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「出会いで日本を良くしたい」――24歳、中毒からコンサルへ社会とネットとサービスと──SNSその1(2/2 ページ)

» 2005年04月27日 15時36分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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好きが高じてコンサルに

 SNS関連のイベントにも足を運び、人脈を広げていった。mixiのビジネスモデルを考えるイベント「mixi版無敵会議」では、世界中のSNSを調べ上げ、プレゼンテーションで紹介した。これまでに登録したSNSは、100を優に超えている。

 SNSの面白さをたくさんの人に伝えたいと、9月、SNS関連のニュースを集めて掲載するBlog「ソーシャルネットワーキング.jp」を立ち上げた。国内外のSNSの動向を調べ、毎日記事を更新する。訪問者数は把握していないが、Googleで「ソーシャルネット」と検索すると、mixiに次いで2番目に出てくる人気サイトに成長した。

ソーシャルネットワーキング.jp

 このBlogを見て、原田さんにSNSのコンサルティングを依頼する企業も出てきた。「企業向けSNSを作りたいとか、学校にSNSを売り込みたいとか――コンサルはこれまでに10件弱請け負いました」。

 SNSは、事業の資金集めにも役立った。原田さんはマーケティング事業を手がける学生起業家。あるメールマガジンで事業への出資を募ってみたところ、まだ数回しか会ったことのない知り合いが「100万円出資していい」と名乗り出てくれた。GREEの「友人からの評価」欄を読んで原田さんを信用したという。「結局お金は受け取っていませんが」

 ビジネスが軌道に乗りはじめたのと反比例して、GREEやmixiにかける時間は、急激に減っていった。

「“みんながお隣さん”じゃなくなった」

 「ちょっと飽きてしまったし、両サービスとも、人が増えすぎました。“みんながお隣さん”という感覚がなくなってきた」。今やmixiは50万人以上、GREEは15万人以上の会員がいる。原田さんの友人リンク数は、両サービスとも500前後。親友から一度も会ったことがない人まで、すべての人を対等に扱う仕組みの限界を感じ始めた。

 mixiの「足あと」も膨大になり、今では全く見ていない。管理するコミュニティ掲示板には、「2ちゃんねる」の“煽り”のような書き込みが増え、削除依頼も頻繁に受ける。SNS開始当初よく言われていた“匿名でないことによる安全性”も低下し始めたと感じていた。

 「僕にとってSNSの魅力は、クローズドなコミュニティであること。オープンなら、Blogでいいんです」。ソーシャルネットワーキング.jpに加え、広告に関するニュースを集めた「cococu.com」(コーコク.com)など複数のBlogを綴る原田さんは、実感をこめて言う。

 12月に始めた就職活動も、SNSから一歩身を引く要因になった。「自分のBlogをアクセス解析したら、エントリーした企業からのアクセスがあって」――就活先の人事担当者かもしれないと思うと、SNSやBlogでうかつに本音を書けない。

 「例えば、『僕は御社しか受けてません!』と面接でうそを通しても、SNSの日記やBlogに『他の会社も受けている』と書いてしまえばバレるかもしれない」――実名で参加しているSNSだからこそ、公表できる情報を慎重に選ばねばならない。「ネット上でコソコソするのって、僕はあまり好きじゃないんだけど」

 初期に一緒に熱狂していた仲間も、同様な危険に気づいたり、飽きてしまったりして、SNSでの活動を控えたり、やめたりする人が出てきた。「1日中mixiしかしていなかったあの頃は、やっぱり異常だったと思う」

 とはいえ原田さんは今でも、1日2時間程度、SNSを利用する。SNSがいらなくなったわけではない。

 「mixiは、情報源としては2ちゃんねるよりも上質」。例えばノートPCを買う計画を立てていた時、mixi上のPCに関するコミュニティで情報を得た。完全に匿名のネット掲示板と違い、mixi上には“使える”情報がまだまだ多いという。

 「GREEは、“人間検索エンジン”としての使い勝手が秀逸」。初対面の人に会う前は、まずはGREEで名前を検索。出身地や趣味、友達からの評判、人脈などを把握しておくと、会話がスムーズに進む。「就活のOB訪問だって、簡単にできます」。多くの人が出身校や所属会社を公表しているGREEなら、憧れの会社に勤める先輩を簡単に探し出せ、メッセージを送れる。

 実際、友人経由で見知らぬ人から紹介を受けたことも多い。会いたい人がいるときは、その人の友人リンクから共通の知り合いを探して仲介を頼む。

 GREEやmixiとは全く違う使い方を楽しんでいるSNSもある。ユーザー同士で写真を共有できる米国のSNS「Flickr」。「写真を通じてセンスを共有できる友人を探せる場は貴重」。画像なら、言葉が通じない外国人でも、センスの合う人を簡単に見つけられる。

「出会いの力で、日本をもっと楽しくしたい」

 「SNSは、電子メールやチャット程度には普及すると思う」。そして、普及させたいと思う。SNSがつないでくれる出会いには、すばらしいパワーがあると信じているから。

 「人と人との出会いが生むシナジーって、すごいと思うんです。面白い人同士は、初対面でも妙に波長が合ったりする。僕も出会いの恩恵をたくさん受けてきた一人。出会いの力で、日本をもっと楽しく、エキサイティングな国にしたい」――24歳の自称「エセ紳士」は、控えめな物腰とまっすぐな瞳で、SNSの未来と日本の未来を重ねてみせた。

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