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「今でもブログが営業マン」 ギャル革命、進行中

» 2007年05月28日 12時01分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「ギャル革命」が進んでいる。

 ギャル革命は、ギャル兼社長兼歌手の藤田志穂さん(22)が、1人で始めた運動だ。目的は2つ。「汚い、うるさい、適当」などというギャルへのマイナスイメージを払拭し、大人たちのギャルへの意識に革命を起こすことと、ギャルもそうでない人も、誰もが夢に見つけられる学校を作ることだ(関連記事参照)

画像 「ギャルと大人をつなぎたい」と藤田さん

 1つめの目的は、徐々に形になってきた。19歳の時に立ち上げた会社「シホ有限会社G-Revo」の社員は10人に増え、“ギャルマーケティング”を中心に幅広く事業展開する。ギャルの生の声を聞ける唯一の企業として、ギャル向け商品のメーカーだけでなく、大手広告代理店からも引き合いがある。

 藤田さん自身は、Sifowという名でギャルアーティストとしても活躍中。所属するエイベックス・エンタテインメントからは3枚のアルバムと4枚のシングルCDを発売した。ギャルのファッションリーダーとして、時東ぁみさん、ギャル曽根さん、安倍麻美さんのユニット「ギャルル」のファッションプロデュースも手がける。

 「以前は、わたしたちギャルが何か発信しても、大人は相手にしてくれないと思っていたんです。でも最近、大人が興味を持ってくれてるってことが、だんだん分かってきました」

 ギャルが大人に受け入れられ始め、藤田さんの周りに人が集まってくる。2010年までに学校を作るという夢も、近づいてきた。

ギャルが認められてきた

 「認められてきたというか、最近は知っててもらっていることが増えました」。メディアに出る機会が増え、活動が本や漫画になり、付き合う企業が増え、会社のスタッフが増え――ギャル社長・藤田志穂の名が浸透してきた。

 例えば、社長ばかりが集まる会合で講演した時。藤田さんと名刺交換したいという社長が、100人以上も列を作った。「以前は自分から名刺交換に行っていたのに……」

 「わたしの話を聞いて、大人たちはいい意味で裏切られるんだと思います。これまでのギャルのイメージが覆されるというか。『何でそこまで行動力があるの?』とかよく聞かれて、ギャルのパワーに興味を持ってくれます」

 ギャルを流行の発信源として見る大人も増えてきたという。ギャルに直接アプローチする術を持たない人たちは、ギャルの“現場”を知るシホ有限会社G-Revoにギャルマーケティングを任せる。

 「わたしはギャルのことしか分からない。ギャルマーケティングがお金になるなんて思っていなかったから、最初は請求書も作っていませんでした。でも周りの大人やスタッフたちがマーケティングのやり方を考えてくれて」

今でも「ブログが営業マン」

 営業活動も怠らない。藤田さんの営業は、足で稼ぐ一般の外回り営業とはちょっと違う。「今でもブログが営業マンですよ。ブログ(ギャルの革命)を見て問い合わせしてくれる人がすごく多くて。どこに営業に行くよりもブログは強いです」

画像 ブログ「ギャルの革命」

 不定期で更新してたブログは、月〜土曜日はほぼ毎日更新することにした。「せっかくたくさんの人が見に来てくれているのに、更新してないとつまらないから」というのが最大の理由だ。

 ブログの“営業力”も無視できないから、忙しい時でもスタッフが仕事を肩代わりしてくれたりして、藤田さんにブログを更新する時間を作ってくれる。

 以前はネイルアートの爪をキーボードのすき間に挟みながらやっとこさブログを更新していたが、今はブラインドタッチできるようになった。「パソコン打つの、早くなりましたよ。でも『左手あんま使わないのな』って笑われる。左は『A』と『W』くらいしか押さなくて、あとは右手でやっちゃう」

 1エントリー当たり数十〜数百も付くコメントにも、できる限り返信する。「朝会社に来たら、まずコメントを返します。全部は無理なんですけど、1日20〜30くらいは」。せっかくコメントしてもらっているのに、全部に返信できないのが心苦しい。

