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2007年もマルチコア化と仮想化が大きな潮流に

» 2006年12月28日 09時00分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 来年のサーバ業界は、多くの新製品投入や技術革新が進められ、活況を呈する見通しだ。マルチコアコンピューティングと仮想化技術が重要性を増していることが大きな背景にある。だが、2007年のPC分野は盛り上がりに欠けそうだ。企業ユーザーと消費者がMicrosoftのWindows Vistaに必ずしもすぐには移行しないためだ。

 業界アナリストは、サーバ市場はマルチコア処理と仮想化における技術革新の恩恵を受ける可能性が高いという見方で一致している。

 Intelは11月14日にクアッドコアプロセッサをリリースしており、DellやHewlett-Packard(HP)、IBMがいち早く採用している。IntelのライバルのAMDも、後れを取るまいと11月30日にクアッドコアプロセッサのデモを行った。2007年半ばまでに製品を投入する予定だ。

 マルチコア技術はx86系のものが報道されることが多いが、Sun Microsystemsは、2005年にRISCベースの8コアプロセッサ「UltraSPARC T1」(コードネーム:Niagara)を製品化したのに続いて、2007年に「Niagara 2」をリリースする見通しだ。Niagara 2はT1と同じく8コアを搭載するが、各コアが同時に処理できる命令スレッドがT1では最大4つであるのに対し、Niagara 2では最大8つとなる。また、IBMも2007年半ばに「Power 6」プロセッサを投入する見込みだ。

 マルチコアの技術革新によって処理能力が向上するとともに、仮想化など、より多くの機能への対応が可能になることは、サーバ市場にとって明らかなメリットだ。だが、PCでは当面の間、こうしたマルチコアの技術革新がもたらすメリットは生かされないもようだ。

 Illuminataのアナリスト、ゴードン・ハフ氏はeWEEKの取材に応え、問題は、クアッドコアプロセッサ用に開発されたアプリケーションがほとんどないことにあると語った。

 「クライアント向けPCでは、マルチコア化が一気に進むとは思えない。現在出回っているソフトの多くはマルチスレッド化されていないからだ」(ハフ氏)

 しかし、IntelとAMDがOEMの支持を獲得しようと激しく競争しているため、2007年にはプロセッサの価格低下が進み、消費者にとってPCはより割安になるだろうとハフ氏は見る。

 一方、Pund-IT Researchのアナリスト、チャールズ・キング氏は、PC業界はまだ、デュアルコアプロセッサの処理能力をフルに発揮させるのに苦労している状況だと、踏み込んで指摘した(もっとも、多くのOEMは企業顧客に、Vistaの機能を最大限に利用できるようにデュアルコア製品を採用することを勧めてはいる)。

 「大きな処理能力が提供されているが、人々はまだ旧態依然のアプリケーションを使っている」とキング氏。「デュアルコアの能力についての理解を喚起し、人々にその価値を納得させて新しいマシンを買いたいと思わせるのは、アプリケーションだ。だが、そのようなアプリケーションを提供する動きは乏しい」

 一方、キング氏やハフ氏をはじめとするアナリストは、1台のサーバやPC上で複数のOSやアプリケーションを稼働させることができる仮想化技術については、はるかに楽観的な見方を示した。

 メインフレームからUNIXサーバ、x86サーバまで幅広いシステムに適用される仮想化は、データセンターの基幹技術としての位置づけがますます強まっており、これは2007年を通じて続くだろう、とキング氏は語った。

 「この技術は土台の役割を果たすようになってきている」とキング氏。さらに同氏は、Virtual Ironのような小規模な企業がVMwareやMicrosoftといった大手に挑んでおり、こうした競争も市場を活性化させるだろうと付け加えた。

 また、サーバメーカーの間では、オープンソースの仮想化ハイパーバイザー「Xen」をサポートする動きも進みそうだ。Xenは主要なLinuxディストリビューションに含まれる見通しだ。Virtual Ironなどの仮想化ベンダーはXenベースの製品を提供している。

 Endpoint Technologies Associatesのロジャー・ケイ社長は、PCメーカーも仮想化技術を積極的に採用するようになると考えている。

 PC分野、特にデスクトップPCで仮想化の採用が進めば、セキュリティの向上に役立つほか、企業は1台のマシンで複数のOSを運用する環境を構築しやすくなるとケイ氏は述べた。

 Gartnerのアナリスト、レスリー・フィアリング氏も、2007年には企業が仮想化の技術革新をより活用し、仮想化を使った新しいアプリケーションをPCに取り入れるようになると見ている。

 「仮想化は、セキュリティ環境を実現する手段として重要性が高まっている」とフィアリング氏。「企業の間では、仮想マシンを通じてネットワークにアクセスするPCを契約社員に支給することが一般化しつつある。われわれは、正社員に支給されるノートPCでも、仮想マシンのこうした利用が始まると考えている。このように、仮想化の活用により、全体的なセキュリティを強化する仕組みを広く展開する方法が、たくさん開発できるとわれわれは考えている」

 Vistaの登場(企業向けエディションが11月30日にリリースされており、Microsoftは来年1月30日に同OSを一般向けに発売する)に関して言えば、この新OSは、Office 2007やExchange Server 2007ともども、PC市場、とりわけ企業顧客の購入傾向にすぐには影響しないというのが大方のアナリストの見方だ。

 ケイ氏は、Vistaは2007年末ごろには、消費者向けのPC販売に貢献するかもしれないと語った。一方、フィアリング氏は、企業はVistaの導入時期を慎重に検討するため、VistaがPC市場で主流の地位を完全に確立するのは、早くても18カ月後だろうと述べた。

 また2007年には、Microsoftの次期サーバOSとなるLonghorn(コードネーム)も登場する見込みだ。キング氏は、同OSのリリース時期は確定していないが、2007年の後半に入ってリリースが近づくとともに、同OSは注目を集めそうだと考えている。

 「顧客がβ版にどんな反応を示すか、そして、Microsoftが出荷までの過程でどんな変更を加えるかが見ものだろう」(キング氏)

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