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“光”の普及、カギはテレビ局

» 2005年12月07日 19時57分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 野村総合研究所(NRI)は12月7日、2010年までの情報・通信市場の見通しを発表した。ブロードバンド市場のけん引役はADSLからFTTHに交代しつつあるが、ニーズをさらに高めるためにはHDTV画質の映像配信が不可欠との見解。放送と通信の融合がFTTH市場を拡大すると見る。

 ブロードバンド関連の市場予測は以下の通り。

(単位:億円)

分野 2005年度 2006年度 2010年度
FTTH 2113 2916 6483
ADSL 5566 5779 4234
CATV 1837 1946 1745
公衆無線LAN 92 171 376
IP-VPN、広域Ethernet 5364 5985 7640
ISP 7113 7268 7353
IP電話 9076 11356 16236

 FTTHが急拡大し、市場規模は2005年度の2113億円から、2010年度には3倍の6483億円となる見込み。一方、ADSL市場は2006年度の5779億円をピークに減少に転じ、2010年度には4234億円になると予測している。

 ただ、FTTHの普及は予想通りに進まない可能性もある。同社情報・通信コンサルティング二部の桑津浩太郎上席コンサルタントによると、FTTHがここ最近急速に伸びたのは、業者の無料キャンペーンや、集合住宅への一斉導入といったマーケティング策が奏功したため。ユーザーの高速回線へのニーズはそれほど高まっていないと見る。

photo FTTHを導入したユーザーはその理由に「無料キャンペーンをしていたから」「マンションに引き込まれていたから」を挙げる人が多い

 同社の調査によると、ADSLユーザーの少なくとも3〜4割は現在の回線速度で満足しているという。彼らのネット利用法はWebサイト閲覧やメール、掲示板が大半。ここ1年でほとんど変化がないといい、高速回線に魅力を感じないユーザーも多い。「FTTHは入れなくても困らないのが現状」(桑津氏)

photo

 FTTHの魅力をアピールするには、ADSL以下では楽しめないコンテンツを整備する必要がある。カギとなりそうなのが、放送局が持つ高画質な映像コンテンツだ。「PC主導でFTTHを伸ばすのは難しい」と桑津氏は指摘し、HDTV品質の映像コンテンツと、それを視聴できるネット対応テレビやHDDレコーダーなどの機器が普及のトリガーになりうるとみる。

 桑津氏の予測では、Webブラウズやメールチェック程度は可能なテレビが今後2〜3年で増えそう。HDDレコーダーにHDTVコンテンツを蓄積する利用スタイルが浸透すれば、蓄積コンテンツを家庭内の別の端末で再生したいというニーズも生まれ、家庭内のFTTH網も整備されていくと見ている。

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