 「もっとリアルな交流ができないか」――そう考え、「ブログで語ろぅ会」という企画も始めた。1カ月に1回程度、テーマを決め、ブログのコメント欄を使ってリアルタイムに読者と対話する。1回に数十人が参加し、藤田さんと30分間、チャットのように語り合う。「すぐにコメントが返って来るのが面白くて」

 ただコメント欄はリアルタイムのやりとり用には作られていないから、語ろぅ会の最中に重くなることもしばしば。「わたしの原点はブログだから」と、ブログを使ったコミュニケーションにこだわってきたが、今は語ろぅ会専用のBBSを作ろうかと検討中だ。

「ギャルル」プロデュースの理由

画像 昨年ごろまでは家に帰る暇もないほど多忙。シャワーを浴びるために日焼けサロンに行き、そのままオフィスに戻る生活を続けていた。最近は家に帰れるようになったから「肌が白くなった」という

 ギャルがテレビに出る機会も増えた。「ギャルが司会する史上初の番組」という「ディーパラ(DEEP PARADISE)」(テレビ埼玉)は、藤田さんと、ギャルモデル2人が司会を務める。

 あのハロー!プロジェクトにもギャルファッションが取り入れられた。時東ぁみさん、ギャル曽根さん、安倍麻美さんの3人が結成した、パラパラを歌うギャルユニット「ギャルル」で、藤田さんがファッションや話し方をプロデュースした。

 きっかけは、つんく♂さんとギャルルの3人(当初は辻希美さん、時東さん、安倍さん)が、雑誌に藤田さんが持つ連載ページのゲストに登場したこと。藤田さんとつんく♂さんにはある共通点があり、意気投合したという。

 「つんく♂さんは、パラパラのようなギャルテイストの音楽をお茶の間に広げたいそうで、『テレビでパラパラが始まったらチャンネルを変える』をナシにしたい、とおっしゃっていました。わたしは『ギャルがテレビに映った瞬間にチャンネルを変えられちゃう』っていうのをナシにしたかった。そういう所が共感してもらえたのかな」

ギャルの職場作りも

 シホ有限会社G-Revoでは、たくさんのバイトが働いている。その多くがギャル。ほかのバイトの採用試験に落ちたギャルが放課後にやってきて元気に働き、同社の原動力になる。

 「みんなバイト探しているんです。わたしが高校生だったころは『絶対誰も落ちないバイト』として有名だったテレアポでも、最近、国語とか社会とかの試験やるらしくて、落ちちゃうんですよ。仕事に向いているかどうかなんて、試験じゃ分からないのに」

学校も「今年中には形にしたい」

 ギャル革命2大課題の1つ、「学校を作る」も、順調に進んでいる。「2010年までに作るのが目標。前は作り方も分からないのに『作りたい』と言っていましたが、最近は、実際に学校を作っている人たちに話を聞いたりしています。うちだけでやるんじゃなくて、どこかとコラボレーションして作ってもいいかな、と考えてます。今年中にはある程度形にしたい」

若者は「きっかけがないだけ」

 ギャルだけでなく、若者全体への偏見とも戦う。「大人たちは『若者が選挙に行かない』『環境問題に興味がない』と嘆くけれど、若者がテレビ見る時間帯に選挙のCMやるとか、クラブで選挙運動するとか、何も努力してない。努力してそれでもダメなら分かるけれど、若者にはきっかけがないだけなんです」

 きっかけ作りにも積極的だ。環境問題に興味を持ってもらおうと、割りばしを使わず「マイはし」を持ち歩こうと訴えるパレードを、5月初めに渋谷で行った。ブログでもマイはしをアピール。若者から共感のコメントが集まっている。

 「大人とギャルのフィルター役になりたいんです」と藤田さんは言い、言うだけではなく、行動し、世の中を少しずつ変えていく。2年前夢のように遠くも思えたギャル革命が、1歩ずつ着実に、現実のものになっている。

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