードを入力すれば、自分がどこを見学したかをマップで確認できる。
PDAを使った展示物解説も利用できる。ヘッドフォン付きPDAを入り口で借り、展示物に近づくと、赤外線を感知してヘッドフォンから「ピロリン」と音が。再生ボタンを押すと、担当研究員とナレーターによる会話形式の解説が聞け、画面に解説文が表示される仕組みだ。PDAは500円で貸し出している。
ICカードとPDAを持って、早速館内に入ってみよう。
ハワイにある「すばる望遠鏡」のミニチュアが地下3階に展示されている。このミニチュア、自分で動かすこともできるのだが、ちょっと不思議な条件付きだ。
まず、そばに設置してあるディスプレイで見たい天体を指定する。その天体が同日午後8時、ハワイで観測可能な場所にある場合のみ、望遠鏡が天体の方向に移動するのだ。ミニチュア望遠鏡から天体を見られる訳でもないのに、細かいことろで妙にリアルだ。
すばる望遠鏡に搭載したCCD「モザイクCCD」も展示した。2048×4096ピクセル(約840万画素)のCCDを10枚並べ、1万240×8192ピクセル(約8400万画素)と超高解像度な記録に対応した。画像1枚のデータ容量はどれくらいになるのか、想像すると冷や汗ものだ。
同フロアには、銀河系の好きな位置から宇宙を見渡せるディスプレイも設置した。ジョイスティックを使って宇宙空間を3次元で移動可能。直径10万光年の銀河系を10秒あまりで旅行できてしまう。
2階には、宇宙飛行士の若田光一さんが1996年にロボットアームで回収した「宇宙実験・観測フリーフライヤー」(SFU)の実機が展示してある。
2階には初の国産コンピュータが展示されている。1956年、富士写真フイルムが開発した真空管式計数型計算機「FUJIC」だ。論理回路のクロックは30KHz、計算速度は「人間の2000倍」と、おおらかな基準で速さを示している。
その隣には、1960年に開発された旧国鉄「みどりの窓口」の座席予約システム初期バージョン。当初、東京−大阪間の特急4列車を対象に利用を始めたが「予想以上に信頼性があったため」(解説より)全国の列車に対象を広げてネットワーク化を進めたという。半信半疑で電算化を進めていった当時の様子が分かる。
世界初のマイクロプロセッサ「インテル4004」も展示。そばには日本初のマイコンキット「TK-80」(NEC)。「多くの若者を魅了し、後の情報産業に多大な貢献をした」(解説より)。
体験型展示も充実。地下3階では、脈拍の新しい測り方を体験できる。
脈拍は一般的に、1分間に何度脈打ったかを測るが、この装置は、脈拍1回あたりに何秒かかっているかを計測するという逆の発想。というのも健康管理用ではなく、自分の“単位感覚”を確認する仕掛けなのだ。「1秒ってどれくらいの長さなの?」を自分の脈拍を通じて実感できる。
他にも、1メートルを目分量で測ってみる装置や、1カンデラの光を体験できる装置もある。
自然科学系の展示も盛りだくさんだ。地下2階の天井に、くじらの祖先「バシロサウルス」の骨格模型がぶら下がっている。全長20メートルの骨格は圧巻で、下から見上げると結構怖い。
恐竜の骨格展示が目立つ地下2階だが、われわれ哺乳類だって負けていない。中生代(約2億4000万年前から約6500万年前まで)の哺乳類の骨格がいくつか展示されている。
ただ、当時の哺乳類の体長はせいぜい10−20センチ。解説によると、「恐竜に太刀打ちできないため、体を小さくし、夜行性になって生き延びた」――弱々しいなぁ。
「締め殺しの木」――ドキッとする名前の木が1階にある。マレーシアのボルネオ島からはるばる持ってきたというこの木は、全長74メートルあったのを、博物館に入る数メートルサイズに切った。それでも天井を突き抜けそうな高さだ。
枝や幹を他の木に巻きつかせ、宿主を枯死させてしまうのが“締め殺し”の由来。他人をしゃぶり尽くして大きくなる――どこかの企業と似ているなあとか、余計なことを考え込んでしまう木だ。
隣にはラフレシアのレプリカも展示してある。ラフレシアといえばガンダムを思い出してしまう記者(関連記事参照)だが、世界で一番大きな花だそうで。失礼しました。
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