コラム
» 2004年12月13日 09時22分 UPDATE

松本直人:「P2P vs 口コミ」 ネットの流通特性はコレだ!

賛否両論ありつつ、その威力は否定できないP2P。Webサイトなどとの特性の違いを把握し、うまく組み合わせれば空前のメディアを構築できるかもしれない。前回に続き、ネットアークの松本社長にP2Pの可能性を探る試みについて語ってもらった。

[松本直人,ITmedia]

 インターネットは絶えず情報が流れている。情報が流れるネットのメディアは、Web、メール、Blog、掲示板、P2Pファイル交換、チャットなどさまざまだ。特にP2Pについては、私たち(ネットアーク)がP2P監視を続けていることから、さまざまな方から質問されることがある。

ネット業界の話題は「P2Pは使えるか?」

 質問の多くは「著作物がどれだけ流れているか?」、「P2Pはコンテンツ配信に使えないか?」の二つに集約される。コンテンツの不正流通には監視の目が光り、世界各国で著作権者側から訴訟が起こされているのは、皆さんご存知だろう。P2Pを使ったコンテンツ配信、音楽配信はビジネス上の前進が目覚しいのも記憶に新しい。賛否両論あるP2Pだが、そのポテンシャルが高いことだけは否定できない。

ネットのコンテンツ流通調査「バイラルチャレンジ」

 私たちは今年9月、コンテンツ流通と各ネットメディアの特性を調べてみるべく、コンテスト形式の調査「バイラル・チャレンジ!」を実施した

 まず参加者を募り、固有IDを持つ鍵付き(DRM)コンテンツ(音楽ファイル)を渡す。参加者はWeb、メール、Blog、掲示板、P2Pファイル交換、チャットなどでコンテンツを配布し、自分で配ったコンテンツが開封された数を競う形式で実施した。参加者・視聴者の動向把握のため、コンテンツ配布者側と視聴者側の双方にアンケートも実施し、状況把握に努めた。

 大きな目的は前述の疑問に答えるためだが、ネットというメディアにおける時間経過による情報伝播の変化を確認する意味でも大きな基礎情報となった。

コンテンツ流通監視「コンテンツ・トラッキング」

 コンテスト開催に当たり、私たち(ネットアーク)は自社で持つデジタル著作権保護(DRM: Digital Rights Management)技術とP2P監視技術を組み合わせた「コンテンツ・トラッキング」と呼ぶ技術を使い、コンテンツの流通動向の把握を行った。コンテンツがP2Pファイル交換に飛び火するタイミングや拡大していく様子を確認するためだ。

 私たちがコンテンツ・トラッキングを使うに至った経緯だが、コンテスト前段階に実施したP2P監視・調査において、TVやラジオなどから録画・録音したコンテンツがP2Pファイル交換ネットワーク上に流出していく状況を観測していたからだ。

 コンテンツ・トラッキングには別調査で実施した「P2Pファイル交換で生じるインターネットのボトルネックポイントを観測・マップ化する」取り組みも役立った(図参照)。

 ネットをメディアと捉えた場合、コンテンツ流通実態を把握するコンテンツ・トラッキング技術は必須と言えるだろう。

sk_matsumoto_01.jpg P2Pファイル交換ネットワークマップ──ファイルを公開するP2Pファイル交換ノード(IPアドレス)を特定し、1観測点から経路探索(traceroute)を実施。結果から通信経路のボトルネックを調査している

皆が知っているコンテンツが大勢を占めるP2P

 コンテスト結果を見ると、ファイル入手場所は70%強がWebサイトで、P2Pの利用は約3%にとどまった。Webサイトはもっとも普及しているネットメディアであり、ユーザーがもっとも手軽に利用し自由に活用しているという意味でも、この結果にはうなずける。

 ではなぜP2Pの利用は低い割合なのだろうか。次のような仮説が考えられる。

  • ネットメディアの流通特性の仮説
メディア 特性
P2P(ファイル交換) 既知のコンテンツだけ流通しやすい
口コミ(Web、Blogなど) 未知のコンテンツでも流通しやすい

 P2Pファイル交換は、キーワード検索でのみコンテンツに到達できる。そのため利用者が「既知」のキーワードでファイル検索する場合のみ仕組みが有効に働く。さらにダウンロードされた「既知のコンテンツ」が二次流通を起き、結果「既知のコンテンツだけが流通しやすい」土壌が出来上がる。利用者がまったく意識・理解も出来ない「未知」のキーワードで欲しいコンテンツに出合う確率は極めて低いのだ。

 コンテスト協力アーティストの楽曲は、P2Pファイル交換利用者には未知のキーワードだったため、その結果P2Pの利用が低い水準にとどまったと推測される。

 Blog、掲示板などのウェブサイトはP2Pと異なり、コンテンツへ到達するまでのキーワードが多数存在する。Webサイトを巡回する利用者特性などが一助となり、コンテンツへの到達確率も増しているとも考えられる。結果として、「BlogやWebは未知のコンテンツでも流通しやすい」と言う仮説ができあがる。

口コミ・マーケティング(Viral Marketing)に最適なネットメディア

 つまり、P2Pはダイレクトにコンテンツへ到達できる利点がある反面、未知のコンテンツの流通には向かない。一方、Blogや掲示板などのWebサイトは(コンテンツを見つけるまでの時間が長いが)未知のコンテンツであっても流通の一助となる。

 この特性は、組合せによって大きな口コミ・マーケティング(Viral Marketing)の土壌を作り出すだろう。人から人への口コミの連鎖(バイラル効果)と、P2PソフトからP2Pソフトへの連鎖の相乗で、大きなコンテンツ伝播力を発揮することが考えられる。

口コミで広がるネットメディア

 「著作権保護(DRM)」「コンテンツ・トラッキングの不正監視」「クチコミ・マーケティング」などを考慮しデザインされたシステムが登場した時、ネットはさらに大きなメディアとなるだろう。世界中でファイル交換が繰り返されることで数P(ペタ)バイト規模にまで成長しているP2Pと言う現実からも、これは容易に想像できる。

 ネットは「人の繋がりがつくるメディア」へと変貌する、過渡期なのかもしれない。

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