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» 2006年03月27日 19時11分 UPDATE

ネット著作権が「危険な方向に走っている」──レッシグ教授

「創作物の共有に、これほどまで規制がかかった時代は、これまでになかった」――クリエイティブ・コモンズ提唱者のレッシグ教授が、著作権法とネット上のクリエイティビティについて語った。

[岡田有花,ITmedia]

 「これが一番好き」――著作者が自ら創作物の利用条件を指定できるライセンス形式「クリエイティブ・コモンズ」を提唱したローレンス・レッシグ・スタンフォード大学教授が見せたのは、ブッシュ大統領とブレア英首相が愛を語り合うビデオクリップだ。

 2人の会見映像をつなぎ合わせ、バックにデュエットのラブソングを流す。男性パートはブッシュ大統領の映像が、女声パートはブレア首相の映像が流れるため、まるで2人がデュエットしているよう。観客から笑いが漏れる。

画像 レッシグ教授

 ネットユーザーが既存のコンテンツを組み合わせて作り上げた、このような“リミックスコンテンツ”は国内外に数多い。ネットならではの創作物だが、現行の著作権法では「著作権侵害」とされるものが多い。

 「このままでは表現の自由が失われる」――国立情報学研究所で3月27日に開かれたシンポジウムの基調講演で、レッシグ教授は著作権とネット上のクリエイティビティについて語った。

アナログ時代より不自由になった

 「創作物の共有に、これほどまで規制がかかった時代は、これまでになかった」――レッシグ教授は、アナログ時代とネット時代とを比較してこう語る。

 例えば、アナログの書籍は何度読んでも構わない。人に貸してもいいし、枕代わりに使ってもいい。一度購入してしまえば、使い方は買い手の自由だ。

 しかし、DRM付きの電子ブックはそうもいかない。閲覧回数が制限されていたり、人に貸すことができなかったり、コピーできなかったり……「売り手側が、文化的コンテンツをいかに使うかを制限し、利用を厳しく管理している」現状の例として、レッシグ教授は「iTunes Music Store」などを挙げる。

 買い手がコンテンツの使い方を決めることができたアナログ時代から、あらかじめ決められたルールで消費するだけのネット時代へ。著作権法が支えるこの動きは自由な創作を規制し、「危険な方向に走っている」とレッシグ教授は危ぐする。

「著作権法=悪」ではない

 現行の米国著作権法に照らすと、冒頭のビデオクリップはもちろん御法度。アニメ映像と好きな音楽を組み合わせたり、2曲を組み合わせて1曲にしてみたり――ネットでは珍しくない2次創作物も著作権法には違反している場合がほとんどだ。

 こういったコンテンツを合法的に発表するなら、著作権者の許諾を得た上で、ほとんどの場合は経済的な対価、つまりライセンス料を支払う必要がある。しかし「218ドルで作ったリミックス音楽を合法的に公開しようと著作者に問い合わせたところ、40万ドルを請求されたという話もある」――レッシグ教授はこんな例を挙げ、「弁護士はなんて奇妙な世界を作ってしまったのか」と嘆く。

 ただ“著作権法=悪、廃止すべき”という立場ではないとも強調する。「著作権法の改正を唱えると『共産主義者』などと言われてしまうが、そういうつもりはない」

 著作権法が認めているクリエイターの著作権は、レッシグ教授も「保護すべき」との考えだ。ただ、現行のままではデジタルコンテンツの利用を制限しすぎている上、2次利用する際も許諾がいちいち必要。制度も複雑で分かりにくい。「文化を創造するために、何十万人もの弁護士が必要というのでは困る」。このため著作権法の改正が必要と唱えるが「米国ではまず無理」という。

クリエイターが利用範囲を決めるクリエイティブ・コモンズ

 クリエイティブ・コモンズは、法改正なしでこの問題を解決する仕組みとして提唱した。クリエイターがコンテンツの利用許諾範囲を「営利目的利用の許可・禁止」「翻訳や改変の許可・禁止」などと決め、対応するマークを表示する。法律知識が無くても分かる解説付きで、2次利用者も許諾の範囲を理解しやすい。

 「これでネット著作権の問題がすべて解決するわけではないが、著作権法に問題がある、と気づいてもらえる」

 クリエイティブ・コモンズ対応コンテンツから、新しい創作物が日々生まれているという。例えば、ある国のミュージシャンが作った曲に、別の国のミュージシャンが別の音楽を重ね合わせて新しい曲を作るという活動。同じ曲をベースにした別バージョンが7種類もできたという。

 クリエイティブ・コモンズはすでに70カ国以上、1200万サイトで利用されているという。今後は「Wikipedia」など、似た考え方で運用されている別のコンテンツとの相互運用性を高めていくほか、クリエイティブ・コモンズサイトから、コンテンツ関連製品を売る商用サイトなどにリンクが張れるようにし、コンテンツの商用利用も促していく方針という。

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