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» 2004年11月05日 16時34分 UPDATE

電子書籍市場は離陸したか? Timebook Townの取り組み

電子書籍サイト「Timebook Town」がスタートしてから7カ月。専用端末による読書スタイルの普及や、出版社サイドの電子書籍への理解など、課題は多い。

[岡田有花,ITmedia]

 大手出版・印刷会社15社とソニーが出資したパブリッシングリンクの電子書籍サイト「Timebook Town」がスタートして7カ月。電子書籍の本格普及へ期待が集まったが、「まだブレイクには至らない」のが現状だ。読書端末で持ち運ぶ新しい読書スタイルへの認知度向上や、電子コンテンツ販売への“出版社の壁”など、課題は多いようだ。

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 パブリッシングリンクにはソニーや講談社、新潮社などが出資し、昨年11月に設立(関連記事参照)。今年4月にTimebook Townをオープンし、ソニーも電子ペーパーを採用した読書端末「LIBRIe」を発売した。

会員数は「右肩上がり」だが……

 「電子書籍は、すぐにブレイクするとは思っていない」――鳴り物入りのスタートから7カ月。パブリッシングリンクの真鍋礼孝副社長の口調はややトーンダウンを感じさせる。

 入会者の目標は1年で3万人。「入会者は毎日おり、右肩上がりに増えている」(真鍋副社長)が、会員数は非公開とした。雑誌やWebサイトに広告を打ったり、会員限定だったコンテンツを9月から非会員向けに一部公開するなど、今は地道にプロモーション活動を続けている段階だ。

 会員は20代から50代まで満べんなく分布し、60代もいるという。男女比は8対2。多くは元々本が好きだった人たちだ。メインターゲットである、“本を買わなくなった人”の取り込みはまだこれからとなる。

コンテンツと端末の“相殺”関係

 携帯電話やDVD、インターネットなどにお金と時間を割き、本を買わない現代人。彼らを本に振り向かせるきっかけになると期待するのが、専用端末「LIBRIe」と、購入から60日間のみ閲覧可能な「レンタル制」を採用して1冊あたりの価格を210円−525円に抑えた安価なコンテンツだ。

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 190グラムのボディに、何冊分ものコンテンツを収録できるLIBRIeは「一度使ってみたら手放せなくなる」(真鍋副社長)。ボタンひとつでページをめくることができ、片手で操作可能。文字サイズも自由に選べるため、混雑した電車内でも快適に読め、読書スピードも上がるという。

 ソニーはLIBEIeの販売台数を公表していないが、普及までには至っていないのは確か。ネックの一つは価格だ。LIBRIeの実売価格は4万円前後と高価で、コンテンツの割安感を相殺してしまう。

 しかし真鍋副社長は「通勤電車で毎日本を読んでいる人にとっては、決して高くはない」と強調する。根拠はこうだ。

 1年に250日出勤する人が、通勤に往復2時間かかるとして、1年間の通勤時間合計は2時間×250日=500時間。本1冊を5時間で読むとすると、100冊読めることになる。1冊の平均単価を800円とすると、1年に本代として800×100=8万円かかる。これがLIBLIeなら、ハード4万円+(《1冊あたり210〜525円》×100)=6万1000円〜9万2500円で済み、1年前後で元は取れるという計算だ。

 とはいえ年100冊も読む人は少数派。本をほとんど読まない人の割高感を払拭するには弱いようだ。「電子ブックで本を読むことが、おしゃれで面白いことだと受け入れられれば、急激に普及するのだろうが……」と真鍋副社長と思案顔だ。

 ソニーは11月1日から、LIBRIeを購入すれば、文学作品100冊分のデータとRSSリーダー、「Word」「Excel」「PowerPoint」などのファイルが読める専用ソフトが入ったCD-ROMがもらえるキャンペーンを始めた。LIBRIeに新たな使い道を与え、ハードとしての魅力を高めて割高感を少しでも解消する狙いだ。

 加えて、東京・丸の内の「丸善本店」など大型書店の店頭にLIBRIe体験用端末を設置するなど、LIBRIeを体験してもらう場を設けて認知度アップに努めている。

書籍と同時配信、出版社の壁

 コンテンツの魅力アップも急務だ。従来、電子書籍には絶版本が多かったが、TimebookTownは「バカの壁」(養老孟司)や「クライマーズ・ハイ」(横山秀夫)、「黒革の手帳」(松本清張)といった話題の本をいち早く電子化。“旬”の本をそろえようと努めてきた。さらに、紙の本の出版と同時か、それより前に電子版を配信するという試みも進めてきた。

 ただ実際は、紙の本の出版以前に電子化できたコンテンツは少ない。版元である出版社の多くが、電子書籍よりも紙の本を優先するためだ。

 「紙の本の市場規模は2兆円あまり。電子書籍市場は30数億円規模でしかないと言われている」(真鍋副社長)。紙の本の1%強でしかない電子書籍市場のために、わざわざ作者に電子化の許諾を取ったり、データを専用形式に変換したりなどといった手間をかけたがらない出版社は多いという。出版社の理解を得るためにも、電子書籍の実績を地道に積み上げていく必要がありそうだ。

 Timebook Townで購入できるコンテンツ数は、4月のスタート当初は約800冊だったのが、11月までに約2000冊に増えた。数十万冊をそろえるネット書店や、廃刊本が多いとはいえ数万冊をラインアップする他サービスに比べると少ない印象は否めないが、「編集者出身のスタッフが厳選した、旬の本を扱うのがポリシー。数で争うつもりはない」(真鍋副社長)

 Timebook Townは、現時点ではソニーが開発した独自形式「BBeB」対応コンテンツのみ。当初予定していた、他社の電子ブック形式への対応もまだスタートしておらず、利用できるコンテンツの急増は当面なさそうだ。

yu_timebook_03.jpg 「LIBRIeで読み始めて、読書スピードが格段に上がった」と真鍋副社長

 一度に何冊もの本を持ち歩いてそのときの気分に合った本を読んだり、音声再生機能を利用して朗読音声を楽しむなど、電子書籍は新しい読書スタイルを提案してくれる。しかし、端末の価格、出版社の理解、コンテンツの品揃えなど、普及へのハードルはまだ多く残されているようだ。

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