4月1日にサービスを開始した「Timebook Town」は、ソニーの読書端末「リブリエ」に対応したコンテンツをダウンロードできる電子書籍配信ポータルサイト。サービスは「貸本」がコンセプトとなっており、閲覧期限付きながらも安価でコンテンツを提供している。
まもなくリブリエが発売され、Timebook Townとしては正念場を迎える。国際ブックフェア2004でその魅力と今後の計画を尋ねたところ、そのコンセプトが持つメリットとデメリットが浮き彫りになった。
「最大の特徴はリブリエを使うことによる読みやすさ。リブリエはPCの液晶よりも反射率が高く、より紙に近い感覚だ」(レビュー 画面内を泳動するインクが、紙をリアルに表現〜読書端末「リブリエ」)
同社では、提供するサービスの最大のメリットを「読みやすさ」だと強調する。PCでもこのサービスを利用できるが、メインはやはりリブリエと考えているという。本と同じ、もしくは同レベルの読み心地を提供できなければ、ユーザーの取り込みは難しいという判断からだ。
紙の反射率は約80%、リブリエは40%、PCなどの液晶は10%ほどで、反射率が低いほど瞳孔を開いて見る必要があるため、目に負担がかかる。つまり、結果として“見にくい”と感じてしまうという。
こうして見やすい端末を用意してユーザーへのアピールを行うとともに、1冊あたり200円からという価格もそのメリットとしている。
200円という価格は、入会すると1050円で1月に5冊までダウンロードできる「Timebook Club」に入会した場合の価格。しかし、1冊ずつダウンロードしても、最も高価なものは525円(4月22日現在)。販売の形式をとるΣBookと比較した場合、かなりの低価格だ。
ここが、販売ではなくレンタル(貸本)というコンセプトのメリットが出た部分だ。
端末の価格(リブリエの価格は約4万円)というハードルはあるが、コンテンツに割高感を抱かせないことは電子書籍普及の重要点であるだけに、この価格設定は評価したい。
Timebook Townは会費制のサービス。1冊あたりの低価格化を実現しても、書籍数が多くなければ多くのユーザーを取り込むことは難しい。また、ラインナップに新刊書籍が少なければ利用を敬遠するユーザーもいるだろう。
書籍数は現在約800冊となっているが、今後、1カ月あたり50〜100冊のペースで増強される。そのほかにも、他フォーマットの電子書籍流通サービスともコンテンツの相互利用計画が進められており、相互利用が実現した場合には一気に書籍数が増えることになる。
ただ、新刊の電子書籍化についてはそう一筋縄ではいかないようだ。
「Timebook Townは紙の書籍流通を加速させるものと考えている」という発言からも分かるよう、大手出版社らが出資するTimebook Townでは紙の書籍を“補完”するという役割が与えられている。書店と競合するような姿勢を示すわけにはいかないのだ。
ここが「貸本」というコンセプトのデメリットだ。戦略的に新刊書籍を電子化するケースはあるかもしれないが、人気作家の新刊など書店で販売が見込めるコンテンツが、書店に並ぶのと同時に次々と電子化されるという可能性は低いと思わざるをえないだろう。
また手続き面からも、新刊書籍の速やかな電子化が難しい。現時点では、電子化した際に版元のチェックを受けることが必要となっているからだ。ただ、このチェックについては「改善の余地がある」とのことで、製版過程から電子化を前提としたシステムが稼働すれば、この問題は解決する。
電子書籍市場の拡大を目指し、コンテンツの低価格化を実現する「レンタル」という手法を持ち込んだTimebook Townへの注目度は高い。しかし、Timebook Townに限って言えば、新刊書籍の速やかな電子化が難しいという課題もある。
それに加えて、電子書籍のレンタルというこれまでにないアプローチのため、ユーザーに受け入れられるかどうかは未知数だ。
ただ、端末などハード面は充実しつつある。コンテンツの拡充と価格低下も、各社が努力を続けている――にもかかわらず、電子書籍市場は期待されたほどの“拡大”を遂げてはいないという現状を考えれば、今後は提供方式などを含めた「ユーザーを電子書籍になじませる努力」が、市場を離陸させるための“最後のワンピース”として求められることは間違いないだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR