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» 2005年03月08日 17時22分 UPDATE

ソニー新首脳陣の課題と目標

デジタル時代におけるソニーならではの技術を確立するという目標の下、新たなCEOは日本のソニーの企業文化の複雑な問題にうまく対処しながら、米国のメディアサイドと共存させるという課題に立ち向かう。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 ソニーの経営陣が大幅に刷新され、トップ幹部2名が交替となることが決定した(3月7日の記事参照)。ソニーは目下、家電製品がアナログからデジタルへと移行が進む中でリーダーシップの維持に苦戦している。

 ソニーは3月7日、経営陣の一新を発表した。会長兼グループ最高経営責任者(CEO)出井伸之氏の後任には、ソニー米国法人の会長兼CEOを務めるハワード・ストリンガー氏が就任し、安藤国威社長の後任には、電子部品および製造を担当する執行役副社長兼最高執行責任者(COO)の中鉢良治氏が就任する。

 ソニーにとって、ストリンガー氏は初めての外国人CEOだ。同社は昨年、売上高および営業収益の70%を日本以外の市場から上げている。ストリンガー氏は今後、ニューヨーク、東京の両オフィスを拠点としながら、エンターテインメントビジネスおよび米国法人での職責も継続する。

 Canalysの上級アナリスト、アラステア・エドワーズ氏は次のように語っている。「英国系米国人が日本の会社のトップに就くのは極めて異例のことだ。ソニーが現在、いかに苦境に立たされているかを表している」

 ソニーに問題を引き起こしているのは、デジタル家電市場における競争の激化だ。今や製品の設計、開発、製造のほとんどすべての段階を下請けに出せる時代になっており、また、ほとんどの会社が製品の製造に同じ部品を利用している状況にあって、ソニーは概して割高な自社製品の価格を消費者に納得させるのに苦労している。さらに同社は価格競争に巻き込まれ、利益も蝕まれている。

 フラットパネルTV市場では、ソニーはシャープおよび松下電器産業との競争に直面している。また携帯音楽市場では、Apple Computerと同社の人気製品であるiPod、およびiTunesデジタル音楽サービスが、ウォークマンの発明者であるソニーを打ち負かしている。

 ストリンガー氏は7日、東京での記者会見で次のように語った。「世界は数年前とは違っている。当社顧客のニーズや期待も変わっている。競争の力学も変わった。当社が係わっているすべてのビジネスにおいて、革新のペースも変わっている。だから、ソニーも変わらなければならない」

 ストリンガー氏(63歳)はウェールズのカーディフ出身で、パスポートは米国と英国のものを所有している。1997年にソニーに加わるまで、同氏はCBS Broadcastingなど、TVニュースの世界で30年間活躍していた。

 エドワーズ氏によれば、ストリンガー氏はこれまで、ハリウッドのクリエイティブなスタッフと東京のエンジニアとの間でさまざまな問題の調整を図ってきた。「ストリンガー氏には、日本のソニーの企業文化の複雑な問題にうまく対処しながら、一方では米国のメディアサイドと共存させるという課題がある」とエドワーズ氏。

 出井氏は2003年遅くにグループ全体の組織再編計画を打ち出しており、その計画は現在も進められている。この計画は2006年のソニー創業60周年に合わせてTR60と呼ばれており、2007年3月締めの会計年度においてソニーの利益幅を最低でも10%に高めることを最大の目標に掲げている。

 出井氏は7日、次のように語った。「環境が急速に変化しているため、エレクトロニクス事業の業績はまだTR60の目標には達していない。残念なことだ。だが、ソニーの改革と変化のための種は十分にまいた」

 IDCのアナリスト、マーティン・ヒングレー氏によれば、ソニーの問題は敏捷さに欠けていることが原因という。勢いのない部門を統合することは、新しい経営陣にとって主要課題になるだろうと同氏は指摘している。「ソニーは自社が所有するコンテンツと自社が販売するデバイスをすべて統合することで、ソニーを消費者にとってもっと明確な選択肢にしようとしている」

 TR60の計画が立てられたのは、ソニーが2003年4月に当初の予測を大幅に下回る年間純益を報告して、アナリストを驚かせた後のこと。この決算発表は日本では「ソニーショック」と呼ばれているもので、この発表を受けて、同社の株価は急落し、日経225株式指標は1982年以来最低レベルまで落ち込んだ。

 ソニーは今年1月、2年連続で当初の利益予測を満たせないとの見通しを明らかにしている。

 ストリンガー氏は7日、今年はTR60の利益目標には到達できないだろうと語った。同氏はソニーの今後の具体的な計画については示さなかったが、変更の可能性については認めている。

 「当社のビジネスを再編し、もっと収益性を高め、成長できるようにしなければならない。新しい経営陣は当社の変化を加速するための計画に取り組む。ソニーをできる限り最強のエレクトロニクス、エンターテインメント、技術企業にするためであれば、厳しい決断も厭わない」と同氏。

 さらに7日の役員人事では、ソニー・コンピュータエンターテインメント社長兼グループCEOで、ソニーのホームエレクトロニクスおよび半導体事業担当COOの久夛良木健氏の取締役退任も決定した。ソニー・コンピュータエンターテインメントはPlayStationを担当している会社だ。

 久夛良木氏はソニーのゲーム事業のトップには留まるが、そのほかのポジションからは退任する。同氏はソニーでは一匹狼のような存在だったが、かなり前から、出井氏の後任と目されていた。

 久夛良木氏の明らかな降格人事について尋ねられたストリンガー氏は、即座に同氏を賞賛し、ソニーにとってPlayStationがいかに重要かを指摘した。一方、出井氏は、久夛良木氏ではなく中鉢氏がソニー社長に任命された理由については言葉を濁した。

 「中鉢氏の長所は人の意見をよく聞く点だ」と出井氏。

 中鉢氏(57歳)は、ソニーの現在の組織再編計画を率いている3人の幹部のうちの1人だ。残りの2人は、久夛良木氏と、ウォークマンを開発した執行役副社長の高篠静雄氏。アナリストによれば、中鉢氏はソニー社内で人気が高く、特に従来掌握が難しいとされているエンジニアたちからも厚い信頼を寄せられているという。

 出井氏を含む上級幹部らは数カ月前から、ソニーが独自の技術を開発するための新たな戦略について話し合ってきた。目標は、トリニトロンなどの同社技術がアナログ市場で果たしたのと同じように、デジタル時代におけるソニーならではの技術を確立することだ。そうした技術の候補としては、プロジェクションTV向けのSXRD(Silicon Crystal Reflective Display)マイクロディスプレイや、IBM、東芝と共同開発中のCellマイクロプロセッサなど、既に幾つかの技術が開発されている。

 ソニーの新しい経営人事は6月22日に開かれる年次株主総会での承認を待って、正式決定となる。だが同社によれば、承認は得られるものとして、経営体制の移行の準備はすぐに開始される。

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