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「4大レーベルはDRMを捨てよ」、Appleのジョブズ氏が提言

» 2007年02月07日 10時11分 公開
[ITmedia]

 Appleのスティーブ・ジョブズCEOは2月6日、同社のDRM(デジタル権利管理)技術「FairPlay」を開放するよう求める声に対し、「レコード会社の方こそDRMをなくすべき」と反論した。

 Appleは自社の音楽サービス・デバイスにFairPlayを採用しており、iTunes Storeの曲をiPod以外のデバイスで聴いたり、ほかの音楽ストアで購入した曲をiPodで聴くことはできないようになっている。欧州の一部国家では、FairPlayを開放して、他社製品との互換性を確保するよう求める声が上がっている。

 ジョブズ氏はこうした動きに対し、「iPodはDRMのない楽曲、MP3やAACなど“オープンな”フォーマットでエンコードされた楽曲を再生できる」ことを思い出すよう呼びかけている。ユーザーはCDなどから楽曲をiTunesソフトに簡単にインポートでき、これらは自動的にAACかMP3にエンコードされると同氏は言う。

 またジョブズ氏は、DRMを採用したのは、4大レーベル(Universal Music Group、ソニーBMG、Warner Music Group、EMI Group)が契約に際して楽曲の保護を求めたためだと主張している。不正コピーを防止するためには、許可されたデバイス以外で楽曲を再生できないようにしなくてはならず、そのためにDRMシステムは秘密の暗号を使っているという。

 ジョブズ氏はこうした状況を説明し、今後の選択肢を3つ挙げた。

 1つ目は現行のシステムを続けること。現状ではApple、Microsoft、ソニーなど各社が独自のDRMシステムを採用したサービスとデバイスを提供している。これには顧客が囲い込まれるという批判がある。

 2つ目はFairPlayを他社にライセンスして、各社の音楽デバイスと音楽サービスの間で互換性の確立を図ること。ジョブズ氏は、これは表面上は良い考えに見えるが、情報を共有すれば秘密が漏れるのは避けられず、DRMのクラックにつながるという問題があるとしている。またAppleがすべてをコントロールするわけではなくなるので、漏えいのダメージを迅速に回復する上でも問題があると同氏は言う。

 「FairPlayを開放すれば、4大レーベルがライセンスする楽曲の保護は保証できなくなる」(同氏)

 3つ目はDRMを完全に廃止すること。どのデバイスでもあらゆる音楽ストアの曲を再生できるようになる。「明らかに消費者にとって最善の選択肢であり、Appleはこれをすぐにでも採用したい。4大レーベルがDRMの条件なしでAppleに楽曲をライセンスすれば、iTunes StoreはDRMなしのバージョンのみの販売に切り替える」とジョブズ氏は述べている。

 CDに収録された楽曲はDRMで保護されていないため、オンラインで販売する楽曲にDRMをかけても違法コピー防止の役には立たないと同氏は指摘、DRMの義務づけをやめれば、オンライン音楽サービスの新規参入が増えて音楽業界のメリットになるとしている。

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