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地域通貨にもITを

» 2005年07月26日 21時25分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ITを活用すれば、地域通貨の可能性がさらに広がる――総務省と地方自治情報センターが7月26日に開いた「地域通貨で街づくり」でこんな意見が出た。

photo 都内で開かれたシンポジウム「地域通貨で街づくり」。地域通貨を発行するNPOの代表者や総務省の担当者などのディスカッションに、約200人の参加者が耳を傾けた

 地域通貨とは、住民同士のお手伝いのお礼や、公共施設での料金割引、地元商店での買い物などに利用できる、地域限定の通貨。地域コミュニティーや地域経済の活性化に役立つとされており、国内でも300種類を超す通貨が流通している。

 ITを活用した地域通貨の先駆けは、姫路市のNPO「千姫プロジェクト」が2001年に発行を始めた地域通貨「千姫」。現在、300人以上のユーザーがいる。

 千姫を利用するにはまず、IDを取得し、専用Webサイトにログインして「できること」「してほしいこと」を書き込む。ユーザー同士のできることとしてほしいことが合致すれば、メール交換で交渉し、成立すればサイトから千姫を振り込む。交渉は携帯電話のメールでも可能だ。

 地域通貨は、紙の通貨を印刷したり、通帳に書き込んだりといったアナログのものが多いが、手間とコストがかかるという問題があった。ネットなら低コストで手軽な上、利用履歴も自動でつけられる。

 千姫の基幹システムはオープンソースで無償提供しており、いくつかの地域通貨システムに採用されている。

 総務省は、ITと住民基本台帳カードを活用した地域通貨の実証実験を支援してきた。熊本県小国町の「おぐにポイント」や千葉県市川市の「てこな」がその例だ。PCに接続したICカードリーダーで住基カードのICチップを読み取って個人認証し、自分の地域通貨の口座にログインして通貨をやりとりする仕組みだ。

 過疎化が進む小国町では、地域通貨で町外からの来訪者を増やすのが目的。うさぎ追いや炭焼き体験などでおぐにポイントを付与し、遠隔地からの観光客など140人に利用してもらった。市川市は、防犯パトロールなどに「てこな」を付与。地域の安全対策に生かす試みを行い、市民など1130人が利用した。

 総務省情報政策企画官の牧慎太郎さんは「ICカードや携帯電話を使えば、将来、便利で高セキュリティな地域通貨ができるだろう。ネットを活用すれば、世界どこからでも地域通貨を流通できるようになる」と展望を語った。

 ただ現状、国内の各地域通貨の参加者は多くても数百人。認知度や利用率は低く、利用が伸び悩んで発行停止になるケースも少なくない。まずはメリットを積極的にPRし、利用を促していく工夫が必要となりそうだ。

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