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“新生”ライブドアは技術で勝負 Ajax活用の新ブログサービスも

» 2007年04月02日 19時17分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ライブドアは4月2日、会社分割で持ち株会社制に移行し「ライブドアホールディングス」に社名変更した。ポータルなど事業部門は同日新設した事業会社「ライブドア」に移管。ブログなどCGM(Consumer Generated Media)分野を強化し、技術力を前面に押し出して経営していく。

 「Web2.0の世界でリーダーになる」――ライブドアホールディングスの平松庚三社長は4月2日の会見で、新生ライブドアについてこう宣言した。Ajax(Asynchronous JavaScript+XML)を活用した新ブログサイト「PRAC」(プラック)を4月下旬に開設するほか、RSSリーダー「livedoor Reader」は英語版を公開し、世界進出する計画だ。

「同じ過ち、2度と起こさない」

画像 左からライブドアホールディングスの平松庚三社長、ライブドアの出澤剛社長、同照井知基副社長

 持ち株会社のライブドアホールディングスは、グループ会社の管理や訴訟対応に特化。コーポレートガバナンスとコンプライアンスの強化に取り組んでいく。「会社が存続する限り、2度と同じ過ちは起こさない」(平松社長)

 事業会社のライブドア社長には、昨年6月からポータル事業を統括してきた出澤剛氏が就任。ポータルなどメディア事業と、データセンターなどネットワーク事業を旧ライブドアから引き継ぐ。公衆無線LAN事業「livedoor Wireless」はライブドアホールディングスに残し、提携先を模索する。

 新会社にライブドアの名前を残した理由は「良くも悪くもライブドアという名前でやってきたので、この名前に向き合っていきたいという思いがある」(出澤社長)ためだ。さらに「専門家に意見を聞いたところ賛否両論だったが、知名度が高くブランド資産として有効に利用できる。社名を変更するとサービスのドメインも変えなくてはならずユーザーに迷惑がかかる」といった背景も説明した。


画像 ライブドアの新たな出発に、ソニーの出井伸之最高顧問とインスパイアの成毛眞社長、グーグルの村上憲郎社長がコメントを寄せた

ポータルは回復、データセンターは堅調

 ポータルサイト「livedoor」のUUは、事件後もそれほど減少せず、今年2月は過去最高の1814万人に。広告売上高は事件発生後に急減したが、昨年7月に底を打ち、3月の月間ではピーク時(2005年12月)の70%・約1億円まで回復した。「すでに最悪期は脱した」と出澤社長は語る。

 ホスティングから通信インフラ、システムインテグレーションまでをワンストップで提供してきたネットワーク事業は、事件発生後も売り上げは落ちず、安定した収益源となっている。顧客企業数は約4000社という。

 2007年度の年間売り上げは、ポータルを含むメディア事業が約25億円、ネットワーク事業が約25億円の計50億円となる見込み。これを2009年度には100億円に倍増させ、売上高営業利益率20%達成を目指す。


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 コスト削減も進めており、ライブドアニュースの独自ニュース部門の閉鎖や、ネットワーク事業でコンシューマー向けサービスからの撤退などに取り組んできた。7月には六本木ヒルズから移転し、オフィス賃料も削減する計画。9月には単月黒字化達成見込みという。

新ブログ「PRAC」で稼ぎ、「livedoor Reader」で世界進出

 事業会社のライブドアは、これまで得意としてきたブログや画像投稿、ソーシャルブックマークなどといったCGM分野をさらに強化。Web2.0時代のリーディングカンパニーを目指すという。

 ブログサービス「livedoor Blog」の登録ユーザー数は170万と「業界ナンバーワン」(出澤社長)。画像投稿サービス「livedoor PICS」は同12万5000人、ソーシャルブックマークサービス「livedoor Clip」は同3万5000人と、それぞれ業界ナンバーツーという。「自前でデータセンターを運営しているので、コストを抑えながら安定運用できる」(出澤社長)のが強みだ。

 4月下旬には新たに、コミュニティー機能を備えた新ブログサービス「PRAC」をオープン。評判の高いRSSリーダー「livedoor Reader」は英語版を構築して4月下旬に公開し、世界市場を狙う。ブログやSNSの企業向け販売も始める計画だ。

 PRACは、Ajaxをフル活用したブログサービスだ。ブログ記事を解析し、似た記事を書いている人をキーワードなどから抽出してゆるやかにつながる機能など、ユーザー同士でコミュニケーションできるサービスにする。

 記事は内容によって自動でカテゴリー分けし、カテゴリーに合った広告を配信することで広告媒体としての価値も高めていく。“玄人向け”のlivedoor Blogと異なり、ブログ初心者をターゲットに据えるという。

 livedoor Readerは、簡便で高速なインタフェースに定評があり、登録ユーザー数は現在約12万。Web型RSSリーダーとしては国内最大規模という。英語版を公開し、「日の丸ネットサービスとして世界でのデファクトスタンダードを目指す」と出澤社長は意気盛んだ。

 「Web1.0時代は、ポータルや検索サイトのトップページからすべてが始まっていたが、Web2.0時代はルールが変わり、RSSリーダーのマイページがスタートページになるのでは」

 米国のライバルは「Bloglines」や「Google Reader」と見ている。「海外発だからとか、Googleだからすばらしい、という訳ではなく、いいサービスは国境を越えられる。livedoor Readerは、描画速度や豊富なショートカットキーなどで他サービスより優位。ネットサービスは米国から入ってくるものが多く、日本の優秀な技術者も米国に出て行ってしまうが、国内にいながらデファクトスタンダードを発信できるようにしたい」(出澤社長)

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