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ミクシィ売上高2.8倍に 「脅威と感じる他社はない」が……

» 2007年05月10日 22時16分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ミクシィが5月10日に発表した2007年3月期決算(単体)は、売上高が52億4700万円と前期比2.8倍に急伸した。SNS「mixi」の広告出稿が順調で、同社の笠原健治社長は「mixiはページビュー(PV)も広告単価も上がっている」と好調ぶりをアピール。求人情報サイト「Find Job!」も順調だった。

ミクシィの株価チャートミクシィの株価チャート(1年:縦軸の単位は1000円)

 営業利益は21億8400万円、経常利益は21億4700万円で、それぞれ2.4倍に。純利益は94%増の11億1800万円となった。

広告は好調

画像 「上場の効果で会社の認知度・信頼度が向上した」と笠原社長

 mixi事業の売上高は前期比約6倍の38億7969万円。うち約9割を占める広告売り上げは約7倍に伸び、単価の高いターゲティング広告や口コミを活用したタイアップ広告などの投入が奏功した形だ。有料課金会員からの売り上げは3.5倍に伸びた。

 月間PVは、3月末時点でのPC版が69億1000万と、前年3月末比64%増。携帯版「mixiモバイル」は同40億3000万で、同6.8倍に増えた。

 1PVあたりの広告単価も伸びており、PC版は第3四半期(3Q、2006年10〜12月)が0.041〜0.05円だったが、第4四半期(4Q、2007年1〜3月)には0.046〜0.068円に。携帯版は3Qが0.01円だったが4Qは0.01〜0.014円に上がっている。

 Find Job!事業の売上高は同12%増の13億6769万円。mixi上に求人広告を出稿するなどしてコストを削減しながら売り上げを向上させた。

 今期の業績見通しは、売上高が前期比84.9%増の97億円、営業利益が同46.5%増の32億円、経常利益が同49.0%増の32億円、純利益が同56.5%増の17億5000万円。ユーザー数見通しは公表していないが、「倍まではいかないが、倍近くを見込んでいる」という。

ユーザー離れも

 収益上の指標は順調だが、一方で3日以内にログインしたユーザーの割合を示す「アクティブ率」は低下傾向だ。mixiの5月10日現在の登録ユーザー数は983万人と1000万人に迫る勢いだが、アクティブ率は64%と、昨年12月末の67%から3ポイント減。開始当初から「アクティブ率7割」を誇っていた同サービスだが、一部でユーザー離れも起きているようだ。

 ユーザー1人あたりのPVは、PCでは減少傾向だが、PCの減少分を携帯の増加分が補っている。3月末の1人あたりの月間PVはPCが751で昨年12月末よりも110減。携帯版は438.2で昨年より107.2増だった。

モバゲーとは「大きく違う」

 会見でmixiのライバルについて問われた笠原社長は「特定の会社がmixiの脅威になっている、という感覚はない」と自信を見せるが、携帯SNSでは「モバゲータウン」がユーザー数を500万人近くにまで伸ばし、月間PVはmixiモバイルの倍を超えている。GREEも携帯版をドライブにしてユーザー数を拡大している。

 笠原社長はモバゲーについて「大きく違うサービスで、雰囲気やコンセプトも異なる」との認識を語る。その理由としては、(1)mixiは18歳未満は利用できないが、モバゲーは10代ユーザーが中心、(2)mixiは完全招待制で、リアルの生活にひも付いた人間関係が中心だが、モバゲーは誰でも登録でき、バーチャルな人間関係が中心――などを挙げた。

M&Aは「前向きに検討」

 同社は上場で約70億円を調達したが、大規模な投資などは行っておらず、現預金は前期比約9倍の62億4030万円に急増した。笠原社長は「急いで使うつもりはない」としながらも、「M&Aは前向きに考えたい」と意欲を見せる。

 「買収するなら開発力のある会社。今後作りたいサービスを展開するにあたって、スピードアップできるような会社がいいが、急がずにお互い十分理解した上で前向きに進めていきたい」

 笠原社長は「mixiのサービスはスピード感を持って強化していく」と語るが、新サービスのリリース速度は他ベンチャー企業などと比べると決して早いとは言えない。

 「そこは苦労している点だ。開発の人員は増えているが、基幹部分の拡張性を高めるための、目に見えない部分の開発にリソースを割かれてしまっている。900万人以上が使っているサービスだから、新機能は簡単には追加できない」

 βサービスを公開するラボのような場の構築の可能性も「ないとは言えない」としながらも「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、というのは避けたい」と慎重な姿勢だ。

株式は2分割

 株式の分割も発表した。7月1日付けで2分割する。「株式の流動性を高めて売買しやすくし、投資家層を広げるため」と笠原社長は説明している。

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