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» 2006年03月09日 21時29分 UPDATE

手のひらと指に“脈”あり──生体認証ビジネスめぐり火花

富士通が小型の手のひら静脈認証装置を発売し、今後3年間で売り上げ800億円の事業に育てる計画を明らかにした。指静脈認証を展開する日立も3年間で1000億円を目指しており、両社の競争が活発化しそうだ。

[ITmedia]

 富士通は3月9日、手のひらの静脈を使った生体認証(バイオメトリクス)装置の小型版を開発し、国内外で販売を始めた。生体認証は銀行ATMなどで採用が拡大するとみられており、システム構築などを含め今後3年間で売り上げ800億円を目標に掲げる。

 一方、指の静脈を認証に使うシステムを展開する日立製作所も今後3年間で1000億円の売り上げを目指している(関連記事参照)。両社はほぼ同じ市場をターゲットにしており、金融機関のATMなどの採用合戦で火花を散らす。セキュリティ意識の高まりに合わせ、手のひらと指から生まれたビジネスの“脈”をめぐる競り合いが激しくなりそうだ。

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photo ノートPCに直付けした新型認証装置。右は従来製品

 新製品は35(縦)×35(横)×27(厚さ)ミリ。従来製品(70×70×27ミリ)から体積で4分の1に小型化した上、認証時間も1.5秒と半分に短縮。動作環境の高温上限を50度から60度に引き上げ、屋外の設置にも対応しやすくなった。USBポートを備え、ノートPCに直付けすることも可能だ。価格は3〜4万円と、従来製品(7万4000円)の半分程度に抑えた。

 小型化により各種機器への組み込みが容易になるため、金融系にとどまらず、アミューズメントなどさまざまな分野での応用も期待している。このため同時にソフトウェア開発キット(SDK)を発売する上、技術サポートも手厚く行うことで、機器メーカーも巻き込んで新規アプリーションの開拓を促していく。

 新製品の発売に合わせ、世界統一ブランド「PalmSecure」を新たに採用し、各国の富士通現地法人を通じて欧米やアジアなどに積極的に販売展開していく。同事業を担当する平田宏通常務・サービスプロダクトビジネスグループ長は「年率3割近く成長する生体認証市場で先頭を走り、2008年度末までに同市場で約300億円に当たるシェア9%を獲得したい」と意気込む。

photo デスクトップPC用キーボードに組み込んだ製品のイメージ。ノートPCへの搭載も計画しているという

同じ静脈だが……

 手のひら静脈認証は、人間1人1人で異なる手のひらの静脈のパターンを読み取り、あらかじめ登録しておいたパターンと照合することで本人かどうかを認証する技術。同様に、指の静脈パターンを使って本人と確認するのが日立の指静脈認証技術だ。

 人体を本人認証に使う生体認証(バイオメトリクス)では指紋認証がよく知られている。だが粘土などを使って指紋を写し取れば比較的容易に突破できるという指摘もある(関連記事参照)。静脈認証は体内の情報を使うため、偽造が非常に難しいとされ、この点は手のひら、指の両方で共通したメリットだ。

 その上で「手のひらは最も安心、安定して使えるのが大きなポイント」──と富士通の若林晃バイオメトリクス認証システム部長は胸を張る。手のひらは静脈本数の多さや太さなどで有利であり、「指の血管は手のひらにくらべ数が少なく、細いので、寒さでかじかんだ時に影響が出る場合がある」という。また同社の装置は非接触型のため、「衛生的で、心理的な抵抗感が少ない」とも。

 富士通は2004年7月に認証装置を発売し、これまで1万台を販売してきた。三菱東京UFJ銀行がICキャッシュカードATMの認証に採用したほか、公立図書館のカードレス貸し出しシステムに活用されている例もある。小型化した今回の新製品は、今月中に稼働を始める長野県信用組合(長野市)と諏訪信用金庫(同県岡谷市)のATMに採用された。

photo 富士通による「手のひら静脈が優位な理由」

 一方、日立の指静脈認証は三井住友銀行などが採用。今月末から、同行が「am/pm」に設置しているコンビニATMでも利用できるようになる(関連記事参照)。認証装置を組み込んだノートPCもいち早く商品化(関連記事参照)したほか、車のドアハンドルなどに組み込むセキュリティ装置を提案するなど(関連記事参照)、小型化が容易な利点をいかし、アプリケーション展開でも攻勢をかける。

 日立の推定によると、世界の生体認証市場のうち、静脈認証システム市場は2005年で400億円前後だが、2008年には1000億円弱にまで成長すると予測。日立はここで50%程度のシェア獲得を目指しており、同社次期社長に就任予定の古川一夫副社長は「日本発のグローバルスタンダードに」と意気込む。

 一方の富士通も「グローバルに展開し、先行して一般市場に製品を出してきた。一歩先を行くと認識している」(若林部長)と譲らない。3年間の売り上げ目標800億円のうち、「海外は4分の3」(平田常務)を見込んでいる。有望市場を前に、国内大手2社によるグローバル競争が活発化しそうだ。

photo 生体認証市場の予測

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