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DMCAよりも恐ろしい著作権法案と戦え

» 2006年05月09日 17時43分 公開
[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 私はフィクションからノンフィクションまで、あらゆるジャンルの読書が好きだが、私のお気に入りの書籍のなかには、歴史的に有名な戦いを詳述したものもある。見事な戦略や驚くべき大失態について、また、その後の社会を形作る争いの結果を運がいかに左右しているかについて読んだりするのは常に興味深いものだ。

 戦場での作戦が日常の世界、特にビジネスの世界にしばしば現れるということは、古くは孫子の『兵法』にさかのぼり、さまざまな書物に示されている。

 そして考えてみれば、実際、過度な不正コピー対策法案に対抗するための最近の戦いは、まさに古典的な戦争のシナリオをなぞる形になっている。

 知的所有権(IP)保護陣営はまず、文字通り真夜中に米連邦議会でデジタルミレニアム著作権法(DMCA)を通過させ、最初の奇襲攻撃で勝利を収めた。この勝利は、技術陣営にとって破壊的な力を持つことが分かっている。なぜなら、DMCAは今日に至るまで、各種製品の潜在的な可能性を制限し、セキュリティ研究者やただ単にデータをバックアップしたいだけの人々を犯罪者に仕立てている。

 その後、技術陣営は再び結集し、防御体制を整え、技術革新と情報をすべてメディア帝国の手中に収めるためのさまざまな取り組みの阻止に当たっている。例えば、フリッツ・ホリングス上院議員(サウスカロライナ州選出・民主党)が提出した悪名高い『消費者に対するブロードバンドおよびデジタルテレビ促進法案(Consumer Broadband and Digital Television Promotion Act)』もそうした取り組みの1つだ。

 この戦いはここ数年、古典的な防御闘争の様相を呈している。映画/音楽業界の陣営は、技術陣営の防御体制を入念に調べ上げ、迎合的な国会議員らによるお粗末な法案という形で相次いで攻撃を仕掛けている。

 映画/音楽業界は、技術陣営が油断しているか、あるいはほかのことに気を取られているタイミングを見計らいさえすればいい。そうすれば、映画/音楽業界陣営は技術陣営の防御を破り、DMCAなど些細な問題と思えるような法案を通じて勝利を勝ち取ってしまうだろう。

 IP保護陣営による最新の攻撃は、『2006年版知的財産保護法(Intellectual Property Protection Act of 2006)』と呼ばれる法案だ。この法案の草案は現在、下院で閲覧されており、本稿掲載時には、法廷/インターネット/知的所有権に関する下院小委員会で検討されているころかもしれない。

 この法案の草案を読めば、この法律が技術に与えるであろう破壊的な影響はすぐにも理解できる。

 この法案が提出されて以来、セキュリティ研究者や技術研究者が指摘しているように、もし昨年の時点でこの法律が制定されていれば、SONY BMGのrootkitをめぐるデジタル権利管理(DRM)絡みの大騒動の際に、同社は法の下で完全に保護されていたはずだ。そしてSONY BMGはおそらく、このDRM rootkitを発見し、その削除でユーザーを支援した研究者らやアンチウイルスベンダーに対し、著作権保護手段の違法な迂回だとして、刑事罰(民事ではなく)を求めることもできたかもしれない。

 さらに言えば、この法案が成立すれば、当局は著作権侵害事件であらゆる情報源から記録を押収できることになるだろう(例えば、ISPあるいは企業のネットワーク/サーバログすべてなど)。そして、著作権侵害に使われた疑いのある機器については、麻薬戦争の際と同様の資産没収法が適用されることになるだろう。そのため、従業員の1人が動画をダウンロードした疑いをかけられた場合、その企業はシステムとサーバを押収されることになってしまう。

 私のこうした発言をフライングととらえる人もいるだろう。この法案はまだ提出されたばかりなのだし、委員会すら通過しない可能性もあるのだからと。私もそうなることを願っている。

 だが偶然とはいえ、この法案を検討する小委員会の会長を務めるのは、この法案を支持しているラマー・スミス下院議員(テキサス州選出・共和党)だ。つまり、この法案が委員会のメンバーによって入念に検討されることになるのは確かだ。

 われわれはこの戦いに無頓着でいるわけにはいかない。地元の下院議員に働き掛けよう。この小委員会のメンバー議員であればなおさらだ。そして、この法案がいかにひどいものであるかを彼らに説明しよう。技術と革新の将来が危機にさらされているからには、この法案にわれわれの防御を破らせるわけにはいかない。

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