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» 2006年09月25日 11時00分 UPDATE

“つくる楽しさ”をプロシューマーにアピールするAMD

AMDは今年初めプラットフォームブランド「AMD LIVE!」をプロだけでなくコンシューマーにも展開すると発表、その後はさまざまな手法でブランドの浸透を図っている。なかでもプロシューマーへの浸透に力を入れているという日本AMDの戦略について聞いた。

[笠原一輝,ITmedia]

 AMDは今年の1月に行われたInternational CESにおいて、AMD LIVE!ブランドをプロシューマー分野からコンシューマー分野に拡大すると発表した(関連記事)。このニュースを聞いて「ん、なんで拡大?」と思われた方も少なくないのではないだろうか。通常であれば、ブランドの発表、ということになるのだろうが、AMD LIVE!に関しては実は数年前からプロシューマー分野のブランドとしてすでにAMDは利用してきたのだ。

 AMDのプロフェッショナル分野での取り組みは古くから行われてきた。有名なところでは、スターウォーズの新作シリーズ(エピソード2、3)のCG制作には、AMDのOpteronを利用したワークステーションが利用されており、エンディングのテロップにAMDのロゴが表示されていることに気付いた人も多いのではないだろうか。

 AMDはプロフェッショナルとコンシューマーの中間に位置する“プロシューマー”と呼ばれるアマチュアのクリエイターへの働きかけを日本でも進めてきている。特に今年の後半は、AMDのブランドでプロシューマーへの働きかけを強めていくという。そうしたAMDのマーケティング戦略についてお話を伺った。

音楽クリエイターの熱い支持を集めるOpteron搭載機

 ある時、秋葉原などで製品を販売している流通業者の方におもしろい話を聞いたことがある。それは、なぜだからわからないのだが、ある時期に「OpteronというPCください」というお客さんが急増したことがあるのだという。“Opteronください”という、CPUを言うだけでPCを買えると思っているあたり、どう考えてもPCユーザーではない。そこで詳しく話を聞いてみると、みな音楽のクリエイターだという。

 なぜOpteronが欲しいのかと問うてみると「音楽作成に利用するソフトがデュアルOpteronだとものすごく速いということが音楽業界で話題になってるんです。だからOpteronが欲しいんです。何とかしてください」ということだという。そのお店では、Opteron搭載のワークステーションというのはおいてなかったので、急遽パーツから1台カスタムで組み上げてショップブランドのPCとして販売したそうなのだが、その後も同じような注文が入るようになったという。

 こうしたエピソードが示すように、AMDに対する音楽クリエイターの支持は実に根強いものとなりつつある。「YMOにサウンドプログラマーとして参加されたことでも知られる松武秀樹氏もAMDの熱心なサポーターの1人です。松武氏を通じて、音楽クリエイターの方に対してOpteronの優位性をアピールしていただいていています」と日本AMD マーケティング本部マーケティング部長 神谷知信氏は語る。

 OpteronやAthlon 64ファミリーの高いクリエイティビティーを評価しているのは、音楽クリエイターだけではない。「映画化された“海猿”のCG作成にもOpteronが利用されています。そのほか、米国ではスターウォーズの最新シリーズの制作に利用していただくなど、映像クリエイターの方々にも高い評価を受けています」(神谷氏)との通り、CG作成の現場などでもOpteronやAthlon 64は積極的に利用されている。

 このように、様々なコンテンツ作成の現場で、AMD64に対応したプロセッサは“業界標準”の座を手に入れつつあるのだ。そうした状況を受け、AMDではクリエイターが参加するイベントにも積極的に参加している。例えば、MTVジャパンが主催するクリエイターを目指す若者を対象としたクリエイティブ・コンテストに協賛している。「こうしたイベントへの協賛を通じて、クリエイターの方々へのOpteronやAthlon 64の認知度を上げていきたい」(神谷氏)と、今後もクリエイターに対するアピールを積極的に続けていく戦略だ。

“つくる”楽しみはプロだけでなくコンシューマーの世界にも広がる

 AMDはこうしたOpteronやAthlon 64の持つ高い潜在能力を、コンシューマーにも活用してもらえるようにアピールしていきたいという。

 「我々はデジタルダッド(筆者注:デジタルお父さん)と呼んでいますが、例えば運動会をデジタルカメラやデジタルビデオで撮影し、その画像や動画をPCで編集するお父さん層がすでに形成されています。また、モバイルマム(同:モバイルお母さん)と呼べるような、レシピをキッチンのPCでダウンロードして、それを元に料理をつくるお母さんというユーザー層も形成されつつある。そこの市場に対してマルチコアの持つパワーというのをいかに伝えていくか、それがポイントになってくるでしょう」(神谷氏)と、すでにデジタルを使いこなすことが当たり前になりつつある20代〜30代の新しい父親、母親へのアピールの重要さを指摘する。「そうしたアピール手段の1つとして、コンシューマー向けのポータルサイト、『amd64.jp』を起ち上げたり、動画編集をテーマにしたBlogをサポートしています。このBlogは、例えば、動画を編集するにはどういうものをそろえたらよいのか、こうしたらもっとうまく編集できるようになります、といった内容です」(神谷氏)と、そうした新しいユーザー層に対してアピールを続けている。

