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“太っ腹”なAPI公開に刺激され――「Twitterを横にした」新サイト

» 2007年05月21日 07時59分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 グルコースが5月18日に公開した「24 o'clocks」は、「Twitter」ユーザーの書き込みを、時間割のように見られるサービスだ。表示する書き込みは1時間に1本限定。24時間分を1画面で表示し、ユーザーの1日の生活を俯瞰(ふかん)できる作りにした。

 構築にはTwitterのAPIをフル活用したが、いわゆる「マッシュアップサービス」ではないという。「マッシュアップは複数サービスの機能の一部を切り出し、混ぜて作るイメージだが、24 o'clocksはTwitterをルービックキューブのように組み替えた。いわば縦のものを横にしただけ」と同社の大向一輝さんは説明する。

 それが可能になったのは、Twitterが充実したAPIを公開しているからだ。「素材が丸ごと手に入れられるから、同じ道具で違うことができないかと考えたくなる」

24 o'clocksとは

画像 24 o'clocks。24時間分を1画面でスクロール表示する。「開発者が使うディスプレイはどんどん大画面化しているのに、その大きさを生かしたサービスがない。全画面表示して楽しいサービスを作ってみたかった」(大向さん)

 24 o'clocksは、TwitterのユーザーIDを入力すれば、そのユーザーのフレンド(書き込みの更新情報を受け取っているTwitterユーザー)の1日の書き込みを、24時間分並べ、1画面上で見られるサービスだ。

 IDを入力すると、フレンドアイコンを左列に一覧表示し、その右には1時間ごとに区切ったラインを表示。各フレンドの書き込みを、1時間につき1本分だけ、吹き出しの中に表示する。1時間に1度も書き込みがない場合は、空欄のままになる。

 1日分を1画面で表示する。ドラッグすればスクロールできる。「前日」のリンクをクリックしていけば、前日やその前日の書き込みも順に見られる。

 IDを入力しなければ、書き込みを公開している全ユーザーの更新情報一覧ページ「Public Timeline」から新着情報を取り込んで表示する。書き込みを公開していないユーザーの場合は、IDを入力しても情報を表示できない。

発言の“すき間”に意味が出てくる

 「Twitterは人によって書き込む量の差が大きい。1日3回しか書かない人と100回書く人では、後者が目立ってしまう。両者をバランス良く表示でき、人の生活を一覧できるような仕組みを作りたかった」(大向さん)

 24 o'clocksを眺めていると確かに、発言の少ない人の存在感が際立って見える。例えば、「今から会議」や「ちょっと昼寝」などと書いた後何時間も空白があると「長い会議だったのかな」「いつまで寝てるんだこの人……」などと想像がめぐるのだ。「『発言のすき間』に意味が出る」(大向さん)

TwitterのAPI公開は“太っ腹”

 24 o'clocksは、同社社長の安達真さんと2人で、約1週間で開発した。「Twitterそのものをこねくり回し、ルービックキューブのように再構築した感じ。新しいものを作ったというより、縦のものを横にしただけ。それができたのも、Twitterが惜しげもなくAPIを公開してくれているから。さすが、『Blogger』開発者が作ったサービスだけある」(大向さん)

 Twitterは、ユーザーの更新情報取得機能など、主要機能ほとんどのAPIを公開しており、多くの開発者がそれを活用してサービスを構築している。ブラウザなしでTwitterを更新できるデスクトップ常駐ソフトや、携帯電話からTwitterを更新できるツールなどがその例だ。

 「ヘビーユーザーは、ほとんどがサードパーティーのクライアントを使っているのではないか」――大向さんもMac用クライアント「Twitterific」をデスクトップに常駐させている。太っ腹なAPI公開が技術者を刺激して便利なツールが開発され、サービスを活性化させるというサイクルがうまく回っているようだ。

同じ素材で違うものを

画像 大向さん(=写真左)がサービスの構想やデザインを担当し、安達さん(=写真右)が開発した。「1人が考えて1人が作る、手工業の世界。小さい会社は、1つのサービスにもいろいろ詰め込むのではなく、いかに削るかの勝負」

 Twitterという新しいコミュニケーションツールと、それを構成するAPIという素材を目の前にして大向さんは「同じ素材を使って違うことができないか、頭の体操をした」という。「リアルタイムに見られるクライアントはすでに開発されているから、別のものを作りたい」と構想した結果、「1時間1本限定」「横に並べて表示し、1日分を俯瞰できるようにする」という24 o'clocksのアイデアが生まれた。

 「ブログやSNSだと1エントリーが長すぎて一覧にしても全文表示できないし、それぞれのエントリーを力を入れて書いている人も多いから、ざっと見るのには向かない。24 o'clocksの仕組みは、Twitterの短い気楽な内容の文章だからこそ向く」

 安達さんは、Twitterを見て悔しかったと語る。「以前から、インスタントメッセンジャーのステータス欄が面白いと思っていた。そう気付いていながら(ステータス欄を単体で更新するような仕組みの)Twitterを開発できなかったのはダサいから、Twitterは使わないようにしていたのだが……」

いつでも世界デビューできる

 同社はこれまで、「mixiミュージック」「goo RSSリーダー」(アプリ版)など他社ブランドのアプリケーション開発を中心に事業展開してきており、独自ブランドで構築した本格的なWebサービスはこれが初。だがサイト内にグルコースの名前は出していない。

 「『Flickr』『del.icio.us』『Linger』のように、社名に関係なくサービス=ブランド=ドメインという形にして、米国の開発者がアイデア一発で作ったような感じにしたかった」(大向さん)

 ユーザーインタフェースはすべて英語。文字は最低限に抑えて海外の人も迷わず使えるようにした。「いつでも世界デビューできる。どうすればアメリカの人に知ってもらえるか考えている」(大向さん)

「ビジネスになるんですかね? こんなもの」

 機能は順次追加していく。ユーザーIDと連携させ、24 o'clocksのページから直接Twitterに投稿できる機能などを検討中だ。最終的な野望は、Twitterのコミュニケーション形態を変えてしまうことだという。

 「24 o'clocksが流行して、みんなが1時間に1回だけTwitterに投稿するようになれば面白い。いつでも気軽に更新できるはずだったTwitterが、1時間に1回、渾身(こんしん)のエントリーを更新するツールに変わったりして」(大向さん)

 サービスは同社の「自由研究」という位置づけで、早急なビジネス化などは考えていない。「ビジネスになるんですかね? こんなもの(笑)」(大向さん)

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