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日本のIT企業は世界市場で成功するか?

» 2005年05月09日 10時26分 公開
[Eric Lundquist,eWEEK]
eWEEK

 今頃、日本のハイテク経済は、大半の世界ビジネスで脚光を浴びているはずだった。自然資源に乏しいこの国は、ハイテク産業、輸出産業、そして世界レベルの産業開発に将来を賭けている。「Think Globally, Act Locally 」(地球レベルで考え、地域レベルで行動する)の合言葉の下、日本の大手企業は世界規模の発展において最先端にいるはずだった。

 実際は、必ずしもそうならなかった。多大な金銭的・教育的投資を行ったにもかかわらず、日本企業は主導者の座にいない。将来的に急成長を遂げるテクノロジーは、東京ではなくむしろ中国とインドから発信される可能性が高い。しかし10年に及ぶ成長鈍化あるいは成長停滞を経て、日本経済(世界第2位の規模)は最近ようやく緩やかな成長の兆しを見せ始め、前向きに戦略を練り直すハイテクベンダーも多く見られるようになった。

 日本の自動車産業が今日の成功を達成できたのはなぜか、そして大手ハイテク企業はなぜ同じように成功できないのか? (日本の自動車産業が勝ち得た)同じ地位をハイテク市場で勝ち取るためには、リソースを今後どこに投じていけばいいのか? 日本の大手ハイテク企業は、なぜ東京で築いたプレゼンスを国外の大きな市場で築けないのか? 答えは簡単には出てこない。しかし「日本株式会社」は間もなく第2の取り組みを始めそうであり、そしてこの第2ラウンドでの成功のチャンスは、第1ラウンドで彼らに与えられたチャンスよりも大きいと、私は考えている。

 こうした思いと疑問を抱きながら、先日、私は東京に赴いた。最初の感想は前向きなものだった。日本のハイテク企業は国際舞台で自分たちの立ち位置を探すことに、これまでにないくらい専心していた。これら多くが世界市場で最も重視しているのは米国市場だ。日立、富士通、NECなどは米国市場でシェア拡大を何年も試みているが、今もって首位ではなくマイナープレイヤーにとどまっている。ただ最近の米国市場がこれまでと違うのは、成熟して、オープン標準ベースのシステムとMicrosoftベースシステムの2つの市場に分かれつつある点だ。

 日本のハイテク企業にとってコンピューティング標準の発展は、どこかのプロプライエタリ形式に将来を委ねるよりも、真のターゲットを狙うことを可能にする。標準ベースシステムの普及によって対等に争える戦いの場と広い市場機会が生まれ、再進出を図る企業はプロプライエタリ市場の追い風に乗らずとも将来を有望視できる。顧客を囲い込む専有技術を持ち、次の製品が何を要するかを前もって知っている相手に勝ることは、不可能に近い。

 Windows市場では、日本のハイテクベンダーは64ビットコンピューティング―先日ビル・ゲイツが改めて支持を表明した――がいずれ顧客の間に新たなアップグレードサイクルを起こすと認識している。64ビットコンピューティングの登場は、ソフト面やハード面というよりも、むしろシステム能力という点で重要になる。これまで顧客が欲してきたが――しばしばプロプラエタリ世界でしか見られらなかった――堅牢でスケーラブル、かつセキュアなコンピューティング環境の構築を将来可能にするからだ。インターロック型のハードウェアおよびソフトウェアシステムを提供して64ビットシステムのメリットを活かすベンダーこそが、進化し続けるコンピューティングの次なるラウンドで真の勝者となる。

 この時期に勝つための戦略を模索している日本のITベンダーに私が提言するとしたら、「ソニーではなくトヨタを手本にせよ」と言いたい。トヨタはライバルとの短期的な競争に気を取られることなく、自動車製造という本来の強みに取り組み続け、5、10、20年先に顧客が求めるものについて考えた。その結果、トヨタは世界経済と政治情勢がハイブリッド車を求めるのと同じタイミングでハイブリッド車のラインアップを揃えた。その間米国をはじめとする自動車メーカーはトヨタに追随するのに精一杯だ。

 これに対しソニーは、「世界で幅広く提供している一流品質のオーディオ/デジタル製品」という最大の強みで勝負する代わりにコンテンツ世代戦略に転換、自社の中核能力から大きく外れることとなった。この結果、ソニーは未だ再起に向けて苦しんでいる。トヨタが自動車技術に貢献した同じことを日立や東芝ができるかどうかはまだ分からない。しかしチャンスは今、再び彼らに訪れている。

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