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電機と自動車業界つなぐハイブリッド車

» 2005年08月03日 18時24分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「ハイブリッド車が車の電子化を加速する」――野村総合研究所技術・コンサルティング一部の風間智英さんはこう指摘する。ハイブリッド車に搭載した高電圧バッテリーが車載機器の電子化を後押し。電機メーカーの車載機器参入の道を広げるという。

 ハイブリッド車とは、複数の動力源を持つ自動車。ガソリンと電気モーターで駆動する自動車を指すことが多い。

 ガソリン車と燃料電池車とのつなぎ役に過ぎないと見られがちなハイブリッド車だが「自動車のメインストリームになる」と風間さんは予測する。燃料電池車は現在、高額で燃料効率も悪く、ここ10〜20年は普及しないと考えられるためだ。

 ハイブリッド車の2004年の世界販売台数は約17万台。自動車市場全体の0.3%に過ぎないが、年率平均45.5%で急成長している。市場を開拓したのは1997年にトヨタ自動車が発売した「プリウス」。本田技研工業や日産自動車、米General Motorsといった国内外のメーカーが相次いで参入してきた。

photo 市場は急成長しているが、トヨタのシェアが圧倒的

ハイブリッド車は“電子化プラットフォーム”に

 車載機器の電子化が進む中、ガソリン車はバッテリー問題にぶち当たっている。電動パワーステアリングシステムや、センサーと連動した事故防止システム、電動コンプレッサ、カーナビ――自動車の最新機能の多くは電力を必要とし、ガソリン車の14ボルトのバッテリーでは対応しきれなくなってきた。42ボルトバッテリーを採用したガソリン車も発売されたが、コストがかかりすぎて普及しなかった(関連記事参照)

photo 車載電装機器の例

 この状況を救うのがハイブリッド車だ。150〜200ボルトのバッテリーを搭載したハイブリッド車なら、増え続ける電子機器にも余裕を持って対応できる。「ハイブリッドシステムは、車のエレクトロニクスプラットフォームになる」

 車載機器の電子化が進めば、電機メーカーの参入余地が広がる。バッテリーやモーター、インバーターなどピュアな電子機器に加え、これまで機械的につながっていたステアリングやブレーキ、アクセルなどを統合的に電子制御できるモジュールを開発すれば、従来の部品メーカーを駆逐する可能性すらある。

 参入はすでに始まっている。リチウムイオン電池では、主力市場の携帯機器向けでシェア下位に甘んじたメーカーは軒並み、ハイブリッド車向け電池を開発しているという。

photo リチウムイオン電池メーカーの状況

 ハイブリッド車を中心に、自動車と電機、部品メーカーの関係が再構築されそうだ。

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