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デスクトップへの長い道のりを進む仮想化技術

» 2006年02月22日 17時39分 公開
[Jeffrey Burt and John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK

 仮想化は、データセンターのサーバをより有効に活用する方法として企業に普及しつつある。だが、デスクトップで広く利用されるようになるのは早くても1〜2年後だろうと専門家は予測している。

 プロセッサメーカーのIntelとAMDは、それぞれの仮想化技術をデスクトップおよびノートPC向けプロセッサに搭載し、クライアント側の仮想化(コンピュータを分割し、複数の異種ソフトを同時に動作させる技術)に道を開こうとしている。

 Intelは昨年末からIntel Virtualization Technology(VT)の自社製品への搭載を開始しており、今月初めにはサーバ向けのXeonプロセッサの仮想化機能を利用可能にした。AMDは今年半ばからAMD Virtualization Technologyを自社のすべてのハイエンドPCおよびサーバ向けプロセッサに搭載する予定だ。

 仮想化技術の推進派は、企業のIT部門が自社の業務ソフトパッケージ用にパーティションを作成することが一般化し、仮想化が日常的に利用されるようになると予想している。だが、普及が本格化するのは、デスクトップPCやノートPCで仮想化を活用できるアプリケーションがソフトベンダーから提供されるようになってからだ。それはまだ1〜2年先のことだろうというのが大方の見方だ。

 今のところ、クライアント側の仮想化は「まだ概念が先行している段階だ」と仮想化ソフトベンダーのVMwareでデータセンター・デスクトッププラットフォーム製品担当副社長を務めるラグ・ラグラム氏は、調査会社IDCの主催で最近開かれた仮想化に関するカンファレンスで取材に応えて語った。

 それでも、Lenovo Groupなどの企業は対応を進めている。同社が今週発表した「ThinkCentre M52」の新シリーズのデスクトップPCは、Intel VTを内蔵したプロセッサを搭載している。またLenovoは、仮想化を利用して同社のPC上に管理用パーティションを作成するツールを、企業向けツールスイート「ThinkVantage」の一部として5月から提供することを目指していると、同社の広報担当者は話している。

 IntelとAMDは、ほかのPCメーカーもLenovoに続くと予想しているという。

 両社の幹部は、仮想化技術のクライアント側への普及当初は、企業向けのPC管理ツールに採用されるケースが多くを占めるだろうという見方で一致している。

 「デスクトップの仮想化の次のフロンティアは管理だ」とAMDのビジネスソリューション担当ディレクター、マーガレット・ルイス氏は語る。

 デスクトップの仮想化で考えられる1つのシナリオとして、業務ソフトやPC管理・セキュリティツールのために専用のパーティションを利用するというものがある。Lenovoの計画はこれに近いものだ。また、オフショアリングを行っている場合などの環境で、管理されていないネットワークデバイスを管理下に置くために仮想化を利用するといったシナリオもある。

 さらに、仮想化を利用することでモビリティが向上することも期待できる。PCのイメージをUSBストレージデバイスに保存して携帯し、必要に応じて別のPCにアップロードすることが可能になるからだ。「モビリティはデスクトップの仮想化による大きなメリットだ」とラグラム氏は語る。

 これまでに進められてきた先駆け的な取り組みの中には、サーバベースのシンクライアント環境やブレードPC環境に仮想化を導入しようとする試みもある。これらの環境では、複数ユーザーのリソースがすべてバックエンドサーバでホスティングされる。

 例えば、IBMは、企業がブレードサーバを活用して多数の従業員をサポートできるようにするために、同社のVirtualized Hosted Client Infrastructureで仮想化技術を利用している。

 IBMはVMware、Citrix SystemsやブレードPCの草分けのClearCubeと協力して、企業がIBMのブレードサーバ「BladeCenter」に多くの従業員のデスクトップ環境を格納し、従業員がデスク上のデバイスから自分の環境にアクセスできるという運用形態を実現することを目指している。VMwareのソフトを使ってブレードが仮想化され、企業は1つのブレードで最大10〜15ユーザーをホストできるようになるとIBMの広報担当者は説明した。

 クライアントPCに仮想化を適用するための製品や技術が宣伝される中、一部の企業はそのアイデアを検討しているようだ。だが、実地に試し始めている企業はまだほとんどない。

 投資会社のOak Associatesは、VMwareのソフトを使ってDellのサーバを仮想化している。だが、最高技術責任者のスコット・ヒル氏は、仮想化をデスクトップで利用するのはずっと先の話だと語る。

 「Windows XPを仮想マシン上で動作させて、シンクライアントか何かを使ってリモートアクセスするという環境を作れば、メリットがあるのは分かる」とヒル氏。「だが、価格性能比を考えると、そうするのはまだまったく実用的ではないと思う」

デスクトップでの仮想化の現状と課題

現状

  • ハードウェアサポート:仮想化技術を搭載したプロセッサが登場し始めている。こうしたプロセッサはソフトを仮想化処理から解放する。
  • ソフトウェアサポート:デスクトップで仮想化を利用するためのソフトとしてVMware WorkstationやVMware ACEなどがある。だが、これらはそれぞれソフト開発とリモート/ゲストアクセスのサポートに重点が置かれている。

課題

  • 対応PCの増加:メーカーからより多くの仮想化対応プロセッサ搭載システムが提供されなければならない。
  • 対応ソフトの充実:仮想化対応プロセッサを活用できる機能を持ったアプリケーションの充実が求められている。
  • OSによるサポート:OSで仮想化がサポートされれば、PCリソースの分割が容易になる。例えば、Microsoftは将来的にWindows Vistaに仮想化機能を統合すると表明している。

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