コラム
» 2007年03月26日 15時47分 UPDATE

ネットショッピングが「カタログ」に勝てない理由

Flashでの派手な広告も購入履歴に基づくお勧めも、いつでもどこでも眺められるカタログにはかなわない。

[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 わたしは意志が弱い。ものすごく。抜け目のない広告に翻弄されるお人好しだ。

 わたしだって自分が超抜け目のない科学技術者で、広告を見なければ欲しいとも思わなかった製品を人々に買いに走らせる策略などには影響されないようでありたい。だが実際には、誰よりも簡単に広告戦略に乗せられてしまう。

 わたしの財布のひもをゆるめさせ、クレジットカードを使わせたこのずるがしこくも非道なたくらみとは? Webサイトの新しいテレビ的なコマーシャルだろうか。Flashで動くかっこいいゲーム? Webサイトにサブリミナル広告でも潜んでいたのだろうか?

 いや、そうではない。広告を表示させないようにする方法を探す場合以外、わたしはWeb広告をほとんど見もしない。

 わたしを一瞬で買い物中毒者にしてしまった広告は、最古の広告手法――シンプルな紙のカタログだ。

 わたしのコラムを読んでくれている人であれば、わたしがかつてミュージシャンだったことに触れていたのを読んだことがあるだろう。そう。昨年だったか、昔のバンド仲間とまた活動を始めて頻繁に演奏するようになったせいで、楽器やらなにやらを買い換える必要が生じた。

 基本的な機材をオンラインや店頭で購入した後、幾つかの顧客名簿に登録された結果、郵送カタログを受け取るようになった。コンピュータのカタログの魅力には免疫があったのだが、カウチに腰を落ち着けて、かっこいいピカピカのギターや低音が出る大型アンプが満載のカタログをじっくり見るのは非常に楽しかった。

 それがわたしの転落の始まりだ。存在すら知らなかったエフェクターペダルが、突然必携アイテムになる。スライドギター奏法では指の1つにボトルネックをはめるため、通常はすべての指を使うことができないが、それを可能にするようなクールなガジェットを見つけたときにはすぐに買ってしまった。そんな感じだ。高価なGibson SGモデルは思いとどまることができたが、そのカタログを手に取らなければおそらく考えもしなかったような細々としたアイテムを多数買ってしまった。

 もちろん、カタログの影響を受けているのはわたしだけではない。妻はよく送られてくる複数の洋服のカタログを熟読し、欲しいアイテムに丸を付けている。紙のカタログがまだ一般的であるという事実は、そのままその影響力の証しだ。何百万部もの紙のカタログを郵送するにはコストが掛かるし、Webのショップを運営するより確実に高くつく。だが有効だ。

 さて、ここからが本題だ。「カタログ体験」をオンラインで再現する方法はあるだろうか?

 もちろん、標準的なWeb広告では同じような効果は出せない。わたしの場合、Web広告に気付くのは、通りを歩いている横を走り抜けるタクシーの屋根についている広告に気付くのと同じ程度だ。

 多くのEコマースサイトが提供しているコラボレーティブ・フィルタリングや購入履歴に基づくお勧め機能はどうだろう。ある程度は効果があるだろうが、カタログには絶対及ばない。それに、そうした機能が何度かミスしたら(必ずミスするものだ)、顧客は普通の広告よりももっとそれらを無視するようになる。

 ロングテール型のサイトにするのなら、目立つ場所を確保してありとあらゆる製品を販売する必要がある。しかし、これでは経済的に成り立たない。さきほど挙げたスライドギター用ガジェットは、よほどたくさん売らないとギター1本の売り上げを超えることはできない。

 サイトの多くが採用している最も典型的なオプションは、普通の紙のカタログのPDF版をダウンロードできるようにすることだ。これは有効だが、家の中でどんな状態でも、どんな部屋ででも見られるという紙のカタログの特長はPDFにはない。

 では、Eコマースサイトが紙のカタログ体験をオンラインで再現する解決法はなんだろうか? 優秀なWebデザインの存在を信じるわたしとしては言いたくはないが、解決法はない。

 書籍対電子書籍、または新聞対Webサイトの場合と同様、紙と同じくらい持ち運びに便利で柔軟なWebディスプレイが登場するまでは、郵送のカタログは健在だ。

 さて、もう行かなくては。さっき届いたCrybabyのワウペダルが待っているので。

原文へのリンク

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