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絵文字も空気も読めません 10代がハマるSNS「モバゲータウン」を28歳(♀)が探検したあなたの知らないインターネット(2/3 ページ)

» 2006年11月27日 14時18分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 サークルの種類は、趣味から友達探し、暇つぶしまでさまざま。情報交換の場でもあるが、どちらかというと、似た境遇の人同士でだべって楽しむという使い方が主流なようだ。多くのサークルに「しりとり」のスレッドがあることも、暇つぶし的な要素が強いことを裏付ける。

 サークルは、バーチャルな人間関係を生成する場でもある。「モバ彼」「モバ彼女」「モバ家族」「モバ学校」――モバゲータウン限定のバーチャルな人間関係が、サークルを通じて作られ、発展していく。

 最も一般的なのはモバ彼・モバ彼女というバーチャル恋人で、メッセージ交換や掲示板・日記のコメントのやりとりだけで「付き合う」ようだ。「モバ彼募集」「モバカノ募集」といった書き込みは、友達募集系サークルでよく見られる。

画像 モバ彼募集スレッド(左)と、スーパー店員サークルでの「商品しりとり」

 モバ彼、モバカノは、バーチャル限定の付き合いが前提だが、募集の際に住んでいる地域を指定したり、「写メ(携帯電話で撮った顔写真の公開)OKの人」という条件を付けるユーザーも多い。相手の素性が見えた方が楽しくコミュニケーションできるためか、バーチャルからリアルへの発展を期待しているのか、狙いはよく分からない。

 モバゲータウンでは、リアルの出会いを目的とした書き込みを禁止している。モバ彼・モバカノも「バーチャルのみの割り切った付き合い」と考えて楽しんでいるユーザーが大半のようだ。ただ「モバゲーで彼氏・彼女に出会った」と公言する書き込みや、「モバで本気で恋しちゃダメ?」などと相談するユーザーもしばしば見られる。

 モバ家族は、ユーザーが父母や姉妹、兄弟、祖父母、ペットなど家族の役割を分担し、家族みんなで仲良くコミュニケーションする、というもの。実際は「姉の部屋」「兄の部屋」などといったスレッドをサークルに立て、役割に関わらず雑談していることが多いようだ。

 モバ学校は、モバ彼・モバ彼女やモバ家族よりもさらに「おままごと的」だ。サークルの参加者を学生に見立てて、学校にある場やシチュエーションを使ってスレッドを立ててコミュニケーションする。サークルにアクセスしたら、出席を取るスレッドに書き込み。「教室」でユーザー同士で雑談。「購買部」は、スレッドを立てたユーザーが「購買部のおばちゃん」となって、商品販売ごっこをする。生徒役が「おにぎり1つ!」と書き込めば、おばちゃん役が「はいよっ! きょうは寒いからウーロン茶付けとくね」とレスする、といった調子だ。

画像 ホストクラブサークルのスレッドの会話

 シチュエーションごとにユーザーが好みの役割を演じる、いわば“おままごとサークル”はさまざまあり、例えば「ホストクラブ」サークルでは、男性ユーザーが掲示板上で女性ユーザーをもてなし、雑談したり悩みを聞いたりする。会話はこんな調子だ。

 「何か飲もうかな?」「じゃあ、カクテル(酒の絵文字挿入)でも行っとく?」「うん。お勧めの(同)は?」「シンデレラなんてどう? パフェもサービスしとくよ」「ありがとう(ハートの絵文字挿入)」「お待たせしました。シンデレラ、お持ちしました」「じゃあ、カンパーイ」――以下、雑談が続き、盛り上がると「店を出」て、ミニメール交換に移ったりするようだ。

 mixiやGREEなどのPC向けSNSは、リアルのつながりをネット上に持ち込むことを目的とした構造になっており、コミュニティーにはオフ会準備用の機能も備わっている。一方、モバゲータウンは完全にバーチャル寄り。オフ会も原則として禁止されており、現実社会の人間関係を忘れられる点もヒットの要因になっているようだ。プロフィール画像にアバターを使っていることも、“現実とは違うバーチャルな自分”を作り出せる要素になっていそうだ。

 サークルでもう1つ気になったのは、「採点」が流行していること。ファッションリーダーのようなユーザーが、アバターや顔写真を「採点するよ」とスレッドを立て、他のユーザーがそこに書き込んだり、自分の顔写真を貼り付けて「採点」を受ける。結構な人気スレッドで、みんな自らの容姿やアバターの採点を受けては一喜一憂するようだ。しかし彼らはなぜ、見た目を赤の他人に採点されたがるのであろうか。分からない……

Q&Aで「宿題を聞く」学生たち

 「Yahoo!知恵袋」や「教えてgoo」のようなQ&A掲示板「質問広場」もあり、15万近い質問と、それに対する回答が蓄積されている。質問は「音楽」「趣味」「スポーツ」「仕事・アルバイト」などカテゴリーに分かれており、質問数が最も多いのは、「恋愛」カテゴリーだ。

 恋愛では「恋愛は勉強の妨げになるの?」「彼女へのクリスマスプレゼントをどうすればいい?」「失恋からの立ち直り方教えて」といった素朴な質問から「モバ彼に本気で恋をしてしまいました」といった独特の質問、「アニメが好きだと恋愛対象外ですか?」などと聞く自称オタク男性の質問などさまざま。回答者で議論になることもある。

 ちなみに、モバゲータウンの女子ユーザーは、アニメ好きやオタクに対してかなり厳しく、オタクの恋愛相談に対しては「恋愛対象外」「ありえない」などという回答が寄せられる傾向がある。以前、「オタ、キモイ」と書いた女性のブログが炎上した例があったが、ここでは自らが「オタク」と告白した人の方が集中砲火を浴びるという、PCのネット界から見れば逆転現象のようなものが起きているようだ。

画像 数学の質問に丁寧に答えるユーザー

 学生メインのコミュニティーらしく、「勉強教えて」というカテゴリーがあるのも特徴だ。「国語」「数学」「英語」など科目別の小カテゴリーがあり、宿題などで分からない問題を教えあっている。

 数学なら「『1次関数の変化の割合』が分からない」などという漠然とした質問から、数式を示して「解き方教えて」と聞くもの、「『青チャート』何ページの何行目の意味が分からない」というものまでレベルも内容も多様。英語なら「これを英訳して・和訳して」という質問が多い。多くの質問に対して、誰かしらが丁寧に答えてあげていることに驚く。

 ただ記者などは「携帯でちまちま問題文を写し、来るかどうか分からない回答を待つ暇があるなら、自分で回答を考えたほうがよっぽど早いのでは」などと考えてしまうのだが、これは旧人類の考え方なのかもしれない。

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