 神谷氏はAMDとしてそうした新しい使い方をいかに提案していくか、それをamd64.jpやBlogなどさまざまな手段を使ってアピールしていきたいと述べ、「もちろんプロフェッショナルな方と、コンシューマーの方ではレベルは違いますが、でもつくる楽しさというのは一緒だと思うんです。ぜひともコンシューマーの方にもレベルを高めてもらって、プロフェッショナルとコンシューマーの中間に位置するユーザー層を育てていきたい」と、今後ともAMDが新しいユーザー層であるプロシューマーへ積極的に働きかけていきたいとアピールした。

年末に向けて4×4で自作PCユーザーにアピールするAMD

 製品のマーケティングを担当している日本AMD マーケティング本部 マーケティング部 デスクトップ/モバイル プロダクトマネージャー 土居 憲太郎氏は、今年後半にはデュアルコアの真の魅力をよりアピールしていきたいと語る。

 「日本のコンシューマ市場は非常にユニークな市場です。他の国の市場では見られないほど、バリューPC向けCPUのシェアが高い。単にWebブラウザでWebサイトを見るだけやメールをやりとりするだけならバリューセグメント向けCPUでもよいのですが、すでに、バックグランドでウイルススキャンを実行しながら別のことをやるといったマルチタスク的使い方は当たり前になってきていますし、動画の編集などではプロセッサパワーが使い勝手に大きな影響を与えます。そうした使い方をするユーザーの方に、いかにAthlon 64 X2のようなデュアルコアCPUをアピールしていくか、それが重要になってくると考えています」(土居氏)との通り、今後はデュアルコアの魅力をどう伝えていくのかがポイントになるだろう。

秋葉原でのイベント 8月に秋葉原で開催されたインテル搭載PCとのベンチマーク対決イベント

 また、これまでもそうだったのだが、AMDは自作PC市場を重視しており、秋葉原などでも積極的に自作PCユーザー向けのイベントを行ってきた。8月にも、Athlon 64 X2をアピールするイベントを行ったばかりで、今後もそうしたイベントを行っていきたいという(関連記事)

 また、日本ではまだあまりメジャーではないのだが、世界的には非常に盛り上がっているLANパーティーへの協賛も行っている。LANパーティーとは、ゲーマーが自分のデスクトップPCを持ち寄ってそれでネット対戦するというイベントだ。ネット対戦ではPCのスペックが結果を左右することも少なくないため、超ハイエンドなPCが続々登場するし、PC自体を人に見せるため、ものすごいデコレーションをしていたりと、言ってみればPC業界の自動車レースみたいなイベントだ。実際、日本以外の地域では、プロのゲーマー(LANパーティーを転戦することを職業にしたゲーマーのこと)が登場するなど、大いに盛り上がっている。

 日本AMDは“BIGLAN”というLANパーティーに協賛しており、8月に行われたSocket4も大盛況に終わったという。「今後もそうした自作PCユーザー向けのイベントに積極的に参加していきたい」(神谷氏)と、今後も自作PC市場へのアピールを積極的に続けていくという。

 製品ラインアップの強化も今後も続けていく。ライバルとなるインテルが新製品をリリースしたことで、それにどう対抗していくかもポイントになるだろう。「競合他社もようやく我々に追いついた製品を出してきたな、というのが正直な感想です。もちろん、我々も手をこまねいている訳ではありません、新しい魅力ある製品をどんどんリリースしてユーザーにAMDプロセッサの良さを認めてもらいたい」(土居氏)と語る。では、具体的にはどんな製品をリリースしていくことになるのだろうか。

 その鍵は“4×4”(フォーバイフォー)というキーワードにある。4×4はAMDが推進している戦略で、2つのCPUソケットを持ったマザーボードをデスクトップPCにも展開していくというものだ。これまで2つのCPUソケットを持ったマザーボードはワークステーション専用だったのだが、これがデスクトップPCにも拡張されることで、合計で4つのCPUコアを持ったPCが実際に市場に登場することになる。「今の時点では詳しいことは申し上げられませんが、今年の末までに4×4製品をリリースしたいと考えています。きっと期待に応えるものすごい製品になると思います」(土居氏)とのことなので、ぜひとも期待したいものだ。

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