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» 2005年01月20日 16時24分 UPDATE

オンライン決済サービスPayPalの問題点

PayPalは時に銀行のように機能するが、銀行ではなく決済業者だ。銀行預金保護の対象ではないことや、総括的な監督機関がないことを理解しておくべきだ。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 オンライン決済サービスのPayPalについてどう思うかとクリス・スレベンス氏に尋ねれば、あまり好意的な言葉は返ってこないだろう。自身が運営するWebホスティング会社HostMeritへの支払いの受け取りにPayPalを使っていた同氏は、昨年10月に約1週間に渡りPayPalサイトが散発的に使えなくなった際に迷惑を被った何千もの取引業者のうちの1人だった。

 PayPal幹部はこの問題について、ソフトウェアのアップグレードが不完全だったためと説明している。このトラブルのために、一部の顧客は自分の口座にアクセスできなくなり、多数の取引が成立せずに終わる結果となった。

 潜在的な顧客と売上を失っただけではない。PayPalのシステム不良のせいで、スレベンス氏はその週に購入する予定だった中古車も買い損ねた。同氏は顧客サポートに何度も電話をしたにもかかわらず、4日間に渡り、自分のPayPalデビット・ATM口座にアクセスできず、ようやく自分の資金を利用できるようになったときには、既に売り手側の期限が過ぎていたという。

その後の対策

 スレベンス氏はこの経験の後、同じような災難に再び遭わずに済むよう、いくつか代替の決済サービスに申し込んだ。「私は事業を興して以来、PayPalをメインの支払い手段にしてきたが、PayPalはときどき不調なことがある。だが、これはPayPalが銀行ではないということなのだろう。同社のサーバを通過する金額の大きさを考えれば、同社には災害回復対策やシステムのバックアップ、顧客への連絡手段の改善といった対策が必要なはずだ。つまるところ、PayPalには、自分の事業をPayPalに委ねる必要性を改めて私に納得させてもらう必要がある」と同氏は語っている。

 これは、もっともな要求だ。特に、スレベンス氏のように、PayPalシステムの完全性に生活がかかっているようなユーザーにとってはなおさらだ。だが、もっと気軽にPayPalを利用しているユーザーですら、最近少し用心深くなっているとしても無理はない。昨秋のシステム故障は、集団代表訴訟での和解の直後に起こったものだ。PayPalはこの和解で、同社が不当かつ不正に顧客の口座に制限を加えたと主張していた顧客に対し、こうした原告側の主張についてはすべて否認したまま、900万ドル以上の和解金を支払うことに合意している(PayPalは口座の制限については不正防止策だと説明し、その手続きは既に変更したと発表している)。

便利なサービスだが

 PayPalの広報担当者アマンダ・ピレス氏は、昨年10月に同社サイトに「時々とぎれる問題」があったことを認め、「当社はこうした問題のために顧客の皆様に不便を強いたことを認識しており、その点はお詫びしたい」と語っている。

 問題があるとはいえ、PayPalは個人間のオンライン決済に関して標準を打ち立てている。2002年にeBayに買収された同社は現在、5600万以上のアカウントを誇り、毎月2700万件以上の取引を処理している。PayPalの支払い総額の約70%はオークションによるもので、その大半はeBayで発生したものだ。Yahoo!のPayDirectは数少ない大きな競争相手の1社だったが、ユーザー数の少なさを理由に昨年11月にサービスを打ち切っている(10月23日の記事参照)

 実際、率直なところ、例えば、ビンテージ物のベースボールカードを販売しているセントルイス在住の見知らぬ人物にさっと50ドルを送信したいということであれば、PayPalは申し分のないサービスだ。個人情報を危険にさらすことなく、知らない相手に迅速かつ簡単に現金を送信できる。

 PayPalは基本的には次のように機能する。買い手はPayPalサイト(あるいはeBayのように、PayPalが組み込まれたサイト)にアクセスして、売り手のメールアドレスと支払い金額を入力する。売り手はメールを受け取ったら、PayPalにアクセスして、自分のPayPal口座で支払い額を受け取る。

 Forrester Researchの上級アナリスト、ペニー・ギルスピー氏によれば、小切手を書かなくても金銭を電子的に交換できるようにすることで、PayPalはオンライン取引におけるシンプルだが重要な問題を解決している。

 PayPalはときには銀行のように機能することもあるが、銀行ではない。PayPalのピレス氏は、「当社は非常に厳しいコンシューマーポリシーと規制を守っている。だが、銀行ではなく、決済業者として認可を受けている」と説明している。

 PayPalのような決済サービスは多くの州で規制を受けているが、こうした業者は「ノンバンクの金融機関」と考えられており、FDIC(連邦預金保険会社)の保険は付いていない。つまり、利用者は連邦の銀行預金保護の対象ではないということだ。法律事務所Mayer, Brown, Rowe, and Mawで消費者向けの金融サービスを担当している弁護士のジェフリー・タフト氏によれば、消費者にとっては、決済サービス業者と契約を交わす前にその点を理解しておくことが重要という。「銀行には非常に多くの規則や規制、開示が義務付けられており、その分、顧客の苦情に対してもはるかに大きな説明責任がある。消費者は、PayPalのようなサービスを利用した取引には主としてPayPalとの契約が適用されるということ、また同社の活動を監視する総括的な監督機関はないということを理解しておくべきだ」と同氏は語っている。

 PayPalの競合会社の多くは既にサービスを打ち切っているが、存続している業者も少数ある。例えば、Western Union Financial Servicesの子会社BidPayはオンラインオークションの支払いのみを扱っている。買い手は、売り手の当座預金口座に直接振り込むか、送金為替によって取引を完了できる。

 もう1つの選択肢としては、世界の170カ国以上で運営されている決済代行サービスのIKoboがある。買い手と売り手は、IKoboが発行する、リチャージが可能な特別なVISAデビットカード「I-Kard」を使って現金を送受信し、加盟ATM機を介して自分の現金にアクセスできる。

 おそらく、オンライン決済は問題なく成立するはずだ。ただし万が一のために、ここでいくつか覚えておくべきポイントを整理しておこう。

  • エラーや問題が生じた場合の解決策に関する具体的な情報を調べ、そのサービスが問題にどのように対処しているかを学ぶ。その会社の詐欺行為防止に関するポリシーも確認しておく。

  • オンライン決済サービスの口座には多額の残金を残さないようにする。

  • PayPalのような決済サービスは、少額の支払い(500ドル以下程度の取引)に限って利用する。もっと多額の支払いについては、エスクローサービス(取引仲介サービス)の利用を検討する。

  • 詐欺や不正請求から身を守るために、可能な場合は支払いにクレジットカードを使用する。

  • 最後に、リスクを分散させること。オンラインビジネスを運営しているのであれば、複数の決済サービスを利用することを検討する。買い手であれば、理にかなうようであれば、PayPalとは別に、もう1つほかのサービスを利用するのもいい。ただし、ときには昔ながらの小切手の方が良い選択肢になるということも忘れずに。

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