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織物の立体・変形形状を事前シミュレーション

» 2006年06月09日 20時37分 公開
[ITmedia]

 愛知県産業技術研究所 尾張繊維技術センターは6月9日、織物の表面の様子や、曲面に使用した場合の変形形状を予測するコンピュータシミュレーション手法を開発したと発表した。自動車のシートに使用する際などに実際に織物を当てる必要がなくなり、開発機関を大幅に短縮できるという。

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 電子機器などの設計ではCAE(Computer Aided Engineering)が一般的だが、織物ではわずかな力でも糸が大きく変形するため、正確な3次元モデルの生成が難しい。このため、さまざまな条件で多種類の織物を試作し、最適な条件を選ぶという人海戦術的な方法で設計するのが現状という。

 同センターは課題解決に向け、2003年度からコンピュータシミュレーション手法の開発に取り組んできた。開発した手法では、糸の太さなどの設計条件と、糸の圧縮特性などの物理条件を入力すると、織物の内部構造の3次元モデルを生成する。実際の織物と同じ楕円の糸断面にも対応し、精密な形状予測が可能になっているという。

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 新手法を導入することで、織物を織らずに変形形状を確認できるため、試作回数を減らし、コストと手間の削減にもつながると期待している。「通常は半年以上かかっていた開発期間を、最短で数時間まで短縮できる」(同センター)という。

 新手法を広く活用してもらうため、同センターは技術移転を希望する企業を募集する。繊維関連企業のほか、新技術の製品化を目指すソフトメーカーも想定している。

 6月13日に都内で開かれる繊維学会で公表するほか、6月29日には成果の普及講習会を一宮市内で開く。詳細は同センターのWebサイトで。

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