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Netscapeの失脚からGoogleが学べること(1/2 ページ)

» 2005年08月11日 19時27分 公開
[IDG Japan]
IDG

 不幸な運命をたどったインターネットの草分けNetscape CommunicationsがIPO(株式公開)を果たしてから10年。しばしば語られる同社の盛衰の物語は、どうしても今の業界の寵児、Googleと比較してしまう。

 Netscapeと同様に、GoogleもIPOを大成功させ、インターネット利用を最適化する主流の技術を作り出し、その結果、Microsoftからつけ狙われることになった――MicrosoftがNetscapeののど元に銃を向けたように。

 今のインターネットの景観は、Netscapeが10年前に作り上げたものとは大きく異なっているが、GoogleはNetscapeの敗北を振り返ることで、向こう数年Microsoftと戦っていく方法について1つか2つ学べることがあるかもしれない。

 MicrosoftのCEO(最高経営責任者)スティーブ・バルマー氏は、1990年代にジム・クラーク氏とマーク・アンドリーセン氏の子供(Netscape)を葬ったとの同じように、Googleをつぶすという目標を率直に語ってきた。Netscape Navigatorブラウザが数百万人のユーザーをインターネットに引き合わせた後、MicrosoftはInternet Explorer(IE)をWindowsに統合して優位に立ち、Netscapeを新たなビジネスモデルに走らざるを得ない状況に追い込んだ。結局、America Online(AOL)がNetscapeを買収し、そのブラウザ技術は今、オープンソースブラウザのFirefoxなど、Mozilla Foundationのプロジェクトに息づいている。なんとも皮肉なことに、それによってIEに対抗して返り咲いたような形になっている。

 「われわれは何を求めているのか? ほかのあらゆる人々が持っている以上のものだ」とバルマー氏は最近、検索市場におけるGoogleとの競争について語った。「われわれは投資する。研究開発に投資し、販売・マーケティングに投資し、広告に投資し、この分野で勝つために必要なことをやる」

 MicrosoftがすぐにGoogleから検索市場トップの座を奪うことはなさそうだ。オンライン市場調査会社Hetwiseが8月10日に発表した新しいデータによると、Googleは2005年7月に主要検索エンジンで実行された検索のうち59.2%を握っていた。前年同月のシェアは14%だった。これに対し、同月のMSN Searchのシェアはわずか5.5%と、2位のYahoo! Search(28.8%)に大きく後れを取っている。

 それでも、GoogleがNetscape――同社のブラウザはGoogleの今の成功の土台を築いた――の転落から学べる教訓は幾つかある。その中の主たるものは、数十億ドルの現金と優秀な人材、そして中核事業を脅かす企業はなんでもつぶすという評判を持つMicrosoftを、過小評価してはならないということだ。

 「Microsoftを見くびってはいけない」とJupiter Researchの調査ディレクター、ジョゼフ・ラズロ氏。「Googleはいろいろな意味で変わった企業だ。普通の企業ではないかのようにやっていこうとしている。だが、Microsoftが関わってくるのであれば、同社の行動やその理由を理解し、効果的に競争するために、できるだけ大企業と同じように考えることに価値がある。(Googleは)Microsoftの立場に立って考えようとしてみるべきだ」

 Microsoftが検索エンジン戦争での勝利を待つ理由は、ブラウザ戦争で勝利を待った理由とほぼ同じだと、Jupiterの別のアナリストは話している。Googleの検索技術は、NetscapeのブラウザのようにMicrosoftの重要なWindowsを脅かしている。

 「MicrosoftはWorld Wide Webについて心配していた。ブラウザがあればWindowsがいらないからだ」とJupiterの上級アナリスト、ジョー・ウィルコックス氏は語る。「それから時間を10年早送りすると、心配の対象はインターネットからの検索となり、すべて情報とその情報の拡張性に関係している。そこではWindowsは不要だ。Microsoftはこの問題に対処しようとしている」

 多くの人は、GoogleにはNetscapeが決して持てなかった利益と健全なビジネスモデルがあるため、Microsoftから自分の領土を守る上でNetscapeよりもいい位置にいると考えている。

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