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「名機」が販売禁止に 4月に迫る「電気用品安全法」(1/2 ページ)

» 2006年02月14日 10時46分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「売れるものがなくなってしまう」――中古専門のある電子楽器店は頭を抱える。同店の主力商品は、中古アンプやシンセサイザーなど“ビンテージ物”の機器。それらが4月1日から原則、販売できなくなる。

 2001年4月に施行された「電気用品安全法」という法律が、この4月から本格施行となるためだ。同法は電化製品に安全確認済みマーク「PSEマーク」を付けて製造・販売するよう義務づけるもので、2001年以降に製造・販売された電化製品の多くに、同マークが付いている。

PSEマーク。左が「特定電気用品」用、右がそれ以外の電気用品

 今年3月31日までは同法の猶予期間で、PSEマークなしの製品でも販売可能だった。4月以降は、猶予期間が5年と定められていたシンセサイザーやアンプ、レコードプレーヤー、電源内蔵型ゲーム機、テレビ、電気洗濯機など259品目で、PSEマークがないと販売できなくなる。

 猶予期間は7年、10年の製品もあり、それぞれ2008年と2011年に販売禁止となる(対象商品は特定電気用品特定電気用品以外の電気用品参照)。

 同法に違反した業者は、最大で1億円の罰金を科せられる。個人が不要になった製品を他人に販売する場合などは対象外だが、例えばインターネットオークションなどで一度に大量に販売したり、何度も繰り返し販売すれば業者とみなされ、規制の対象となる(詳細は経産省による解説ページ参照)。

「法律を知らなかった」――困惑する中古店

 「知らなかった」。ショップ関係者はこう口をそろえる。2001年の施行以来、猶予期間は5年間あったが、経済産業省の告知は十分ではなかったようだ。

 「法律の存在を知ったのは今年に入ってから」――冒頭のショップ担当者は語る。「1月の終わりごろ、業界の噂で知った。経産省から指導もなかったし……。いきなりのことで、当惑している」。別の中古品販売店も「今年1月に知った」と話している。

 同法は、中古店で電化製品を売買する一般のユーザーにとっても影響が大きいが、ユーザーへの告知も特になかったようだ。

 経産省は「関係業界に説明したり、官報などで告知してきた」としながらも、「説明が十分に行き渡っていなかったかもしれない」と、告知不足を認めている。

売る方法を模索する楽器店

 告知が不十分だったとはいえ、違反する訳にはいかない。本格施行まで2カ月を切った今、中古品店の対応は待ったなしとなっている。

 中古AV機器・PCなどを販売するハードオフやソフマップは、PSEマークなしの品の買い取り・販売を終了すると発表した。ハードオフは、対象商品を3月末までに売り尽くすべく、全国の店舗で2月11日からセールを始めている(一部店舗を除く)。

ソフマップWebサイトの告知

 両社は、同法の対象外となる製品や、PSEマーク付き製品も多く扱っているため、対象商品の取り扱いをやめても営業にそれほど支障はない。一方で、冒頭の中古楽器店のように、希少価値の高い年代物のAV機器を専門に扱う店舗は、販売商品のほとんどが同法の対象。このままでは売る物がなくなってしまう。

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