ITmedia NEWS >

縁と縁とをつむぐ「リアル」SNS――あるカフェバーの場合社会とネットとサービスと──SNSその2(2/2 ページ)

» 2005年04月28日 17時07分 公開
[岡田有花,ITmedia]
前のページへ 1|2       

SNSは強力なマーケティングツールだが……

 mixiの縁縁コミュニティでは徐々に、スタッフが新メニューの紹介やイベント告知を始めた。「PRする場があるのだから、積極的に伝えていこう」――そんな意識のもと、フード担当者は今日のランチや新作ケーキを、オーナーや店長はイベント情報を書き込む。mixiユーザーはそれを見て縁縁に足を運び、感想をレスとして書いていく。

 「SNSは、成熟するに従って強力なマーケティングツールになるだろう」と河上さんは考える。コミュニティで情報発信すると、ユーザーからの反応がすぐに戻ってくる。生の声をマーケティングデータとして生かせるし、ユーザーの好反応は口コミの宣伝材料になる。「SNSはユーザー同士の距離感が近いので、呼びかけて何かを集めたときの回収率は非常に高く、反応はとてもアクティブ」

 ただ、河上さんはSNS上で、縁縁オーナーとしての立場をあまり強調しない。例えば河上さんのmixi日記には、縁縁のことはほとんど書いていない。他のスタッフも同様だ。「無意識だけど、書き込みが宣伝っぽくならないように気を遣ってるところは、あるかもしれない」と河上さんは打ち明ける。「コミュニティサイトのユーザーは敏感。あからさまな宣伝したり、何か押し付けがましいことを書くと引いてしまうだろう」

「SNSはWebサイトを超えた」

 「始めはWebサイトを情報発信スペースにするつもりだったけれど、今や完全にSNSに食われてしまった形です」。メニューやイベント情報の更新、ユーザーとの交流は、Webサイトよりもmixiの方が速くて深い。縁縁のWebサイト上で、縁縁にゆかりある人に執筆依頼しているBlog「縁Blog」のライターも、半数がSNSで出会った人々。SNSという閉じた空間が、完全公開のWebサイトよりも強い力を発揮している。

 SNSがつないだ縁は、縁縁のサービス充実にも役立ってきた。縁縁でカウンセリングや占いなどを行う日替わりのスタッフは、多くがSNSを通じて名乗り出た人。アーティストから、作品を展示したいとの依頼も舞い込む。

SNSから全国大会へ

 mixiには、縁縁を核にしたコミュニティもいくつもできた。発端は、野球好きな共同オーナーの1人が作った「縁縁野球クラブ」。「メンバーが徐々に増え、『アパッチ野球団』のようにどんどん強くなっています」。

 スタッフ以外の知り合いから、「縁縁の名を使ったコミュニティを作りたい」と頼まれることもしばしば。「縁縁マリンスポーツ倶楽部」「縁縁歌謡倶楽部」など、縁縁の名を冠したコミュニティが次々にできていった。

 「SNSがきっかけで出来たコミュニティから、全国大会を制覇するようなチームが出たら笑えるよね。ウッチャンナンチャンの『芸能人社交ダンス部』みたいに、大会を目指して」――河上さんは心から楽しそうに話す。「SNSでのやりとりから、何か新しいムーブメントが起きると面白いよね」

 そして、こんな夢を語る。「SNSや縁縁を、みんなの夢をサポートする手段に育てたい。SNSで広げ、縁縁で深めた人間関係をベースに、音楽やショートフィルムを作るとか、クリエイティブな活動を支援できれば」――縁縁は、SNSで知り合ったアーティストの作品を置き、「縁縁レーベル」でリリースしたインディーズアーティストのCDを流している。支援の芽は、確実に育ちつつある。

河上さん

 縁縁は、都営大江戸線/南北線の麻布十番駅から徒歩4分。カフェ・ランチタイムは11時30分〜午後6時、バータイムは午後6時〜午前0時(水・木・日)/午後6時〜午前5時(月・金・土)。火曜日定休。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.