ITmedia NEWS >

Netscapeの失脚からGoogleが学べること(2/2 ページ)

» 2005年08月11日 19時27分 公開
[IDG Japan]
IDG
前のページへ 1|2       

 しかし、Netscapeの転落をもたらした要因の1つが、Microsoftの強力なソフト開発マシンだった。このマシンのおかげで、Microsoftは一度何かをやると決めたら、長期的には手強い競争相手になるとスタンフォード大学経営大学院のヘイム・メンデルソン教授は語る。Microsoftは10月ごろにもっと強力なMSN検索エンジンの新版をリリースする計画であり、Googleはこの点に警戒するべきだと同氏は指摘する。

 「Microsoftは、長期的に負けにくいソフト開発プロセスを作った」とメンデルソン氏。「これ競争相手よりも効果的にソフトの次のバージョンを開発できるという意味で、これは非常に強力だ。これが、非常に長期的な視点から物事を見られる理由になっている。こうした開発能力を、ほとんどの人が完全には理解していない。これはMicrosoftの重要な力の源だ」

 匿名希望の元Netscape社員は、Googleは「4年後の頭脳流出」に見舞われるかもしれないと警告する。言い換えると、Netscape社員は(IPOから)約4年後にストックオプションを完全に付与されて金持ちになった。このためNetscapeの最初の成功を確保したときと同じくらい懸命に働く動機がほとんどなくなったという。

 同氏は、Googleのように社外のプロジェクトに時間を割くよう奨励することも、特に才能あるエンジニアに、Googleで稼いだ金を新会社の設立に使いたいという気持ちにさせる可能性があると付け加えた。

 Googleを有利にしているのが、Microsoftが検索分野リーダーの座をつかむために戦う一方で、新製品開発に投資することで売上を伸ばすのに苦労しているという点だ。一部のアナリストは、WindowsやOfficeなどの中核製品が、今日のMicrosoftを作り上げたような成長を維持できないと感じている。その結果、MicrosoftはIPTVやゲーム市場など、これまで参入していなかった市場であわただしく製品を立ち上げている。1年足らず前の2004年11月にMSN Searchエンジンを立ち上げ、検索市場に参入したのも、これまでになかった動きだ。

 これら製品が長期的にどの程度の売上をMicrosoftにもたらすのかはまだ分からない。だがJupiterのウィルコックス氏は、同社はこうした新たな市場の幾つか、特に検索で勝利するために、Netscapeをつぶした手――WindowsやOfficeなどの既存のポートフォリオの本拠地への統合――を使いそうだと考えている。

 「結局のところMicrosoftは統合に大きく賭けている。同社は法人市場に対して非常に強力な統合戦略を持っている。同社はこの戦略を異なるサービスを介してコンシューマー市場に展開すると考えている」(ウィルコックス氏)

 スタンフォード大学のメンデルソン氏も、次期版OS「Windows Vista」への検索統合は、MicrosoftがGoogleに勝つために計画している重要な手段だと語る。この手がGoogleには通用しないことはないと同氏は確信している。Windows Vistaは2006年末にリリースされる見通しだ。

 「Microsoftには統合というアドバンテージがある。これは同社が当てにできるものだ。デスクトップ検索は次期版OSのコンポーネントになり、インターネットにも拡大されるだろう。同社はこれを合法的にOSに統合する方法を見出すだろう。これは、Googleのビジネスモデルにはない強力なアドバンテージだ」(メンデルソン氏)

 今のところ、GoogleがNetscapeのように急速に失脚する可能性は低いように思える。だがブラウザ戦争の物語が業界を今も魅了しているように、検索エンジン戦争の10年後に語られるであろう物語はまだ書かれていない。

前のページへ 1|2       

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.