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ADSLのアッカ、次の一手は「MtoM」

» 2005年03月04日 15時58分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ADSL市場は飽和に近づき、通信各社はFTTHへの移行を急いでいる。3月4日、アッカ・ネットワークスがジャスダック市場に上場を果たした。FTTHへの参入を視野に入れつつも、当面はDSL事業に重心を置く。家庭向け、企業向けに加え、機械同士をつなぐ「MtoM」に注力する。

坂田社長

 「FTTHをやらない選択肢はない」――同社の坂田好男社長はFTTHに前向き。しかし今はその時期ではないという。営業にかかる手間やコストが膨大で、現状では採算に合わないためだ。

 個人ユーザー、特に、集合住宅に住むユーザーににFTTHを売り込むにはまず、“棟のドアを叩く”――マンションの管理組合や建設会社などに装置を置かせてもらう許可をとる――ための営業部隊を編成する必要がある。しかも、NTTやソフトバンク、電力系各社などがすでに参入済み。競争は厳しく、採算を取るのは難しい。

 実は、同社は昨年から法人向けに光回線を提供中。法人向けなら、ISPやシステムインテグレーターなどパートナー企業が回線契約を獲得してきてくれるため、“棟のドアを叩く”必要がない。

 光回線のバックボーンはADSLと共用。営業費用さえかからなければ、投資は最小限で済む。個人向けFTTHも、企業向けのように、パートナーと協力できる体制が整った段階で参入したい考えだ。「更地に1から作るつもりはない」。

「MtoM」を収益の柱に

 とはいえ、同社の売り上げの半分以上を占める個人向けADSL市場の伸びは鈍化している。株式上場を控え、どのような成長戦略を描いているのだろうか。カギは、法人向けDSLと、MtoMだ。

 法人向けDSL市場の成長はこれからだ。企業では専用線やダイアルアップからDSL、光ファイバーへの移行が進みつつある。同社は、回線の安定性や安全性、サポート力を武器に、法人向けDSL回線の契約数を伸ばしたい考えだ。昨年から参入した光回線で、高速回線の需要も取り込む。

事業所でのインターネットアクセス回線の回線別利用率の推移(総務省「通信利用動向調査」より)

 MtoMは、「Machine to Machine」の略。機械と機械を常時接続回線でつなぐという意味を込めている。今はネットにつながっていない端末同士をネットワーク化して利便性を高めたり、ダイヤルアップや専用回線を利用しているネットワークをDSL化し、コストダウンにつなげる。

 例えば、無人駐車場の監視カメラをDSL接続し、画像を一元管理したり、自動販売機をネット接続し、在庫管理や発注に役立てる、小売店とクレジットカード会社を結ぶカード認証用回線をダイアルアップからDSLに変えて通信速度を高める――といった例が考えられる。

 自動販売機など、全国に万単位で設置された機械1台1台に導入できれば、回線数を一気に伸ばせる。帯域幅もそれほど必要ないため、低速ADSL用個人向けモデムなど、死蔵している設備を再利用でき、設備投資も小さくて済む。

 回線に付随するサービスも売り込む計画。駐車場の監視カメラ向けには、画像保存用のストレージサーバをセット販売したり、クレジット認証回線には、IP電話システムをオプション搭載するなどし「“回線プラスアルファ”のサービスを提供する」。

携帯参入は?

 個人向けADSLも、成長余地がないわけではない。ダイアルアップユーザーがまだ1200万おり、移行ニーズは残っている。電源オンだけですべての設定を自動で行うモデムを提供したり、低速だが低価格なプランを用意するなどし、初心者やライトユーザーをADSLに取り込みたい考えだ。ネット接続可能なデジタル家電の普及で、PCを持っていなくても、常時接続回線を必要とするユーザーも増えると見ている。

 ライバルのイー・アクセスは、携帯電話への参入を表明している。坂田社長も「固定と移動体の融合は絶対必要」と話すが、単独で周波数帯を確保して携帯市場に参入するのは割に合わないと考える。「どこかとパートナーシップを結んで参入することはあるかもしれないが、自分から電波を取ってやるということはない」。

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