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アクセス制限で“炎上”防ぐ Six Apart新ブログ「Vox」

» 2006年11月16日 19時47分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 米SixApartはこのほど、エントリーごとに公開範囲を限定できる無料ブログサービス「Vox」を正式公開した。初心者向けにインタフェースを簡便にしたほか、写真や動画を気軽にアップしてもらえるよう、1カ月あたり2Gバイトのストレージエリアを提供。「ブログは誰に見られるか分からない」と不安に感じて手を出せなかった人をターゲットに据える。

画像 Voxで作ったブログの例

 Voxは「Movable Type」「TypePad」「LiveJournal」に続く同社4番目のサービスで、英語版、日本語版、フランス語版を公開した。毎日の生活を記録し、限られた人に公開する」ことを目指したサービスで、携帯電話からも利用できる。

画像 Voxの投稿画面からYouTube動画を検索し、そのまま投稿できる

 ブログはYouTubeやAmazon.co.jpなど他サービスとシームレスに連携。入力画面からYouTubeの映像やAmazonの商品を直接検索してリンクを挿入することも可能だ。プロフィール公開機能や、写真・動画・音楽を保存・管理する機能、メッセージを送受信する機能、友人を招待する機能など、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に近い機能を備えている。

 最大のターゲットはブログ未経験者。Ajaxを活用したインタフェースは初心者を強く意識しており、HTMLの知識不要でリッチコンテンツを気軽に投稿できるようにした。

 同社のミナ・トロット社長は、未経験者がブログに手を出せない理由として「誰に見られるか分からなくて恐い」「書くことがない」などを挙げ、前者に対しては公開範囲の制限で、後者に対しては、毎日異なる質問を投げかける「きょうの質問」機能などで対応すると語る。

「炎上」避け楽しいブログを

 公開範囲はブログエントリーや画像、動画などコンテンツごとに設定でき、「Web全体に公開」「友人のみ」「家族のみ」「友人と家族」の4種類から選べる。公開範囲に関わらず、読者からは自然な画面が見えるよう配慮し、「『仲間はずれにされた』と思われないよう工夫した」(トロット社長)という。

画像 公開範囲の設定

 「ほとんどの人は、ブログを限られた人だけに公開したいと思っている」――公開範囲の制限は、ブログを5年間続けている社長自身が欲していたものだ。トロット社長も、自分のブログの読者が増えるにつれて従来あった親密感が薄れ、気を遣うことが増えて「だんだん楽しくなくなってきた」という。

 ブログの“炎上”も経験した。「以前、ブログで自虐的なジョークを書いたところ、悪口と勘違いされてネガティブコメントが殺到し、見知らぬ人に『離婚してしまえ』などとコメントされたことがある。悪気のないエントリーでも、数百人が見れば、1人くらいは不快な思いをするかもしれず、それがプレッシャーとなるとブログの更新ができなくなる」(トロット社長)

 Voxに切り替えてからは、プライベートな内容は友人や家族限定で公開でき、ブログを始めたころの楽しさを取り戻すことができたという。

「きょうの質問」で活性化

 「ブログに書くことがない」というユーザーには、毎日異なるテーマで質問する「きょうの質問」や、テーマに沿った写真を募る「Vox Hunt」などで更新のきっかけを提供する。

 他人のブログに簡単にコメントを付けられる「This is good」機能も備えた。プルダウンメニューから「いいですね」「This is good」「das ist gut」など各国語で「いいですね」を表すコメントを選んで投稿でき、コメント内容をいちいち考えなくても簡単にコメントできる。

 画像や動画、音楽などを保存できるストレージエリア容量は1カ月あたり2Gバイトまでと、無料サービスとしてはかなり大きい。YouTubeのお気に入り動画やAmazonで気になった書籍も気軽に登録できるため、ブログを書くためだけでなく、生活の記録すべてをオンライン上に残してもらう「ライフログ」として日々アクセスしてもらう狙いだ。

上級者→初心者に口コミで拡大へ

画像 「ブログを楽しんでほしい」とトロット社長

 Voxのユーザー数は正式公開時で約8万5000人。その後も順調に増え続けているという。まずは「従来のブログで書けないことが増えて窮屈」と感じているユーザー使ってもらい、その友人や家族にも使ってもらってユーザー層を広げる計画だ。来年には「お母さんも使えるブログサービス」になることを目指す。

 各種APIを活用し、他サービスとの連携も深めていく。国内アルバムサービスの画像を取り込めるような機能追加も検討する。主な収益はバナー広告などで挙げる計画で、「きょうの質問」をスポンサーしてもらうビジネスの国内展開も検討している。

 ユーザー数目標は特に設定していないが「単純にユーザー数を増やすよりも、アクティブ率を高め、アットホームな空間にしていきたい」(トロット社長)としている。

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